第8話 異世界特典

俺は暗い夜道をひたすら走る、悲鳴が聞こえたところに向かった。人気のない路地裏にいかにも柄の悪そうな男二人に絡まれていて女性が腰を抜かして座り込んでいた。




その女性は俺を見て、




「クロ!すまないけど僕を助けてくれないか?」




その女性の正体、アレンは顔に涙を浮かべながら俺に助けを求めてきた。柄の悪い二人組はアレンの言葉を聞いて俺の方を振り向いた。やっぱりこいつだったか仕方ない助けてやるか




「なんだ?おめぇ知り合いか?」




手前にいたいかついスキンヘッドの男が俺を睨み付けて言ってきた。俺は少しビビったがビビる必用なんかない




「知り合いもなにもそいつは俺の仲間だ!そいつには指一本触れさせはしないぜ!」




俺は堂々とした態度でその二人組に言ってやった。


なんだか物語の主人公になった気分だ危ない状況な気もするが俺にはひとつ思っていた事があるので自信に満ち溢れていた。




「へぇー、お前生きがいいじゃねぇかならお前を殺った後にこの娘と遊ぶ事に決めたぜぇ」




奥の方にいたひょろりとした長身の男が前に出てきた。


なんだか弱そうだが隣にいたスキンヘッドがそいつが前に行こうとすると大きく後ろに下がって邪魔にならないようにしていた。




長身の男はニヤリと笑いながら近づいてきた。案外こういうやつが狂暴で強いのかもしれない




「殺れるもんなら殺ってみろよ!相手してやるぜ!」




俺はクイクイッと軽く手招きをして後、拳を上げて構えた。


別に俺は生きがいいわけじゃないただイキっているだけだ。俺はこの世界に来てある疑問を持っていたそれは今だに異世界特典のイベントがないところだ。




例えば、強力な武器だったり、特殊能力が貰えるのにはピンチになった時だ!今がそのピンチだ!俺はチート武器と特殊能力はもう諦めた思い当たる異世界特典はただひとつ強くなっているというものだ。




俺はもしかしたらこの世界ではかなり強い設定なのではないかと思ったあんな突然異世界に送られて特典なしなんて思えないきっと素手でドラゴンくらい倒せてしまう程強くなっているはずだそれならこんなやつら相手にならねぇなと俺は思ってものすごくイキっていた。




「喰らいやがれぇぇぇぇぇ!」




俺は叫んで長身の男の顔面目掛けて殴りかかった。


俺の脳内ではその長身の男が近くの石壁にめり込む姿を思い浮かべていた。




ところが長身の男は俺のパンチを軽々と避けた後、俺の腹に膝蹴りを喰らわせてきた。




「グハッ!」




俺はキツい一撃が入った事により、口から血を吐いた。


さっき食べた物が出なくてとてもよかったと思っているだが俺弱すぎないか全然強くなんかなってないぞ俺って異世界特典なしで送られた可哀想な人なのこれは酷いだろ!俺みたいな普通の学生は特典でもないとこんなハードな異世界生きていけないぞ!




「なんだあれだけ生きがいいわりに弱いなお前」




俺は膝をついて腹を抱えてうめいていた。


クソー!予想外だこのままじゃ殺られる俺はそう覚悟した。




「コノヤロウよぇーくせにでしゃばるんじゃねぇぞ!」




俺は長身の男に顎を蹴られて倒れてしまった。




「おい!お前もやっちまえ」




「おうよ!」




長身の男とスキンヘッドが俺をサッカーボールのように蹴ってきた。




「すいません……調子に乗ってました……マジですいません許して下さい……。」




二人組は俺の言葉も聞かずに蹴るのをやめなかった。蹴られる度に鈍い痛みが俺を襲う、地面の砂が俺の口の中に入ってきて砂の味を噛み締めては血を吐いて吐き出す。容赦なく二人組は俺を蹴り続ける。このままじゃ死んじまうよ




助けに来てこのザマかよ俺はなんてカッコ悪いんだこんな事になるなら助けに行かなければ良かったでも助けに行かなかったらアレンは無事じゃ済まなかった。いや、でもこいつらは俺を殺した後アレンに酷い事をするつもりだ結局俺はただの無駄死にだ。




俺の意識は段々遠くなってきた蹴られ続けているのだがもう痛みさえ感じなくなってきた。ああもう俺、死ぬんだこうやって誰も助けられずにそういえば俺、頼んだ酒飲んでいなかったな最後に飲んでみたかったな






「おい!待て貴様ら!そこで何をしている!」




意識が遠く中で俺はその声を聞いた。


俺はゆっくりと顔を上げ、なんとか目を開けてその声がした方を向いた。




そこには駆けつけたばかりで長い金髪をなびかせて、月明かりに輝くオレンジ色の瞳をして、膝くらいの長さの赤いスカートを履き、白いシャツのような服を着た二十歳くらいの目立つスレンダーボディの美女が立っていた。


その姿はたとえ、人ゴミの中に居たとしても即効で見つけられそうなくらい派手でまるで真っ暗な夜を照らし、光輝く太陽のようだった。




「なんだ?おめぇも知り合いか?」




長身の男は蹴るのを止めて、その女性に問いかけてきた。




「知り合いではないな見たことすらないでも私はその二人を助ける」




女性は片手を腰に当てて、俺とアレンを指差した。


その姿はとてもカッコよく俺はつい頬を赤らめてしまった。


すげぇこの人カッコいい!そして俺カッコ悪りぃ




「なんだぁ物好きなやつだなおめぇ知り合いでもねぇのに助けに来るなんてよぉ」




「フッフッフッ!助けるに決まっているだろ?困った人は見捨ててはおけない何故なら私は勇者だからな!」




その女性は自分の胸に親指を当てて、広げた手を真っ直ぐ横に上げてまるでヒーローのようなポーズをして言った。


それを見るとさっきまで俺を蹴っていた二人組はキョトンとした顔で女性を見ていた。俺も似たような顔でその女性を見た。




さっきまでカッコ良かったのになんだこの変な人・・・。

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