第三章

第18話 やっぱり逃げられた

「リョータ、すまない!」


ラックルが頭を下げる。

ラックルは、美しい金色の髪の、エルフの青年だ。

頭を下げたので、その長い髪が踊る。

鋭く蒼い目をしているが、今はその目を閉じている。

趣味か失敗したのか、スキル影響で胸が大きいらしい。

普段はプロテクターで隠しているようだ。

声も高いし、回復魔法も使うし、そもそも美形だし・・・男だと言われないと勘違いする人もいそうだ。

女性物の下着を収集している可能性が有る。

人間の男性の裸には興味があるようだ。


「大丈夫だよ、ラックル。エルフが薄情なのはもう分かっているし、次頑張るよ」


結局、ミトルスにも逃げられた。


「『里に戻ってその力を同胞の為に役立てるか、俺と共に昼夜問わず快楽に身を任せ堕落した生活を送るか好きな方を選べ』って言ったのに、里に戻る奴がいるか?」


俺が溜息と共に吐き出すと、


「後者を選ぶ人はいないだろうね。僕だってそんなこと言われたら・・・えっと・・・うん」


途中で声のトーンが落ちていき、何故か口籠る。


「ラックル?」


「ひゃ?!」


時々妄想入るなあ、この子。


「とりあえず、ミトルスの件だけど・・・本人と話して、誤解を解こうと頑張ったんだけど・・・グダグダになっちゃって、おかしな方向に話が・・・」


ラックルが言い難そうに言う。


「おかしな方向?」


「んと・・・」


ラックルは困ったように口籠ると、意を決した様に顔を上げ、


「リョータ、キミに王女が御礼をしたいそうだよ!」


王女?

エルフの王女と言うと、凄い美人なのだろうか。

会ってみたい気はする。


「それは是非お会いしたいな」


「うん・・・じゃあ、伝えておくよ。当日は、里の入り口まで来てくれたら、後はミトルスに王宮まで案内させるから」


ん?


「ラックルが連れて行ってくれるんじゃないのか?」


「いや・・・その・・・こっちも色々あって」


忙しいのかな?


「分かった、よろしくな」


ラックルの方に、笑みを向けた。


--


「先日は、私を解放して頂き、有難う御座いました。並びに、お誘いをお断りさせて頂いた事、申し訳有りません」


里に着くと、ミトルスが待っていた。

先日の件を謝罪される。

そう言うのならハーレムに参加してくれれば良いのに。


「今からでも受け付けているけどね」


俺の言葉に、ミトルスはクスッと笑い、


「すぐに私など気にかけないようになりますわ。もうすぐ、王女様にお会いになられるのですから」


いや、王女がいくら美人でも、俺じゃ手が届かない立場だからね?

奴隷の同胞2人救っただけでは、王族をハーレムに入れるなどできる訳が無い。


エルフの里は、迷いの魔法で隠された森の奥に有る。

家の木が立ち並び、花が咲き乱れ・・・綺麗だなあ。


一方で、狙撃しやすい場所を高所に設けてあり、防衛にも気を配っている。


「ここです、リョータ様」


宮殿。

世界樹の中に作られた城。

この中に王女様が・・・

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