第8話 行き違い

気づいたら、ラックルに膝枕されていた。


「・・・キミは馬鹿か?どうして僕を待たず自分で開けたの?」


「いや・・・何か行ける気がして」


傷がかなり塞がっている。

ラックルの手が光っている・・・回復魔法・・・?

あれ?


「そんな訳ないだろう。もう、宝箱は僕に任せて欲しい。床の罠探知もだからね」


「有難う、これからは気をつけるよ。ところで、ラックルは回復魔法が使えるの?」


ラックルがしまった、という顔をする。

なるほど、固有スキルか。


「ごめん、ラックル。君のスキルを明かさざるを得ない状況になって。お詫びに、俺の固有スキルも教えるよ」


「いや、気を使わなくても・・・」


「こちらのミスで一方的に知るのは良くないからね」


色欲増魔デウスブーストの説明をする。


「なるほど・・・それで娼館か」


ラックルが得心した様子だ。


「さっきからの凄い威力がそれ?チャージ回数凄く多いんだね」


「いや、色欲増魔デウスブーストはまだ使ってないぞ?」


「・・・固有スキルじゃなかったのか・・・凄いね」


ラックルが驚きの声を上げる。

威力高い方なのかな?

でもまあ、魔法使い系職業だしな。


「でもさ、普通に恋人作って、パートナーとして一緒に冒険したらいいんじゃないのかな?最初はどうかと思ったけど、そこまで変な性格でもないみたいだし。別に多数いる必要はないよね」


それは無理だろう。


「あのなあ・・・俺はこの容姿だぞ?何時でも求めたら身体を喜んで差し出せ、どんな場所でもその嫌らしい唇で俺を受け入れろって言って、求めに応じる女性がいると思うか?場合によっては、ダンジョンや街中でだぞ?」


「駄目に決まってるだろ、何を考えているんだキミは!例え奴隷でも駄目だよ!もう少し相手の事を考えてあげて!」


顔を真っ赤にして、凄い剣幕で怒鳴られる。

やっぱり駄目だよなあ。


「だいたい、キミ自身・・・その・・・街中でそういう事を・・・その・・・例えば、ハグとか、キス・・・とかその程度で良いんじゃないかな」


何を言っているんだろう。


「・・・だから、唇を差し出せと言ってるんだが?・・・でも、人前でキスをするとか、相当抵抗有るよなあ」


そうか、ハグとかならもっと貯まるのかな。

でもそれは相手にもっと負担が。


「・・・言い方!言葉遣い、おかしい!」


顔を真っ赤にしたまま、涙目で叫ぶラックル。

何か言葉の行き違いがあったのだろうか?


「状況は分かったよ・・・普通に恋愛して、普通に恋人作ると良いよ。エルフでも、誠実に付き合えばきっと誰か見つかると思う。ただ、表現はちょっと気をつけたほうがいい」


ラックルが凄く疲れた様子で言う。


「・・・僕の方もスキルを明かしておくよ。僕のスキルは、性別による装備・スキル・魔法制限の撤廃。だから、攻・・・回復魔法も使えるんだ」


「なるほど・・・便利だな」


良いなあ、回復魔法。

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