第6話 蛇と酒

辺りはすっかり暗くなってしまい俺とアレンは結構良い時間になったので晩飯を食べることにした。




異世界に来て何時間経ったかは分からないがここに来る前から少し腹が減っていたのでとても腹が減ってしまった。なんでも良いから早く食いたいところだだが俺はひとつの問題にぶつかった。




「なあ、アレン俺達って仲間だよな?」




「何を今更言ってるんだ僕と君は仲間に決まっているだろ」




「図々しいかもしれないが俺今一文無しなんだ金を貸してくれないか?」




そうだ重要なことを忘れていた俺は今一文無し!この絶望的な状況から抜け出すにはクエストしかないのだだがこんな時間に近場のクエストを行くやつなんていない。




この辺の夜はかなり危険らしいなんでもここに生息している雑魚モンスターに殺されてしまった屈辱でアンデッドになった冒険者達が夜な夜なさまよっているらしいしかも最近、そいつらのボスらしき黒い鎧姿の怪しい人影を見たという噂がある。




俺のようなステータス村人の奴が外に出ればあえなくアンデッド達の仲間になってしまうだろうせっかくアレンが仲間になったのにアンデッド達の仲間になるなんて冗談じゃない!




そう考えているとアレンは俺の隣の席に座った。


そして、俺の顔に自分の顔を近付けてきてアレンの青い瞳が俺の目を覗きこんできた。


やっぱり駄目かそうだよないくらなんでも金は貸してくれないよなしょうがねぇ今日は飯抜きかと思っていると




「金を貸すだって?何を水くさいおごってやるよ!」




アレンは上機嫌でそう言った。




「良いのか?ありがとう恩に着るよ!」




本当にこいつの仲間になって良かったと思っているこんな気前の良いやつ俺は好きだ俺のアレンの評価がぐんぐんと伸びていくこいつは自信家で方向音痴という欠点があるがそれを除けば結構気が合うし気前も良い元の世界では中々こういう奴には出会えなかったというか出会えなかった。




「それで何を頼むんだ?」




アレンは俺にメニューを渡してきた。


たくさんメニューはあるのだがどれもこれも聞き慣れないものばかりだ。




例えば、オオトカゲの丸焼き、グリフォンの唐揚げ、マンティコアの尻尾のロースト、スライムのプルプルゼリーなどあまり食欲が湧いてこないようなものばかりだ本当にこれ食べれるのかという感じだ。




なにか大丈夫そうなものはないのか普通の魚とか豚とか牛とかないのかと俺はメニューを必死に読むがそれらしきものはない


どうしようさっきはなんでも食えると思っていたが限度がある食文化の違いに驚きを隠せない仕方がないこの時は長いものには巻かれろという言葉が合っているのか?もうヤケクソで食ってみよう




「そ、それじゃあこの蛇の蒲焼き定食にでもしようかな」




サバイバルのテレビ番組で確か蛇は自然界のスペアリブのようだと聞いたことがある多少骨は多いが結構イケるらしいなので一か八か食べることにした。




「飲み物はどうする?やっぱり酒だよね?」




アレンは俺に酒を勧めてきた。


何を冗談言ってるんだこいつは俺達未成年だぞ酒はダメに決まっているだろもしかしてこの世界は酒を飲める基準が日本より低いのか?俺はアレンに聞いて見ることにした。




「そういや、酒っていくつになったら飲めるんだっけ?」




「何言ってんだよお酒は冒険者になってからだろ?もう僕達は冒険者さ飲めるに決まってるだろ」




なんだよそのお酒は二十歳になってからみたいなフレーズは初めて聞いたぞだがまあ、飲んでも良いのかそれなら飲もう




「よし、んじゃ飲もうかアレンも飲むだろ」




「もちろんさ」




そう言ってアレンは俺の肩を抱き寄せて笑った。


男同士でくっつくのはなんだか気持ち悪いなと俺は思った。


アレンに抱きつかれると女性の香水のような匂いがする。


男が女の香水をつけるなんて変わってるなこいつ




そして、俺とアレンは注文を終え、しばらく経つと料理がきた。




俺は目の前の料理に手を合わせて合掌し、




「いただきます」




と言った。こんなに腹が空くと改めて食べ物の大切さを知るここまで苦労して食べる飯は良いものだろう




「なんか変わってるねそれ」




「俺の国の文化さ」




アレンはそうかいと言って自分が頼んだものを食べ始めた。




俺の頼んだ蛇の蒲焼き定食というものはこの世界にもあって感激した米とコンソメスープと茶色いタレがかかった蛇のひらきだった。日本のような白米ではなく茶色っぽい色をした米で噛むとプチプチといった感触がするこれもこれで悪くはない




コンソメスープは元の世界とはなんら変わらなかった。


問題はこの蛇だ見た目はうなぎに見えるが味はどうか




俺はおそるおそるフォークで割って口に入れてみた。


身は予想以上にふっくらとしており、多少の硬さはあるものの甘辛いタレと相性がよくとてもうまい骨が多いと聞いていたが丁寧に骨は全部抜かれていてとても食べやすかった。




なんだ普通にうまいじゃないかこれなら他のものもイケるんじゃないかと思えてきたすると隣からガンッ!となにかがぶつかる音がした。隣を見てみるとアレンが頭をテーブルに打って倒れていた。




「何してんのおまえ?」




「ちょっとねお酒飲んだらこうなっちゃった」




アレンはろれつがまわらなくなっており、ふらふらと頭を揺らしながら座っていた。




こいつかなり酒が弱いんだな無理して飲むなよ俺より年下だしやっぱり早かったんだろうな




「ふらふらすんなよちょっと寝てろ水頼んでやるから」




アレンはふらふら揺れながらうんうんと気の抜けた返事をした。


俺は店員は見つけて呼んで水を頼んだ。本当に世話が妬けるなこいつはまあ、おごってもらうお礼だ看病してやるか




「あああああ、これ重いよ外そうっと」




アレンはそう言って兜を外した。


まだふらふらとしており、言葉にならない事を言いながら腕を枕がわりにして寝た。アレンの赤くて長い髪が兜を被っていたせいで乱れていたので俺は手ぐしで整えた。




「にしても男のくせに長い髪だなまるで女みたいだな」




兜で見えなかったアレンの顔は思っていたよりも整っており普通に美少年でどちらかと言えば美少女のようだった。




その可愛らしい女のようなアレンは寝息をたててスヤスヤと寝ていた。俺はアレンの長い赤髪の匂いを嗅いだあとじっくりと顔を見た。




「この匂い、この見た目もしかしてこいつ女?」




俺は唖然とした表情でアレンを見ていた。

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