EPISODE:12 天使を射ち堕とす日/Operation:Angel Fall
浅倉諒司は優秀な警察官だった。
子供の頃から、曲がった事は許さない一本気な性格だった諒司は、高校を卒業後、迷う事なく警察官を目指した。
警察学校を準主席の好成績で卒業した後、数年の交番勤務を経て機動隊に入隊。部隊長の推薦を受け警視庁特殊急襲部隊――通称SATへの転属を果たした。
日本中から集められた精鋭の中の更なる精鋭を磨き上げる為に行われる、鬼でさえも血を吐くと比喩される訓練は全て、犯罪者と戦う為に課せられた試練だと思っていた。習志野で行われた陸上自衛隊との合同訓練に加え、イギリスではSAS、フランスではGIGN――訓練中の殉職さえも珍しくない過酷極まる海外研修も乗り越えた自分たちなら、どんな絶望的な状況でも乗り越えられると信じていた。
あらゆる状況を想定しろと教えられた。常に最悪な状況を考慮し、極限状態でこそ最善の判断を下せる隊員こそが、常に状況が移り変わる事件現場で最高のパフォーマンスを発揮できるのだと、諒司は度重なる訓練で骨身に叩き込まれた。
ただ、それは相手が犯罪者であり。
元より人間だった時を想定した話だ。
仮に。対する相手が人間の常識を遥かに超えた異形の怪物だった時。その時どう行動すべきかなんて、誰に想像できるだろうか?
午後七時三十分。鴉ヶ丘市中央区鷹宮駅前交差点。
――今、諒司の前には真の地獄が顕現していた。
平常時であれば仕事帰りの社会人や学生で賑わう駅前繁華街の姿からは一転、今や交差点には無残に破壊された特型警備車両と遊撃車両の数々が、物言わぬ残骸と化していた。赤と青の光が繰り返し明滅する中で、無人と化したパトカーからは甲高いサイレンが悲鳴のように鳴り続けている。繁華街の明かりが昼のように辺りを照らす中、車から零れたガソリンに引火した炎が柱と化し、黒煙と共に天高く登る。
生きた人間は、諒司だけだった。
善も悪も関係無い。法と秩序の元執行される正義など、野生の本能の前ではただのまやかしに過ぎないと気付かされてしまった。数分前、諒司の目の前で行われたのは命のやり取りなどと言う品行方正なものでは無く、ただの一方的な殺戮だった。
SATが現場に到着した時には、民間人、警官ともに数多くの犠牲者が出ていた。
事件後すぐに駆けつけた機動隊と
――それが、つい一時間前のこと。
あらゆる事件に完璧な前例は存在しない。ゆえに、今回の作戦を達成するには精密なオペレーションが必要なことは分かっていた。
狩るべきは白き姿の
鷹宮駅前周辺は完全封鎖、駅前を取り囲む商業ビルの屋上にはH&K PSG-1を装備した狙撃班が現場周辺を取り囲むように配置。仮に突入班が標的を撃ち漏らしたとしても、スナイパーライフルを装備した狙撃班が怪物を蜂の巣にすると言う寸法だ。
しかし、作戦の開始直後から、前提条件が間違っていることを、SATの面々は知らしめられた。人間の動体視力では視認不可能なほどの高速機動で動く怪人は、遠く離れた気配さえも敏感に察知し、狙撃班が標的を捉える前にビルの屋上まで飛翔、狙撃手を片っ端から始末する。飛行能力を備えているという報告を受けなかった狙撃犯は一方的な攻撃にて瞬時に壊滅状態に陥った。作戦開始直後から援護体制を喪失した突入班は、もはや空中から無防備な状態で狙われるのみだった。
自分たちは狩人では無く、ただの獲物だったのだと思い知らされた。
ひとり、ひとりまた一人と、SAT隊員が為す術も無く惨殺されていく。MP5A5のフルオート射撃は全て堅牢な甲殻に阻まれて、89式小銃から放たれた5.56mm弾でさえも満足に効果は見込めない。もはや決定的な対抗手段が失われた状態で攻撃を続けるSAT隊員たちは、白き怪人にとって格好の獲物だった。薄暗闇の中、散発的に瞬くマズルフラッシュが悲鳴と共に消えていく。
右足は折れ、左手の感覚は既に失われている。もはや全身が満身創痍の状態で立ち上がる事すら出来ず、それでも偶然最後まで生き残ったのが、浅倉諒司だったという、それだけの話。
「クソっ、クソっ、クソっ……!」
