第32話 2時間進む

「ラックル、さっきの羊じゃない。ほら、青いだろ?」


「嘘だ!さっきの羊が毛を染めただけだ!」


おいおい。

わざわざ特殊な羊召喚したんだってば。


「ほら、ラックル、そんな訳ないって。急ぐんだろ?」


ラックルを促すが、


「洗浄の水よ!」


ラックルの魔法が発動。

羊にかかる。

青い塗料が流れ、純白の地毛が現れる。

別の羊が現れ、ドライヤーとバスタオルで乾かす。


本当に染めただけだった。


「・・・ラックル、俺の後ろに乗ってくれれば良いから。一緒に乗れば安心だろ?」


「うー・・・分かった」


納得してくれたらしい。


--


ぱっからぱっから


宙を駆ける。


「ねえ・・・リョータ。此処何処?」


ラックルが話しかけてくる。


「此処は羊の背中の上だな」


「今どのくらいで・・・あとどのくらい・・・?」


「今で1時間くらい。あと1時間くらいだな」


30分前に儀式が終わったらしいからな。

2時間くらいは・・・


「ねえ・・・リョータ・・・何かおかしいよ?」


ラックルが泣きそうな声で尋ねる。


「いや、ちゃんと想定通り進んでる。問題ない」


あと40分程・・・


「此処何処?!」


ラックルが半泣きで叫ぶ。


「だから80分程進んだ場所だってば」


横を、無数の時計マークが流れていく。


「退屈なら、羊に頼んで変化をつけて貰おうか?」


「やめて?!」


ラックルが強く抱きついてくる。

どうせなら前をはだけるとかしてくれたら、チャージが貯まるのだけど。


「良し、そろそろ着くぞ」


2時間前・・・儀式完了まで1時間30分。


「着いた。2時間前だ。後1時間30分以内に奪還するぞ」


「時間遡行?!キミ、何気なく何やってるの?!」


何気なくやったらまずいのだろうか?

結局やらないといけないなら、重々しくやっても、軽くやっても一緒じゃない?


「仕方ないだろう。儀式完了に間に合わなかったんだから。過去に行くしかないよね?」


筋は通っている。


「普通行けないよね?!」


行けたし。


「ここからは時間との勝負だ。行くぞ」


「う・・・うん」


俺が先陣を切り、ラックルが続く。


--


「いたぞ、逃がすな!」


邪神官が追ってくる。


ゴッ


炎の塊を牽制で投げる。


「奇跡よ!」


邪神官が盾の魔法で防ぐ。

奴等強いぞ。

レベルが1000近い。

流石総本山。


「何あれ・・・冗談みたいな強さ・・・」


ラックルが呻く。


「此処は通しません!」


邪神騎士が道を塞ぐ。

レベルは1100くらい。


色欲増魔デウスブースト


ボッ


風の魔法で蹴散らす。

騎士達がそのまま動かなくなる。


「キミ、めちゃくちゃ強いよね」


ラックルが半ば呆れて言う。


「強いスキルだよね」


なかなかのチートスキル。


バタンッ


姫さんの気を追ってたどり着いた場所・・・薄暗い部屋、並ぶ蝋燭、中央には青い幾重もの魔法陣。

仮面をつけた神官達に、警護の騎士達。

レベルは・・・1500以上の者がいる。

インフレし過ぎじゃないか?!

中央には姫さん・・・イファナが拘束されている。

・・・衣服を身に着けてないな。

ピンク色のショートカット、大きな目。

スタイルは断言出来るが、凄く良い。

可愛い・・・!

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