第21話 キャッチアンドリリース

「此処だ」


リーンの言葉に従い、羊が急ブレーキ。

音も無く止まる。

こちらの羊も、足を止める。


「・・・何であんなスピードで走ってて、あっさり止まれるんだろうね・・・」


リーンが何故か釈然としない様子で言う。

羊だからじゃね?


「貴様、何者だ!」


あっさり見つかった?!


「・・・サーチ魔法だね」


リーンが警戒しつつ言う。


出てきたのは・・・銀色のロボっぽいのが2体。


銀の紋章機

 強さ:強い

 魔法抵抗:極めて高い

 物理抵抗:極めて高い

 機動力:極めて高い

 近距離攻撃:得意

 中距離攻撃:得意

 遠距離攻撃:得意


「あれは・・・紋章機!中に人が乗っている。攻守共に高く、機動力も高い・・・人間が覇権を取れる所以だね・・・コアとなる紋章が、王家による認証を必要とするから・・・王国軍しか所持していない。国家が関与して奴隷狩り・・・隠そうともしていないね」


リーンが呻く。


「倒しちゃって良いのか?」


俺が尋ねると、


「・・・出来れば生け捕りかな。王国達が定めたルールで、盗賊も殺さず、誓約させて所属国に引き渡すのが国際ルール・・・建前としては、誓約すれば解除出来ないから、もう悪さは出来ないだろう、と」


リーンが悔しそうに言う。


「建前としては?」


「・・・王国は自分達で誓約を保護にできる紋章機構を持っているらしいね・・・捕まえた筈の盗賊が、再度目撃されている・・・こちらの手元にはちゃんと誓約文が残っているのにね」


おやまあ。


「殺すしかない、のかな」


俺が言うと、


「・・・故意に殺すのは禁止されている・・・難癖付けられて、首都に精鋭を放たれ、国を潰された他種族もいる・・・」


やっぱり、やりたい放題だなあ。


「捕まえて、誓約させる、しかないのか」


そして王国はまたその戦力を再投入できると。


「まあ・・・とりあえずでっかい機械は潰そう」


敵は、状況確認が済んだらしく、遠距離攻撃の準備に入っている。

あまり派手な攻撃ではなさそうだ。

恐らく、リーンを捕まえようとしているのだろう。


「炎よ!」


激しい吹雪が敵の一体を包む、が、


ジャギ


剣の一振りで、魔法が霧散する。

ちょ。


チッ


光の槍で敵を貫こうとするが、装甲に弾かれる。

硬い?!


敵が・・・


ザンッ


「わっ?!」


10メートル近い距離を一瞬で詰められ、大剣が地面を穿つ。

紙一重で躱したが・・・危なかった。


「リョータ?!」


リーンが悲鳴をあげる。

そのリーンに迫るもう一人・・・仕方が無い。


色欲増魔デウスブースト、発動。

そして・・・


ゴウッ


炎が巻き上がり、リーンに手を出そうとしていた敵を包み込んだ。

生きていると良いなあ。


慌てて消化を始めるもう一体。


もう一回発動。


ジッ


もう一体もろとも、氷で閉ざした。

・・・これでもう2回も消費。


「リョータ!」


リーンが涙目になって駆けつけてくる。

抱きついてきたので、強めに抱きしめてやる。


「リョータ・・・良かった・・・!」


「よしよし、大丈夫。キミは俺が護るよ」


「ううう・・・リョータ・・・」


やっぱり女の子は良いなあ。


「何の音だ!」


もう1体来た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る