第26話 考えとくわ

・・・そう言えば、


「そう言えば、ラックルと王女様って似ている気がするなあ」


「人間はエルフの個体識別が苦手なんだろうね。それに、兄妹だから、似ているのは当然かな」


淀み無くすらすら答えるラックル。

逆に違和感が有る。


「あれ、確か女王様の子供は一人で、王位がどうこう言ってたような?」


ラックルは頷くと、


「エルフは女王制だからね。男児には継承権が無いんだ」


なるほど。


「でも、俺が王とか言ってたような?」


「・・・キミ、結構ちゃんと聞いてちゃんと理解してるよね・・・えっと、他種族と結婚した場合は、他種族は王になれるんだ」


変わったシステムだなあ。


「そ、それより、また頼みたい事が有るんだけど」


ラックルが話を切り出す。

またかな。


「良いよ」


「うん、有難う」


頼みたい事は、捕まえた盗賊の誓約だろう。

山羊さんに手伝って貰うと、出戻りして来なくなるので、女王様が喜んでいるらしい。


「結構頻度多いんだな?」


「うん・・・人間の王国でごたごたがあったからね。勢力バランスが崩れ、他の国が出張って来たみたい。練度が低いので余裕で撃退出来ているけどね」


大変なんだなあ。

ふと気になって尋ねる。


「ごたごたって、何があったんだ?」


ラックルが自信なさげに、


「・・・噂程度なんだけどね。王国の騎士や王族が、大量に失踪したらしい。理由や真偽は不明。悪魔を見たって荒唐無稽な噂すらあってね」


山羊さんのせいだろうね。

対象者に、「等」とか入ってるのに署名するとか、正気じゃない。


そう言えば・・・


「悪魔って、魔族みたいな種族がいるのか?」


ラックルが驚いた様な顔をすると、


「悪魔と魔族は別物だよ。悪魔は、神に匹敵する存在。地上のどんな存在とも、比較にならない。そもそも、実在するかどうかも分からない存在だね。キミも、悪魔の噂にも、伝説にも、絶対近づかない事。関わって良い存在じゃない」


ラックルが真剣な顔で言う。

とりあえず山羊さんは居るみたいだけど。


「じゃあ、捕まえた人達に誓約させるから手伝ってね」


キミ、エグいね。

関わっちゃいけない存在と騙し討ちの様に契約させちゃって。

奴隷狩りが凄い速度で減ってそうだ。

ゴキ退治みたいに、巣ごと退治。


--


「ふう、多かったね」


俺はそう漏らすと、椅子に身体を預ける。


「最近本当に多いんだよね・・・でも、リピーターはいないから、着実に減ってるはず」


魔界?に連れていかれて、一生強制労働なのかなあ。

エグい。


「キミのお陰だよ」


ラックルが、山羊さんの喉を撫でたり、頬を撫でたり、頭を撫でたり・・・

山羊さんも気持ちよさそうにゴロゴロいってる。

ラックル、キミ凄いよね。

悪魔の中でも多分上位っぽい、バフォメットを撫でるなんて。

畏れ多いし、怖いので、おっちゃんには無理だよ。


参加する予定の人、とか、一族、とか、時々文章がパワーアップしてる。

アレを堂々と署名出来るって凄いと思う。

契約破棄出来るって思い込みがそうさせるんだろうけど・・・思考停止って怖い。


「どうせならもっと怖い文章だと更に効果あるかな?どうせブラフだし」


ラックルが山羊さんを撫でながら言う。

キミ、鬼畜過ぎるよね。


「せやな、考えとくわ」


山羊さんが喉をゴロゴロ鳴らしながら言う。

下手したら人間種族全員消えるんじゃね?

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