諒司はレッグホルスターからSIG SAUER P226を抜き、迫り来る怪物に銃口を向けた。繰り返し悪態を吐きながら引き金を絞り続けるが、怪物には微塵も通じない。堅牢な甲殻に阻まれた9mmパラベラム弾は怪物に傷ひとつも付けること無く、潰れてひしゃげた鉛として地面に転がる。当たり前だ。サブマシンガンもアサルトライフルもスナイパーライフルも効かないなら、後はロケットランチャーか戦車でも持ってくるほか斃すべき手段は存在しない。無駄な抵抗と分かっていても、諒司はゆっくりと近づいてくる怪物に対して、闇雲に撃ち続けた。
拳銃が乾いた金属音と共にホールドオープンする。スライドが後退した状態で停止し、無慈悲にも諒司に弾切れを知らしめた。
もはや抵抗手段の一切が失われ、最後の希望さえも断ち切られる。
猛烈に押し寄せる死の恐怖の中、諒司は最初で最後の神頼みをした。
――助けてくれとは言わない。
贅沢な願いごとなんかあんたはどうせ聞いちゃくれないだろう。
今更信心深くなろうとも思わない。
だから俺の命なんかどうでもいい。せめて、
せめて俺が死んだ後、奴を倒してくれる誰かを寄越して欲しい。
この怪物をぶっ殺してくれる、強い力を持った、誰かが――
圧倒的恐怖に苛まれ、今や最期かと奥歯を噛みしめた。
しかし。
――救いの手を伸ばしたのは、天上の神では無かった。
「
少年の声が聞こえたのは、果たして幻覚だったのだろうか。
白き翼を持ちし怪人は、自らの背後に迫り来る、新たな気配に振り向いた。
闇の中から姿を現わしたのは漆黒の影。
夜そのものがヒトの形を型取ったような黒色の甲殻を身に纏った怪人が、右腕にブレードを展開し、白き怪人の背後から襲撃する。完全に虚を突かれた不意打ちに、白き怪人は翼を広げて防御した後、衝撃で数メートル後ずさりする。
白と黒。身体的特徴は似通っているものの、真逆の体色が陰陽の如く対を成す二体の怪物が、諒司の前で物言わず対峙していた。
さながら怪物は、諒司を護るかのように庇い、立っていた。
「化け物を斃すのは、同じ化け物、ってか……」
口元から血を流しながらも、諒司は瞠目していた。宗教画に描かれる悪魔のような異様でありながらも振る舞いは何処か人間的であり、諒司にとってそれは、悪しき怪物を討つべく馳せ参じた英雄の行動に、等しく映った。
――そうだ。子供の頃、俺は正義の味方になりたかったんだっけ。
どうしてだろうか。死の淵にも関わらず、諒司は場違いにも子供の頃の記憶を思い出していた。特撮番組で観たヒーローは、助けを求める人々の窮地に必ず現れた。何度倒れても、再び立ち上がり、正義の為に戦い続ける勇敢な姿に憧れ、また自らもそうでありたいと志したのが、警察官を目指した自分の始まりなのだと。
だとしたら今、自分の命を救ったあいつは、あの怪物は。
諒司にとって、現れた
*
EPISODE:12
Operation:Angel Fall
警視庁のヘリコプターが鴉ヶ丘市鷹宮駅前交差点上空を旋回し、対峙する二体の怪物が、サーチライトで眩く照らし出されていた。
燃え立つ炎を背に立つ白き翼を持つ怪人――スノーホワイトを、玄崎明=ブラックシャドーは琥珀色の眼球で、対する敵を真っ直ぐに睨み付けていた。
多くの民間人や警察官を殺害し、尚も犠牲者を増やし続けているスノーホワイトは、白い甲殻の所々を返り血で濡らしていた。天使のような白色が赤黒い紅色に染まる様は、悪魔的な威圧感を放っていた。
加えて、本来であれば琥珀色であるはずの眼球が、真っ赤に充血したように染まっていた。古嶋晴臣曰く、眼球の変色は宿主への侵食度が高いレイブンが示す身体的特徴の一つであり、もはや宿主の自我がほぼ喪失した
周囲には無数の死体が転がっている。スノーホワイトの暴走により惨殺された死体の数々が視界に入る度に、明は自らの無力を思い知らされる。しかし止められなかった悲劇を悔やむより、これから先に起こりうる惨劇を食い止めなければいけない。その為に戦うことに、もはや寸分の迷いも無かった。
『――いい玄崎くん。出来るだけ奴の注意を引き付けて。あそこで奴を倒す必要はない。油断させるだけ油断させて、所定の位置まで誘導して』
道中で交わした、飛鳥の言葉が脳裏に過ぎる。飛鳥と晴臣は別行動で、彼女らが事前に立案していた対スノーホワイト作戦の実行に向かった。既に作戦概要は十分に聞かされている。明が成すべき仕事は可能な限り時間を稼ぎ、飛鳥たちが配置に付くまでスノーホワイトの注意を出来るだけ逸らすこと。
火の粉舞い散る夜の交差点にて、対峙するは二者の怪物。
