第16話死んで楽になれ

月明りだけで辺りは薄暗い、アレンはそれが不安なのか持っていたランプに火打ち石のような物で火を付けて明るく照らし、俺とアレンは街へと向かった。




ランプの光があっても俺達のまわりしか照らすことは出来ない俺はアレンの事が心配でアレンの持っていたランプを俺が左手に持ち、右手でアレンの腕を掴んで歩いた。




「なにするんだ離してくれないか」




「こんな夜道で迷子になったら面倒だからな我慢してくれよ」




アレンは俺に掴まれた腕を嫌そうに顔をひきつらせながらも歩いた。これは仕方がない事なんだこうでもしないとこいつはまた迷子になってしまうこの暗いなか探すのは困難だ。だから俺は嫌がられてもこの手を離しはしない。




俺達はそのまましばらく歩いていた。もう少しで街に着いても良い頃なのだが中々着かないまさか暗いせいで俺も迷子になったのか?と心配していた。




不安になり、辺りを見ても暗くてよく分からないどうしよう迷子になるなよって言っておいて俺が迷子になってしまったようだ。アレンも俺が動揺しているのに気付いたのか、




「クロ、どうかした?」




と困った顔をして俺に問いかけた。


今、答えたら迷子になっているのを認めてしまう事になってしまう何も言わなければ迷子になっていないと実感が出来るまだ可能性がある!と俺は信じていた。




「何か言いなよもしかして…」




「やめろ!その先を言うな!」




「その言い方だとやっぱり僕達は迷子になったんだね」




「そ、そうですよ」




アレンが言いかけた事を俺は全力で止めたがアレンはそのまま言ってしまい俺も認めざるおえなかった。やっぱり俺達はどこに向かえば街に帰れるのか分からない迷子になってしまった。




「ハァー、僕に言っておいて君が迷子になってどうするんだい」




「す、すみません」




アレンはため息をついて呆れるように言った。俺は何も言い返せず謝ることしか出来なかった。俺とアレンは道は分からないがもうこうなったら勘で進むことにした。なんとかなるさ俺達は帰れるさという謎の自信が出てきた完璧にヤバい状況だ。




俺とアレンは何もしゃべらず黙って歩いていた。


すると、何かが足に触れるのを感じて足を止めた。




「いたっ!急に止まるなよ」




急に立ち止まった俺にアレンはぶつかり、鼻を抑えていた。


俺はアレンに振り向いて、




「お前、もしかして根に持ってるのか?」




と問いかけた。


アレンは後で俺にちょっかいをかけてきたのかと思い、俺はアレンを疑っていた。




「はぁ?何を言ってるんだい」




アレンはすっとぼけたようにではなく至って真面目な顔をして言った。あれぇ?こいつは何もしていないようだなてっきり迷子になった俺を根に持って、足でもかけているのかと思ったがじゃあこの感覚は一体なんなんだ?




俺は足元にランプを照らして、下を見たアレンも一緒になって俺の足元を見て、




「「ひぃっ!」」




と短い悲鳴を上げた。


なぜなら地面から生えてきた黒ずんだ人間の手が俺の足首を掴んでいたからだ。それを見て俺とアレンは固まっていた。




えっ?えっ?えーーー!?ちょっと待って!なにこれ、なにこれ


、なにこれーー!?マジでえっ?ちょっと待って、んーとまずなんで手が生えてんの?なんで俺を掴んでんの?なんでこの手意外と握力強いの?痛いんだけど!




俺がそうやって混乱していると地面が盛り上がっていき、人間の男の頭が出てきて、




「うっうあああああ、スライムなんかに…スライムなんかに…」




と低い呻き声を上げながらぶつぶつと言っていた。


間違いないこいつはアンデッドだ!前に聞いた雑魚モンスターに殺された屈辱でアンデッドになった連中だ!最初は冗談かと思っていたが今のこの状況を見て冗談じゃないと分かった。




「きゃぁぁぁぁぁっ!!」




とアレンは女らしい甲高い悲鳴を上げた。


アレンは俺に掴まれた腕を振りほどこうと自分の腕を引っ張ってもがいていた。




「おい!お前だけ逃げれると思うなよ!俺を置いて行くんじゃねぇ!」




「うるさい!離せっ!てゆーか君さっき俺を置いて逃げろとか言ってたじゃん!」




「あれはあれで今は今だ!逃げんな!」




逃げようとするアレンの腕を俺は必死に掴んでいた。


さっきのスライムの件は策が合ったから一か八かやれると思って逃がしたが今回は策なんてない俺を置いて逃げないでくれ!




