第11話 ネコ

俺とアレンはこの街の土地勘もないのでまた話しかけやすそうな人に道を聞いて街門へと向かった。




わざわざ道を引き返さなくても街の外壁に沿って歩けば街門に着くのだがこの街は広すぎる右端から左端の外壁に向かうだけで休まず走り続けても六時間はかかるらしいなので引き返した方が早い




道を教えてくれたお婆さんが言うには今歩いている道を真っ直ぐ行くだけで着くのだが方向音痴のアレンはなぜか右や左に行こうとする。




「おまえさぁもしかしてまだ酔ってる?」




俺はまだ昨日の酒が抜けていないせいで足元がおぼつかないと思って隣にいるアレンに聞いた。




「別に酔ってはいないけどどうしてだい?」




「いや、なんでもない気にするな」




どうやら酔ってるのではなく迷ってるようだ。


本当にこいつの方向音痴のレベルには驚かされる一人で旅でもしたらこの街から出られないくらいのレベルだろう




そして、俺達は街門を抜けて街の外に来た。


初めて見る街の外の異世界そこに広がるのは広大な草原、雲ひとつない青い空、遠くには山も見える。




異世界と言うよりは遠い外国に来たような気持ちになるだがその気持ちは一瞬にして消えた。




「なあ、アレンあれなんだ?」




俺は当たり前のように平然と歩く奇妙な動物を指差した。




「冗談言うなよあれはネコだよ」




アレンは俺が指差した方を見て呆れたように言った。


俺はその答えに驚き、口をポカンと開けてそのネコ?を見ていた。そのネコ?は頭と前足と後ろ足と尻尾は確かに俺の知っているネコそのものなのだが身体はなんと羊のようなモコモコとした毛皮が付いていた。




「モンスターと見て良いんだよな?」




「あれは動物だよ!君、あのネコを殺したりしたら動物愛護団体が黙ってないからね」




俺はモンスターと思って木の棒を構えたがアレンに全力で止められた。この世界にも動物愛護団体がいるんだなでも俺にはあれが動物には見えないまさかとは思うがこの世界のネコはあれが普通なのか?




「わかったよ殺したりしないから触ったりしても良いかな?」




「おとなしいから触っても噛みつかれたりはしないから大丈夫だよ」




俺は好奇心でそのネコに近付いた。


人に慣れているのか目の前に立っても逃げようともせず、前足を舐めて毛繕いをしている。




そのネコは普通の大人のネコよりも少し小さめだったので触るのではなく思いきって持ち上げてみた。すると、




「ウワァァァァァァァァァァッ!」




俺は思わず叫んでしまい、俺の歓喜の雄たけびが静かな草原に響いてしまった。だがこれは叫ばずにはいられないこのネコのモコモコの毛皮は予想以上だった。




持ち上げると見た目より軽くて、手でその毛皮を掴むとまるで雲でも握っているようにモッコモコな毛皮をしており、滑らかな手触りをしている。そのモコモコ具合を堪能するために両手で揉んでも全く嫌がる素振りを見せずにただされるがままにされているしかも気持ちよさそうな表情をしている。




「どうした!いきなり叫んで」




アレンは驚いて戸惑いながら俺に歩み寄ってきた。




「なあ、アレンひとつお願いがあるんだけど飼っても良いかな?」




俺はネコに癒されてアレンにとても穏やかな口調で言った。


どうしようめっちゃ飼いたい!このネコを抱き枕みたいに抱いて一緒にお昼寝がしたい!俺の頭の中にはそんな思いでいっぱいだった。




「だめだよこの子は野生なんだから野生に返すのが一番だよ」




「嫌だ!もう名前も決めたんだよこいつの名前はモコだ!」




「なに言ってるんだ!早く離すんだよ!」




アレンはネコを抱きかかえている俺の腕をほどこうとしてきたするとネコは俺の腕の中からするりと抜け出して逃げていった。




「こうするのが一番なんだよわかってくれよ」




アレンは俺の頭を撫でて、体操座りをして落ち込む俺を慰めた。


ああ、俺の異世界ペットライフが数秒で終わってしまった……


俺はなんとか立ち上がり、肩を落として落ち込みながら歩いた。








ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






突然だが、普通スライムと言えばどういうのを想像するだろうかゲームにお馴染みのスライムの姿はプルプルとして青くて可愛らしいモンスターだ。




でも、この世界のスライムは全くの別物だ。


身体は青いの同じなのだがドロドロとしたヘドロのような姿をしており、手のようなものが二本あり、原形をとどめていないしかも黄色く光る丸い目玉をしている。触ったらグチャグチャいって手に引っ付いてしまい、中々とれないらしいそれに人くらいなら丸呑みにできるくらい大きいそんなトラウマを植付けられそうなくらいのモンスターが目の前にいる。




俺はスライムを無表情で見ていた。


なんだか思ってたのと違いすぎてなんか裏切られた感じだゲームのような可愛らしさなど微塵もないあるのは逃げたくなるような気持ち悪さだけだ。




「テッテレー♪ ススギコウヤは過酷な現実を知り、レベルが上がった。よし!レベルが上がったから帰ろうアレン」




「ふざけんな!」




アレンは帰ろうと振り返った俺の袖をつかんで引き止めた。

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