第31話 巧みな話術
「かっかっ。しょうもない奴等やで。まあ、任したってや」
山羊さんが羊皮紙の束を取り出す。
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誓約書
私は、今後、奴隷狩り等、他者の利益を不当に侵害する行為を一切致しません。
また、今回の罪を心より反省し、謝罪致します。
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「これに署名して貰えばええ。羊だけに羊皮紙ってな」
山羊さんがかっかと笑う。
紙が本格的呪術の品なんだろうね。
違反したら多分、山羊さんに隷属。
「うん、有難う!」
意気揚々、と捕えた邪教徒に駆け寄り、誓約を迫る。
「や・・・あんた何処でこれを?何だか異常な呪力を感じて・・・いや、一周回ってただの紙に感じられて凄く不気味なんだが。これ署名するくらいなら死を選ぶよ」
邪教徒が拒否する。
勘の良い奴等だ。
「まあまあ、兄ちゃん。ちょっと署名するくらい、かまへんやろ?なんややましい事でも有りはりますのん?」
山羊さんが尋ねる。
「我々は、次同じ事が有れば、同じ事をする。あの御方に従う事こそが我等の生きる意味。故に、このやり取りに意味はない。我等を殺せば良い」
自害しないのは時間稼ぎだろうか。
うーむ。
山羊さんが続ける。
「何も、そう自棄にならんでええやろ。ちょっとサインすれば解放されるねんで。な、兄ちゃんあれやろ?」
「・・・何だ?」
「兄ちゃん、娘さんがなくなって、おらんやろ?」
「・・・確かに、私には娘がいるが・・・」
「せやろ。その娘さんが・・・ああ、嫌やな。襲われて怖い目にあって・・・そのまま・・・悲しいなあ?」
「な・・・貴様・・・まさか?!」
「な、ちょいとサインするだけや。内容も普通の内容やろ?」
「・・・分かった。娘には手を出すな」
男がサインする。
「・・・何か脅してるみたい」
ぽそ、とラックルが呻く。
みたいじゃなく、脅してるよ。
まあ、許されない事した訳だし、誓約の内容もまともだからなあ。
破棄出来ないだろう事と、違反した場合の罰則が恐ろしいだけで。
そんな調子でみんな署名。
邪教徒が解放された。
案外品行方正に生きるんじゃないだろうか?
「山羊さん、良く邪教徒の秘密が分かったね?」
ラックルが感心して言うと、
「ちゃいますねん。あれは話術でな。どっちとも取れる言い方をする事で、相手に情報出させるんや」
嘘だ。
絶対分かって言ってた。
「なるほど・・・そう言えば」
ラックルが頷く。
いや、それだけじゃ説明つかないこと多かったからね?
「急ごう」
ラックルが促す。
「兄ちゃん、急ぎいやあ。儀式、30分前に完了してしもうたで」
何・・・だと・・・
邪教徒の処理、後回しにした方が良かったか・・・やむを得まい。
青い毛の羊が召喚される。
どやあ
「羊・・・この羊、さっきの羊だ!やだ、乗りたくない!」
ラックルが後ずさる。
君、急いでるんだろ。
後、明らかに青いから、別個体でしょ。
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