先に仕掛けたのはスノーホワイトだった。初めて遭遇した時のような優雅さはとうに失われ、野生の獣の如き獰猛さを剥き出しにし、白き怪人は明に右手で殴りかかった。踏み込みの間すら見せぬ神速の一撃。
以前であれば回避不可能だったはずの攻撃を、明は確かに見開いた両目で捉えていた。引いた体制の両腕で防御し、反動は体全体で捉え、後ろ足から地面に逃がす。足元で沈み込んだアスファルトが粉々に砕けるも、後退を敢えてバネにし、再び前面に踏み込んだ一歩からカウンターを放つ。
心無しか、スノーホワイトが虚を突かれたような表情を見せた気がした。明の繰り出した右ストレートは易々と防御されたものの、一方的に嬲られるだけだった以前の戦いよりも、確かな手応えを感じていた。
スノーホワイトは今までと違う明の動きに違和感を抱いたのか、すぐさま自らの得物である双翼を延伸させる。鋭い音を立て硬化した翼は長大なリーチを持つ剣と変化し、明を一刀両断しようと迫り来る。
あの双翼により何度死の淵へと追いやられたか――右腕を断たれた次には脇腹を削がれ、次には命すら絶たれかねない恐怖の象徴が、速度を伴い明へと押し寄せる。
後ろに避けるか、横に避けるか。いずれにしても勝機は薄いだろう。闇雲に避けたとして、次の動作でやられてしまっては意味が無い。今の明が成すべき使命は飛鳥たちが準備を追えるまで、出来る限り時間を稼ぐこと。
『今夜で奴を仕留める。必ず全部終わらせる。今度こそ、あなた一人だけでは戦わせない。けど、今はあなたにしか出来ない、あなたなら出来る戦いがある。だからお願い。戦って明くん。そしてどうか――』
――生き延びてと、凉城飛鳥はそう言った。
約束を守る為に、玄崎明はここにいる。死んでしまっては意味がない。だから闇雲に命を賭けることは出来ない。
果たしてこの死線を越える為に、一体何が必要なのか。
明は奥歯を食い縛って駆け出した。
無謀とも言える行動。けれど、引いても避けても無駄ならば。
だったら敢えて、一歩踏み込めばいい。
あとに必要なのは、勇気だけだった。
振り下ろされる右翼に対し、明は身を逸らして飛び込んだ。押し寄せる恐怖は無尽蔵に湧き出す闘争本能で麻酔される。一切の防御体制をかなぐり捨てた疾走で飛び込んだ明は、ショルダータックルの要領で左肩を激突させ、パトカーの残骸にスノーホワイトを思い切り叩き付けた。
「おおおおおおおおおッ!」
再び虚を突かれたスノーホワイトは、裂帛の叫びを張り上げる明の攻撃に体制を崩し、パトカーの車体に体を沈めた。その隙を逃さぬと明は右腕のブレードを展開、標的の首元を見据え思い切り突き刺す。刃の切っ先は辛くもアルミ製の車体に吸い込まれ、背後で赤い火花を散らした。何度も刺突を繰り返すが、次々とパトカーに穴が空くのみで、決定的な攻撃には至らない。
―――なら。
スノーホワイトが反撃の兆しを見せるのと同時に、明は斜め上に跳躍、深い爪痕が抉られた警備車両に足を掛け、軽快な三角飛びの要領でスノーホワイトの頭上へと飛翔する。上空で錐揉み回転を都度二回、溜めた遠心力を解放するように斬り付けたブレードの一撃は、しかし超人的な動体視力にて躱される。
「まだだ!」
攻撃を止めてはいけない。奴に反撃の隙を与えてはいけないと、明は後方に跳躍、スノーホワイトと距離を取った後、足元に転がっていたサブマシンガン――MP5A5を片手で拾い上げる。SAT隊員が主装備として使っていた短機関銃を右手のみで構えると、明は即座に引き金を絞り、9mmパラベラム弾の嵐を叩き付ける。三十発近い弾丸をフルオート射撃で撃ち尽くすが、無論標的に有効打を与えることは出来ない。スノーホワイトは身動ぎもせず、全ての弾頭をひしゃげた鉛の塊に変えた。
射撃に対し一歩たりとも回避行動を見せず、防御体制をとる兆しも無いスノーホワイト。奴にとってはライフルもサブマシンガンも豆鉄砲に等しく脅威に値しない存在なのだと、弾幕が切れたその瞬間を好機とし、彼我の距離を即座に詰めてくる。
――でも、それでいい。
内心で明は微笑する。
至近距離でスノーホワイトの眼光を睨みつける明の手にはいつのまにか、巨大な拳銃が握られていた。黒と銀色のツートンが美しいデザートイーグルのカスタムモデル。分厚い引き金を躊躇なしに引き絞ると、至近距離で盛大な銃声が響き渡る。メトセラ・マグナムの銃口から吐き出された50口径甲殻徹甲弾が、スノーホワイトの腹部甲殻を破壊し、鮮血と共に白亜の破片を撒き散らす。
