第20話 茜ちゃん

「鑑定・・・素晴らしいスキルですね。私も欲しいです」


ミトルスが羨ましそうに言う。

確かに、鍛冶師に鑑定は便利かも。


--


食事を終え、庭で歓談していると、兵士が駆け込んで来た。


「王女様、此処におられましたか。大変です。西の森が襲われました」


兵士の報告を聞いたリーンは、悔しそうな顔を浮かべると、


「・・・兵を出します」


そう告げる。

ミトルスが首を振り、


「王女様、もう間に合いません。此処の護りも薄くなりますし、向こうも移動した後でしょう」


ミトルスの言葉に、リーンが悔しそうに俯く。

・・・不謹慎だが、これはチャンスなのでは?


「王女様、宜しければ、私に任せて下さい」


リーンは、じっと俺を見つめ・・・


「・・・リョータ・・・しかし、いくらキミでも・・・」


悲しそうに首を振る。


「王女様、大丈夫です。こう見えて、私は意外と強いのです。レベルも600有りますし」


「キミ、レベル上がるの早過ぎるよね!」


しおらしい様子から一転、ツッコミモードになる。

おや、このツッコミ方・・・


「王女様のツッコミを聞いていると、知人を思い出しますね」


リーンは、はっとした顔をした後、覚悟を決めた顔をする。

俺が続ける。


「近所の茜ちゃんを思い出します」


「それは誰かな!」


食いついてくるリーン。


「とりあえず、場所を教えて下さい。捕まえてきます」


俺が言うと、兵士がリーンの様子を伺う。


「良いよ、でも、僕も行くからね!」


リーンが有無を言わさない様子で言う。

いや、危ないでしょ。


「王女様、此処は私に任せて頂いた方が」


俺がそう言うと、ミトルスも同意する。


「王女様が行かれるのは反対です・・・勿論、リョータ様も心配ですが・・・」


リーンが、俺の肩を掴むと、


「僕と一緒なら、補充しながら使えるよ!」


おや、色欲増魔デウスブーストを知っている?

ラックルが教えたのだろうか。

だが、確かに魅力的だ。


「分かった、王女様、一緒に来て欲しい」


どこまでして良いんだろう?


--


ぱっから、ぱっから。

呼び出した羊に乗って駆ける。

色欲増魔デウスブーストを使ってから使えばもっと早い気はするけど・・・今のストックをまだ消費する訳には。

リーンが協力してくれるなら、また回復出来るのかも知れないけど。


今チャージしてあるのは、それなりにお楽しみして貯めた奴だ。

それなりに威力がある筈。


「王女様、遅くて済みません」


「はや・・・早い・・・落ち・・・落ちる・・・?!」


大袈裟な。

乗り物が苦手なんだろうか。


「馬程快適では無いですからね」


「さっき、10メートル近くジャンプしてたんだけど!」


そりゃ、崖があったら飛ぶよね。

飛ばないと落ちるじゃん。


「・・・でも、夜の前に辿り着けるのは有り難い・・・朝になったら、移動を開始して、隷属呪法をかける筈だから・・・それより前に助けたい」


リーンはそう言うと、悔しそうに続けた。


「今は多分お楽しみタイムかな・・・」


混ざりたい、とか言ったら怒られるんだろうな。

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