第43話 碧海の民

「だいたい、何でムニスも、リョータにその・・・好意を持ってるのさ?昨日見た時には敵意に満ちていただろ!」


ムニスは微笑を崩さず、


「主様のセイギに触れ、目覚めたのじゃ」


ラックルが頷く。


「なるほど・・・リョータの正義に触れ、昔を取り戻したのか」


セイギがどんな漢字か、それが問題だ。

連れて来られた時から好感情を持ってくれていたみたいだから、あっちでは無いはず。


「油断も隙も無い・・・昨日、ミトルスに頼まれて下着泥棒追い掛けてなければ、リョータの監視できたのに。結局、下着泥棒の手掛かりすら見つけられなかったし」


君、相変わらず下着への執着強いね。


「・・・でさ、ムニス。こっち側についたのなら、蒼天の民の情報を流して欲しい」


ムニスは首を振ると、


「申し訳無いが、それはできぬ。じゃが、過激な行為には出ないよう、はたらきかけてはおいた」


ラックルは頷き、


「分かった。今はそれで良いよ」


ひょこ、と向かいの席に座る。

疲れた様子だ。


「ムニス、何とかリーンの気をひきたいんだが、何か知らないか?」


尋ねると、ムニスは微笑み、


「そうじゃな。奴は事件に首を突っ込むのが好きじゃ。碧海の民の蠢動を抑え込めば、主様に惚れるであろ」


おおっ。


「え、碧海の民?!ムニス、それ詳しく!」


ラックルがガバッと立ち上がり、ムニスをがくがく揺する。

こいつ手柄横取りする気だ。


「碧海の民って何だ?」


俺が尋ねると、イファナが答える。


「蒼天の民、穏健派に続く、第三の勢力にゃ。古代知識に精通し、独自の紋様魔法まで操るらしいにゃ」


なんか凄そう。


「普段は行動的ではないんだけど・・・人間の力が弱まったから何か企んでいるのかな・・・」


ラックルが呻く。


「そんなところじゃな。奴等の狙いは・・・紋章碑の機能停止」


ムニスの言葉に、ラックルが息を呑む。


「そんな事をしたら・・・マナが欠乏し、紋様呪核宝晶が暴走する・・・!」


ムニスが頷く。


「左様。まさに奴等の狙いはそれじゃろうな」


んー?


「・・・蒼天の民、碧海の民、そして穏健派・・・みんな目的を異とし、決して相容れない。碧海の民・・・何としても止めないと。恐らく決行は新月・・・それまでに何とかアジトを見つけ出し、奴等を捕らえる!」


ラックルが宣言した。


--


「くっ、殺しなさい」


結局、蒼天の民とアジトをルームシェアしていたとの事で、強襲(蒼天の民にも手伝って貰い)、碧海の民を縛り上げた。

このアジトのお偉いさんは、美しい女性だった。


ふんわりウェーブのかかった緑の髪。

緑の優しい目。

ふくよかな身体に、ゆったりとしたローブ。

胸元は大胆に空き、実にセクシーだ。

大きな2本の角が、頭上に渦を巻いて生えている。


「彼女は羊人族。普段は遺跡に隠れ、人目触れることは殆ど無い。異性との接触を罪と考え、生涯関係を持たない者も多いよ。絶対に手を触れないであげてね」


ラックルが解説する。

生涯関係を持たないって、どうやって子孫残すんだよ。

体外で?


凄い美人だから何とかお近づきになりたいけど。


「駄目だよ、リョータ。今までの流れからして、君なら彼女の好意を勝ち取りそうな気はする。これは別に、これ以上キミの周りに女性が増えるのが嫌とかじゃないからね?羊人族には羊人族の文化がある、キミはそれを尊重すべきだ」


ラックルが俺の肩をがっしりと掴む。

無理じゃね?

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