第17話 夢路の果てより来たれ

ゴッ


俺が放った岩の魔法が、地面から生えてる金色の岩に当たる。

岩が崩れ、中から水晶が出てくる。


鉱山での採取・・・ダンジョン内で、敵がポップするような感じで、岩が生えてくる。

その岩に攻撃すると、壊れ、中からアイテムがドロップ。

そんな仕組みのようだ。


土を掘ったら宝石が出てくる、とかではないらしい。


「本当は、採掘士がいれば、ドロップ率上がるんだけどね・・・」


ラックルが残念そうに言う。

さっきから、嬉しそうに岩を壊しては、高確率で宝石出している人がいるから、あの人は多分そうなんだろうな。


「採掘士以外には、この手段で稼ぐのは厳しそうか?」


「一応、宝箱よりは割が良いみたいだけど・・・」


3時間で40g。

昨日よりは多く集まっているけど、トータルの収入で言えば断然宝箱だ。


ゴアアア


岩かと思ったのが、敵だった。


スコーン


俺が放った岩が、敵を撃つ。

そのまま敵が崩れ去る。


お、10g落とした。


「・・・これでは先が長いな」


「やっぱりボスしかないかな・・・でも、危険だけどね。レベルが200超えてるしね」


「俺のレベルが300近いし、何とかなるんじゃないか?」


「レベル上がる速度おかしいよね!僕がまだ150なんだけど!」


それはレベル低すぎじゃないか。


「・・・まあいいや。ボスに向かおう」


--


火山のダンジョン。

周囲に冷気を作り出し、調整はしているが・・・熱い。


「補助魔法のヒートプロテクションがあればマシだけど・・・」


ラックルが呟く。

こうか?


「わ、なんか急に楽になった」


ラックルが驚きの声を上げる。


「とりあえず熱と親和性の高い結界で覆ってみた。これであってるかな」


「うん、概念聞いただけで実行してしまうのは本当に凄いと思うよ・・・」


ラックルが呻く。


途中の敵も、結構紅水晶銀を落としていた。

此処良い狩り場じゃね?


そしてボス。


「あれが此処のボス・・・高い火の耐性、各種魔法耐性、物理が有効かな」


ボルケノス

 レベル:220

 弱点:水

 魔法耐性:高

 物理耐性:低


チッ


冷気の光でボルケノスを貫く。


オオオオオン


ボルケノスが唸りを上げる。


チッ チッ


無数の冷気の光で貫き、


ズン


ボルケノスが倒れ、崩れていく。


紅水晶銀

 量:50g


「結構落ちたな」


「・・・なんかあっさり倒せたね」


バックパックから赤い羊が飛び出し、紅水晶銀を食べ、バックパックに飛び込む。


「羊にも慣れたよ」


慣れたらラックルにも羊属性付きそうだ。

意外と便利。


ボス、といっても結構いるようだ。

次々と狩っていく。

ドロップ量は、20g~80gと幅があるものの、良いペースで貯まる。


「ここ楽だな。最初から此処に来れば良かった」


「一応、ここのボス、かなり強いんだけどね」


ラックルが拍子抜けした様に言う。


「まあ、アレはまだ眠りの周期だし、安全に狩れそうだね」


ラックルが言う。

きみ、フラグという言葉を知っているかね?


ギアアアアアア


サラマンダー

 種族:竜

 レベル:800

 物理抵抗:極めて高い

 魔法抵抗:極めて高い

 弱点:水


「な・・・何故?!まずい・・・逃げるしか・・・!」


涙目で叫ぶラックル。


「大丈夫だよ、何とかしてみせる」


ラックルを後ろに庇い、色欲増魔デウスブーストを発動する。

出し惜しみ無し、3回全部重ね掛け。


更に・・・


イメージを重ね、外界に出し・・・詠唱・・・


「夢路の果てより来たれ、夜の王、支配する存在、満たせ、ふわもこのまま」


力が・・・集う・・・!


七夜を越えて夜は明けめえええええええ!」


漆黒の羊が現れ、サラマンダーに向かっていく。


「また羊?!」


ラックルが叫ぶ。


漆黒の羊が、サラマンダーに噛みつく。

サラマンダーが大口を開け、火炎のブレスを吐き、漆黒の羊が冷気を放って相殺する。


漆黒の羊が噛みついている場所から、氷が広がり・・・サラマンダーの体が凍っていく。

唸るサラマンダー。


コウッ


漆黒の羊が蒼い光に包まれ、サラマンダーを覆い・・・


傷つき、倒れたサラマンダーだけが残った。


コウッ


俺が無数の氷の剣を作り出し、次々とサラマンダーに突き刺す。

それがトドメとなり・・・


サラマンダーが終に倒れた。


「か・・・勝てた・・・生きて・・・生きてる・・・!」


ラックルが抱きついてきた。

大袈裟だなあ。

というか、何きみ、男に抱きついてるの。


「言ったろ、大丈夫だって」


羊が負けた時は、もう半分以上諦めてたけど。


「うん・・・うん!」


さて・・・ドロップは・・・


紅水晶銀塊

 量:3kg


おおう、いきなり貯まった。


「あれが3kgあるらしい。これでミトルスを買えるな」


「え・・・あ・・・うん」


顔を曇らせるラックル。

・・・やっぱり、同胞を買うという話をするのは、気分が良くはないのだろう。


「あの・・・リョータ。良ければ、私が間に入って説明しようか?リョータ、肝心な所だけ言葉遣いがおかしいせいで、誤解を招いていると思うんだよ」


「いや、そこまでして貰うと悪いからな。エルフに言う事を聞かせてハーレムに・・・とか、同族なら気分が悪いだろ?」


「むしろ、大金をはたいて助けて貰ったのに、そのまま里に戻っちゃう方が罪悪感強いんだよ!」


ラックルが叫ぶ。

いや、何で戻っちゃう前提なのかな。


「大丈夫だよ、ラックル。さっきも大丈夫だっただろ。俺が信用できないのか?」


「う・・・」


ラックルに微笑みかける。


「大丈夫。今度こそ、俺はハーレムを作る。ミトルスは、その一人目、だ」


「うん・・・」


ラックルが、俺を見上げ・・・頷いた。

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