第12話 逃走と喧嘩

クエスト内容:スライム討伐! クリア報酬:銅貨100枚】




目の前には2メートル程の大きさのヘドロスライムが背を向けている。別にスライムは好戦的なモンスターではないが迂闊に近づいたり、手を出すと襲いかかってくるので危険だ。




「喰らえ!オラァァァァ!」




たとえばこんな感じにスライムの背後から木の棒を思いきり振り下ろすと危険だ。




俺はどれだけ強そうな見た目をしていても所詮はスライムと侮っていた。だがこのハードな異世界は俺の想像を超えてくる俺が振り下ろした木の棒はスライムに当たったがスライムは何もなかったかのように平然としている。




「おい!君は何をしてるんだスライムに物理攻撃が効くわけないだろ」




アレンは俺の10メートルほどうしろでそう叫んだ。


俺がスライムに振り下ろした木の棒はみるみるとスライムの身体に入っていって抜けなくなってしまった。




「おまえ、それ早く言えよ!どうすんだよ俺の武器抜けなくなっちまっただろ!」




俺は両手で木の棒を掴んで、綱引きみたいに力いっぱい引っ張ったがびくともしない




「どうすれば良いんだよ俺これがないとマジでただの村人だぞ!せめて剣でも買うんだった。あっでも俺一文無しだった。」




「ぶつぶつ言ってないで早く抜くんだよ!」




「分かってるよ!でもそう簡単に行かないんだよ!」




俺はアレンの方に振り向きながら木の棒を引っ張った。


すると、スライムの身体からやっと木の棒が抜けて、俺は急に抜けた反動でしりもちをついた。




「よし!抜けた!なあ、アレン俺達じゃこのクエスト無理な気がする諦めて帰ろうぜ」




「僕もそう思う帰ろうか?」




「了解!撤収だー!」




俺はスライムの粘液でベトベトになった木の棒を持ってアレンの方に歩いて向かった。そもそも物理攻撃が効かないという時点でこのクエストクリア出来る訳がないんだ。




もう昼過ぎだし、街に帰える頃には夕方になってしまうだろう今日はアレンに土下座でもなんでもして一泊できる金を借りよう




すると、アレンは血相かいた顔をして俺に




「クロ!危ない早く逃げて!」




と叫んだ。俺は後ろを振り向くと怪しく光る大きくて丸いスライムの黄色い目と目が合ってしまった。




ヤバい!見つかった!俺とスライムとの距離は約3メートル、スライムに足なんて生えていないしとても動きが速そうには見えないなので俺は死物狂いで走った。




すると、スライムは呻き声を上げて、地面を這って追いかけてきた。足のないやつに足が速いというのは変だがスライムの足はとても速かっただが逃げ足なら少し自信がある。




俺は先に逃げたアレンと肩を並べて走った。


なぜかと言うとかなりゲスな考えだ一人で死ぬより誰かと道連れになって俺は死にたい。




「おい!クロ!あれどうにかしてくれよ!」




「おまえ!村人ステータスの俺に無理言うなよ!」




スライムはドンドンと俺達に迫ってくる追い付かれるのも時間の問題だだが今の俺には逃げる事しか出来ない!




「そう言うおまえこそなんとかしてくれよ!」




「出来るわけないだろ!僕だって村娘ぐらいのステータスだぞ!」




「嘘言うな!村娘ステータスの奴があんなゴツい鎧着て動けるわけないだろ!おまえのステータスは女騎士位はあるはずだ戦ってくれ!」




「それは騎士になれなかった僕に対する当て付けか!別にいいさ僕は召喚士として生きていくからな!」




俺達はスライムに追われながらも走って口喧嘩をしていた。


俺達は走り疲れてしまい、立ち止まって息を荒げていた。


スライムは疲れを知らないのか俺達が休んでいても追いかけてきた。




「もう諦めよう諦めて最後は二人仲良くあのスライムに食われような?アレン?」




「僕はそんなの嫌だよ!使ってみたことないんだけど一か八かやってみるよ!」




アレンは背負っていた槍を構えた。




「無茶だ!物理攻撃は効かないんだろ?」




「僕が戦うんじゃないよ」




アレンは俺の方を向いて、ニヤリと笑ったあと真っ直ぐとスライムを見た。まさか俺に戦わせるのか?俺に勝ち目なんてないぞ




「『コールッ!』」




アレンは槍の柄を地面に突き刺してそう叫んだ。


すると、地面に白く光る魔法陣が出現した。




「おい、なんだよそれ?」




「これが僕のスキルだよ」




その白く光る魔法陣の中から白く光る物体が飛び出てきた。その瞬間、魔法陣は消えて白い光も消えそれから飛び出てきたものが段々見えてきた。




その姿は全身燃えるような赤色をして瞳は青く、二本の角が生えていて、太い足に鋭い爪を持っていて、翼も生えていた。それは紛れもないドラゴンだったアレンと同じような綺麗な青い瞳と赤い体がとても優雅に見えた。




「僕は召喚士だぜ?これくらい呼び出せて当然だよ」




アレンは年のわりに大きめの胸を前に突きだして、胸を張って自慢気に笑って言った。




俺ははっきり言って終わったと思った。


なぜならアレンが呼び出したドラゴンは小さかったからだ。


さっきのネコよりは大きいがそれでも十分に抱きかかえられる大きさのミニドラゴンだった。




「おい!嘘だろぉぉぉぉぉぉ!!!」




俺はこの時この異世界に来て、一番大きな叫び声を上げた。

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