第四章

第25話 誰よりも詳しいよ

「リョータ・・・今日はどう・・・かな?」


ラックルが自信無さそうに尋ねる。

ラックルは、美しい金髪、長髪の、エルフの青年、親友だ。

青年・・・なのだけど、最近は女性用の服を着ていることが多い。

以前はプロテクターで押さえていた豊かな胸も、自由にさせているようだ。


何故青年なのに胸が、と言うと、ラックルの固有スキルの効果だ。

性差による装備制限や使用魔法制限等の無視。

大きな胸も、そのスキルで装備しているらしい。

外せなくなっている可能性もある。

衣服、女性用が似合うのも、スキルの効果もあるのだろう。

スキルの無駄遣い・・・いや、どう使おうが個人の自由だな。

一応、この世界では女性しか使えない筈の回復魔法も使えるけど。


鋭く蒼い目。

気が強い、よりは理知的な印象を与える。

それに、最近は赤くなってわたわたしている事が多いので、よりその鋭さは目立たなくなっている。

・・・風邪が長引いているのだろうか?

色々連れ回して大丈夫か不安になる。


女性用の下着を収集していたのは気づいていたけど、衣服全般集めているようだ。

色々な服を着ては、評価を聞いてくる。

とりあえず、素直に告げている。


「似合っているよ、今日も可愛いね。今日は涼しげな衣装だね。柑橘系の香りも、よく合ってる」


男性にとっては褒め言葉か微妙なのだけど。


「はう・・・えへへ」


照れて、微笑む。

これで男じゃなければなあ。

身体にもスキルの効果が出ているらしく、柔らかいし良い匂いがする。

エルフはみんなそうなのかとも思ったけど、他の男性のエルフは普通に男性だった。

これ、知らない人に見破れっていうのは無理ゲーだ。


王女様との出会いから2週間が過ぎた。

王女様の好感度を上げる方法を考えたいのだけど。

まだ思いついていない。


王女様と繋がりが有り、かつ、モテそうなラックルにも相談してみたのだけど。

良く分からない答えが返ってくる。

基本、恋愛とか疎い感じなんだよなあ。


「なあ、ラックル。王女様の気を引ける方法、何か無いかな?何とか攻略したいんだ。エルフが好きそうな事とか物でもいい」


「・・・王女様はもう攻略済みだと思うよ。裏面までクリアして、隠しボス倒して、色々コンプリートしたくらい」


ほら、また訳の分からない事を言う。


「王女様の好きな物とか分からないか?」


重ねて尋ねるが、


「王女様が好きなのは、リョータだね」


何でだよ。


「・・・ラックル、こういうの鈍そうだよなあ・・・」


溜め息をつく。


「僕は王女様の事は誰より詳しいよ!・・・と言うか、別に髪型変えてる訳でもなく、顔も特に化粧もなし、声もそのまま、更に今は服装も女性用・・・何で気付かないのさ!僕はね──」


「何にせよ、王女様とはしばらく会えない。俺自身が納得出来る事を為せるまでは」


「──王女様から直接相談を受けてるんだよ!」


何だか違和感が。


「ラックル、今何か遮ってしまったが、前後で言う内容変えなかったか?」


「変えてない」


ラックルが首を振って否定する。

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