第9話ネガティブ


俺たちを助けに来てくれた女性は二人組を前にしても怖じ気付く様子はなく拳を上げて構えていた。




「おい!あんた俺達に構うな!あんただけでも逃げろ!」




俺は声を振り絞って叫んだ。


助けに来てくれたのはすごく嬉しいがこの人が強そうには見えないなんだかあっさり負けてしまうところが想像出来る。この人のような良い人が俺みたいな見ず知らずのやつのせいで危険な目に合って欲しくはない




「私に逃げるなんて選択肢はない!」




女性はそう言い返してきた。


やめてくれ!早く逃げてくれ!と俺は思っていたがさっき叫んだせいで血を吐いて声を出せない俺は泣きながら二人組を睨んでいた。




すると長身の男が女性の元へと走り出した。


そして、女性の顔目掛けて右足でハイキックをした。




ガンッ!と鈍い音が響いた。


長身の男のハイキックは女性の顔に当たったように見えた。


俺のせいだ俺が弱いから……




「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」




俺は悲痛の叫びを上げ、また血を吐いて泣きながら地面に顔をうずくませた。


俺は誰一人守れないどころか巻き込んでしまった俺のせいであの女性もアレンも殺されてしまうだろう悪いのは誰だ?あの二人組か?違う無力でなにもできない俺だ。




死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい


死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい






俺はとことんそう思った。


誰も助けられない俺なんか死んでしまえばいいんだ……。










「おい!お前!うるさいぞ!騒ぐな!」




するとあの女性の声が聞こえてきた。


女性は男のハイキックを左手で受け止めて掴んでいたのだ。


俺の位置からはただ蹴られたように見えていたのでそんなことに気付かなかった。




「やられたとでも思ったのか?全く私がこの程度の相手に負けるわけないだろ!」




そんな事言われても今日初めて会ったやつの実力なんて知らないし、強そうには見えないから仕方ないだろ!




そして、女性は男の足を離した後、右手で男の顔をぶん殴った。すると男は近くにあった石壁に体を打ち付けて力なく倒れてしまった。石壁にはヒビが入っており、その威力を物語っていた。




女性がもう一人のスキンヘッドを睨むと悲鳴を上げ、怯えて逃げていった。




なにこの人めちゃくちゃ強いじゃんなんだったんだよさっきまでの俺の死にたいとかネガティブな思いがバカみたいじゃん




「お前達、大丈夫か?」




「俺を見て…大丈夫と思うあんたは…どうかしてるよ…。」




俺は口に血を流して、あばら骨も何本が折れて、砂まみれになったボロボロの姿で女性に言った。




「そんな風に口答え出来るなら大丈夫そうだな」




やっぱりこの人どうかしてる


俺はうつ伏せに寝転がっていた状態から寝返りをして仰向けになって空を見た。


全身が痛いもう限界が近いさっきまで死にたいと思っていたが今は無性に死にたくないなんだか今死んだらバカバカしく思える。




「クロ、助けに来てくれて嬉しかったよでもカッコ悪いね」




「なに言ってんだ…言った通りお前に…指一本触れさせなかっただろ?」




笑って俺が言うとアレンはクスリと笑った。


そして、俺の手を取り、肩を貸して歩き始めた。


ずるずると俺はアレンに肩を貸されながらゆっくりと歩いた。




でも、アレンの体は小柄で中々前に進まない


なんか助けに来たのに助けられてるんだな俺は




「仕方ない私も手伝ってやる」




そう言って女性はもう俺の片方の手を掴み歩き出した。


二人の温かい体温が血を吐きすぎて貧血気味の冷たい俺の体に伝わってくる。




ありがとうこんな俺を二度も助けてくれてせめて名前だけでも聞きたい俺は血まみれの口を無理矢理開けてゆっくりと、




「あんたの名前を・・・・・」




と言いかけたその時、ピーーッ!となにかの笛の音が聞こえてきた。




「ヤバい、兵士が来る!見つかると面倒だ急ぐぞ!」




きっと俺が蹴られているのを見た誰かが兵士に通報したのだろうガヤガヤと男達の声が聞こえる。




それから逃げるため女性は俺を担ぎ、アレンの手を掴んでい走り出した。




走るとその振動で体の痛みが増してきた。


ちょっと降ろして!すごく痛いからお願いします降ろして下さい!いやでも俺、動けないからやっぱり降ろさずに歩いて下さい!




全身の痛みで俺の意識は薄れていき、ゆっくりと目を閉じたあとそのまま気絶してしまった。

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