「うっうわぁぁぁ、お前も死ねぇ~」




アンデッドはまたも低い呻き声を上げてそう言った。




「誰が死ぬもんか!しつこいんだよこの野郎!、戻れ!戻れ!戻れ!戻れ!戻れ!戻れ!戻れ!戻れ!戻れ!戻れぇぇぇ!」




俺はやけくそになりながらアンデッドの地面から出ている手や頭を踏んづけまくった。すると、俺の足首に掴んでいたアンデッドの手はもげて、取れてしまった。




チャンスと思い、俺はアレンを連れて全力で逃げた。


どこに街があるかなんて関係ない今はただあのアンデッドから逃げたい!そして、温かいベットで爆睡したい!俺はそう思いながら死物狂いで走っていた。




すると、後ろの地面から次々とアンデッド達が飛び出してきた。まるで何かに起こされたように、あっ!?多分アレンの悲鳴だなと俺は思った。




「うわぁぁぁぁぁ!なんかいっぱい来たよ!」




アレンは走りながら後ろを振り向いて叫んだ。




「後ろを見るな!ひたすら走れ!」




俺とアレンはアンデッド達から泣きながら逃げていた。


ああああ、もう嫌だなんで俺の異世界ライフはこんなに辛いんだよ!本当に異世界チートライフで楽したいよ!




約10体はいるアンデッド達に俺達は追われていた。中々アンデッド達は足が速いスライムよりも速いくらいだだが俺達も中々に逃げ足は速いが追い付かれるのも時間の問題だ。




そして、俺達が進もうとしている道の前に誰かが立っているのが見えた。助けてもらおうと走ってその人の近くまで行くとその姿がハッキリと見えてきた。




その人は女性で腰まである長いストレートの黒髪をしており、禍々しく怪しい光を放つような紫色の瞳をして、片手にまるで日本刀のような物を持っていて、黒と紫を混じり合わせたような不気味な鎧を着ていて月明りに照らされたその姿はとても幻想的だった。その女性はとても美人で二十歳くらいでかなり好みの顔立ちをしているが今は恐怖しか感じなかった。




不気味な色をしたまるで魔王の幹部でもしていそうな見た目だったこともあるがその女性は人では無いからだ。ある部分を除けばとても美しい女性なのだがそれのせいで怖くなってしまう




その女性にはおでこの少し上の辺りくらいに鬼のような黒くて短い角が生えていたそれが彼女を人間ではないと証明していた。




「仕方ないな、『黒裁こくさいっ!』」




その悪役の女性は少し低めのよく通る聞こえやすい声をして、そう言った。どうやらなにかの技の名前を言ったらしく女性は刀を水平に振ると黒々とした大きな斬撃が俺達の方に飛んできた。




「避けろぉぉぉぉぉぉっ!」




俺はアレンにそう叫び、アレンは咄嗟にしゃがんでその斬撃を避けたが俺は避けれずそのまま立ち尽くしていた。




ヤバい!動けない!どうする!どうにも出来ねぇぞこれは!




目の前に迫ってきた黒い斬撃になすすべもなく俺の身体は切り裂かれ、真っ二つに切られて上半身と下半身がお別れするかたちになってしまった。




そのまま地面に音を立てて、倒れてしまった後ろにいたアンデッド達も同じように真っ二つにされて倒れた。


痛いとかそんな感覚は全くない痛みを通りすぎるとどうやら人は痛みを感じなくなるらしい切り離された下半身が横たわっていたそれでも心臓の音は聞こえる。




なんてダサいんだ俺は…。少し視線を変えるとアレンが見えたアレンは怯えて震えながら上半身だけになった俺を涙を流して見ていた。




「良かった…お前は…大丈夫だったんだな……」




かぼそくなった俺の声は聞こえないくらい小さかった。


やがて、俺の心臓は止まり、この音も聞こえなくなるだろう最後におまえの無事が確かめられて良かったよ俺はもうダメだけどおまえは死ぬなよアレン……。




俺の命の灯火が消えていく、刻々と終わりが近付くだが俺はまだ死にきれねぇ!!

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