第44話 異世界物の真骨頂

「痴れ者!私はそのような者に惑わされる訳が無いでしょう!身体と心を許しても、無条件の協力や、組織の情報を漏洩するくらいしかしませんわ!侮辱なさらないで!」


女性が叫ぶ。

無理らしい。


「キミ、何で既に陥落モードなのかな!おかしいよね!」


ラックルが女性をがくがく揺らす。

ラックル、君も異性だからな?


「にゃあ、羊なら仕方ないにゃあ」


イファナがほのぼのとした調子で言う。

おお、好感度補正が・・・?

ならワンチャンある?


「とりあえず、抵抗はしないで欲しい。まず色々聞きたいのだけど・・・名前、スリーサイズ、彼氏はいるのかな?」


「質問内容がおかしいからね!」


ラックルがこっちに覆いかぶさってくる。


「ふん、話しかけないで下さい。そう簡単に情報を漏らすとは思わないで下さる?名前はメメモム、羊人族の第三王女です。スリーサイズは後で直接測って下さるかしら?好きな方はいますわ。子供は3人は欲しくて最初は女の子が良いですわね、娘には音楽を習わせたいですの」


女性──メメモムが回答を拒絶する。


「キミも、そのスゴイ速度で落ちていくのおかしいからね!」


ラックルが今度はメメモムを揺らし始める。

忙しい奴。


「音楽・・・どんな楽器が有るんだろう。でも、良いと思うよ。情操教育に」


きっとメメモムに似て美人なはず。

俺に似たら大変だけど。


「今日はキミから目を離さないからね?!」


ラックルが涙目でこっちを見て叫ぶ。

お、おう?


「・・・見られながらはちょっと恥ずかしいわ・・・」


メメモムが赤くなってうつむく。


「そもそもさせないからね!」


ラックルがメメモムに叫ぶ。


「リーン王女様、下着泥棒が出たので捜査に協力頂けませんか?」


ミトルスがラックルに話しかける。

ラックルだよ。


「このタイミングで?!協力しないよ!というか、昨日のもひょっとして僕を引き離す為に?!」


ラックルがミトルスをがくがく揺らす。

・・・ラックルが下着に反応しない・・・だと・・・?!


「別に僕は下着マニアとかじゃないからね!!」


ラックルが俺に覆いかぶさって揺らしながら耳元で言う。

さっきから俺の時だけ妙に密着してない?


「とにかく・・・3勢力は、異なる目的で動いてる・・・お互い譲れないものがある・・・それは確かなんだ」


ラックルが言う。

うーん。


「でも、犠牲が出る行為は看過出来ない。それは・・・僕が止める、何度でも!」


ラックルが宣言する。

でもさあ。


「なあ、3勢力って、『手段』が違うだけで、人間による支配からの解放っていう『目的』は共通なんじゃないか?」


俺がぽつり、と漏らした言葉に、全員固まる。

あれだよね。

特に才能が優れた訳ではない日本人が異世界に移動して、その世界にはない考え方で無双するっていう。

チートスキルや容姿、訳の分からない無尽の才能・・・異世界物の真骨頂はそこではない。

日本の知識、考え方、そういった物が異世界で驚きを与える・・・まさにそこだと思う。


「・・・なるほどにゃあ」


イファナが頷く。


「その通りだ・・・流石主様。我々は・・・協力できる」


ムニスが感嘆の息を漏らす。


「・・・気づきませんでした。素晴らしい。このメメモム、今よりリョータ様を夫と認めます。先程までの御無礼、お許し下さい」


おお、メメモムもデレた。


「・・・なるほど!凄い、リョータ!そうだ・・・僕達は同じ目的を持つ同志なんだ!」


ラックルが抱きついて来る。

いや、ラックルは俺と同じ異世界組だからね?

むしろ君が今の発言しても良かったんだよ?

君のその異世界転生者って過去はただの飾りかい?


人間による支配からの解放・・・そんな偉業を達成すれば・・・リーンに堂々とした態度で望める。

これは・・・チャンス!


「みんな・・・俺に考えが有る。力を貸して欲しい」


俺はラックル、イファナ、ムニス、メメモム、ミトルスを順に見た後、そう切り出した。

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