第16話 それしかないよね

その後も、宝箱を開け・・・1日かけて80g。

明日は別のアプローチにした方が良さそうだ。


俺の部屋で、収穫を山分け。

当初予定通り、紅水晶銀だけ俺が貰い、残りはラックルに渡した。


「すまない、先にお風呂借りるよ」


最近、ラックルは時々、俺の部屋でお風呂に入って行く。

何でも、俺の部屋の風呂は豪華らしい。

多分、宿代も節約しているんだろなあ。


ん。

ラックルのお風呂セットがバックパックから覗いている。

届けてやるか。


「おい、ラックル。お風呂セット忘れ・・・」


風呂の扉を開けると、ラックルは何故かまだお風呂に入っておらず、上半身裸で先程のブラジャーを握り締めていた。

うん、自分の身体についているものとは違う、大きな物が2つ揺れているな。


「え・・・あ・・・う?」


ラックルが声を出す。

男の胸を見ても仕方が無いのだけど。

でも綺麗なので眼福ともいえ。

というか事情が分からない。


「や・・・これは違・・・というか閉め・・・えっと・・・」


うん?


「って馬鹿、早く出ていってよ、何してるんだ!」


ラックルが真っ赤になって叫び、ブラジャーを投げ捨て、手で胸を隠す。


「・・・そういうことか」


俺はようやく事情を理解した。


「あ・・・うう・・・うん・・・実は・・・」


目を泳がせながら、ラックルが頷く。


「ラックルのスキル、装備制限の撤廃だ。つまり、本来女性しか装備出来ない筈の大きな胸を装備できるんだな?!」


「そうだよ!それしかないよね!」


ラックルが強い口調で頷く。

やっぱりそうか。


「それで、手に入れたブラジャーの効果を、自分で確かめていたんだな。だからお風呂セットも部屋に置いてあった」


「そうだよ!」


やっぱり。

今日の俺は冴えている。


「とりあえず、男同士だから、胸別に隠さなくても良いだろ?」


「当然じゃないか!」


ラックルが手を降ろし、胸を張る。

男の胸とは分かっていても、やっぱり綺麗だなあ。


「やっぱり駄目!」


また胸を隠すラックル。

えー。


「胸を見せるなんて・・・男同士でも恥ずかしいだろ?!」


ラックルが顔を真っ赤にしながら、唸る。

エルフはそうなのだろうか?


「別にそうは思わないけどなあ」


試しに上を脱いでみる。

向こうのも見たし、おあいこ的な。


「・・・ごくり」


ラックルが寄ってきて、マジマジと俺の上半身を見る。

おい。


きゅ


力を入れると、筋肉が動き。


「わ・・・」


ぺたぺた俺の上半身を触り始めるナックル。

エルフの男は筋肉がないのだろうか。

にしても、男に触られてもなあ・・・

というか、エルフの綺麗さと、揺れる二つの大きな物の相乗効果で、美女に見えるんだよなあ。


「俺もそれ触って良いのか?」


「それ?」


ラックルがきょとん、とする。

みるみる真っ赤になり、慌てて胸を隠す。

駄目なのか。

残念なような、助かったような、複雑な気分だ。


「上はそれを付けてるけど、下はどうなっているんだ?見てもいいか?」


「わ・・・だ・・・駄目に決まってるだろ!」


そうだよなあ。

俺も見せろって言われたら断るしな。


「と・・・」


ラックルが真っ赤な顔で、涙を流しながら、睨みつつ、声を漏らす。


「と?」


「とにかく出て行って!」


風呂場から追い出されてしまった。

扉が閉まる。


ややあって、いつもの格好でラックルが出てきた。

まだ顔は真っ赤。

頬も膨らませている。

怒っているようだ。

うーむ。


「さっきの胸はどうしたんだ?」


「ちゃんとさっき入手した下着を着け、その上からプロテクターで抑えてる。何時もよりは楽」


膨れながらも答えるラックル。

そうじゃないだろう。

何で胸を外さないんだ。


実験の継続なのか、それとも一度付けたら外れない呪いの装備みたいな物なのか。

イケメンの考える事は分からん。

下の方を付けてしまって外れなくなったら、色々将来困りそうだな。

というか、こいつが女性経験無さそうなの、この体のせいじゃ。


「で、さ、ラックル」


「何?」


「明日は宝箱じゃない手段を取ろうと思って」


「うん・・・そうだね。明日は鉱山に行こうか」


鉱山かあ。

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