初めて与えた有効な反撃。だがそれは、燃え立つ炎に油を注ぐ行為だったのかもしれない。腹部から夥しい血を流すスノーホワイトはおぞましき咆哮を上げると、僅かに身をかがめた予備動作ののち、明の目の前から霧のように姿を消した。
逃げたのだろうか――と明の頭に楽観的な考えが過ぎるも、背後に膨れ上がった風圧が即座に否定した。本能的に振り返った明が右腕のブレードを構えるも、既に明の後ろ側に回っていたスノーホワイトは攻撃動作を開始していた。
白き双翼を横薙ぎに、巨大な質量に速度を伴い襲いくる斬撃。その場凌ぎでメトセラ・マグナムを片手で応射するが当たるはずもなく、明は再び回避行動に移りながらも、スノーホワイトの驚異的な体力に再び瞠目する。
ここまでやっても駄目なのか、と。
腹に大口径の銃弾を見舞ったところでかすり傷だとすれば、小手先で戦うのはやはり無理だと明は再認識した。弾切れになったメトセラ・マグナムを放り投げ、翼を回避した後に襲いくる拳と空中浮遊からの蹴撃を連続で回避すると、もはや攻守の体制は逆転している事に明は気付く。
――それでも、奴には追いつかなくてはいけない。
スノーホワイトの出現からおよそ一時間が過ぎている。にも関わらずスノーホワイトは動きを止めず、超速度を保ったまま攻撃を続けていた。長時間に及ぶ戦闘は変身者に大きな身体的負担を及ぼす事を、明は肌身で体験している。
例えるならエンジンが焼き付いたまま加速を止めないF1カー。アクセルを踏み続けたまま爆走を続けた結果、待ち受けるはオーバーヒートによる破滅の運命。誰がスノーホワイトの正体であるかは関係ない。変身者が生身の人間である以上、このままでは戻ってこられなくなる。
だから止めなければいけない。
でも、その為には速さが足りない。
「――もっとだ」
もっと早く。
このままじゃ奴には追い付けない。全ての攻撃が易々と見切られている状態で、正面から立ち回るのは無謀だと、最初から分かっていたはずだった。しかし奇襲も不意打ちも効果が無いとすれば、後に残るのは一対一の正攻法。だとしたら越えるべき敵は目の前の敵では無く、自分自身に他ならない。
退屈な時間から抜け出したいと思っていた。変わり映えの無い日常の
――速く。
運命の糸に絡め取られる前に、先に進む力さえあればと思っていた。
――――迅く。
せめて今度こそは、約束の時に間に合うように。
――――――疾く。
スノーホワイトの加速に呼応するように、明も比例的に速度を増す。
耳元から飛び出そうな程に心臓が早鐘を打つ中で、体の内側から灼けるような熱を感じた。その時。
どくん、と。
――鼓動が、ひときわ大きく聞こえた。
時間が停まったような感覚、空間が粘性を帯びた重さを孕む。空中に舞う火の粉も、足下に散るコンクリートの破片も、緩慢とした世界の中で、全てが緩やかな動きを見せ始める。
その瞬間、体表の甲殻に僅かなひびが入った。度重なる戦闘に加えた超加速状態に、ブラックシャドー自身の甲殻強度が限界に達していた。明は敢えて疾走を選ぶ。限界までアクセルを叩き込んだ影響で、極度の
剣で打ち合う都度、秒刻みに増す鼓動。心臓が破裂しそうな程に拍動を繰り返す。
――あるいは。
それが即ち、新たなる進化へのカウントダウンなのだとしたら。
明は息を大きく吸い込んだ。
踏み出す一歩に躊躇いは無い。
もう、自分を縛る殻なんか要らない。
限界なんか、ぶっ壊してやれば良い。
「――
決意の呟きを撃鉄に変え、玄崎明=ブラックシャドーの全身を覆っていた甲殻が、内側から剥がれ落ちた。幾つもの装甲が合わさり甲冑と化していた隙間から赤い光が漏れ出し、緩やかな体感時間の中、甲殻が爆発的に排除される。
全身の八割を超える甲殻が瞬間的に解き放たれ、隠された生身の肉体が剥き出しとなる。灰色の肉体から浮き出た血管が筋肉に沿って発光し、暗闇の中に紅の線として浮かび上がる。
白い蒸気が周囲に拡散し、痩身の姿が露わになると同時に。
琥珀色の双眸が
他の誰の介在さえも許さない、白と黒の二者だけに許された魔法の時間。玄崎明=ブラックシャドーとスノーホワイトが、全く同じ瞬間、全く同じ速度領域に到達する。視界の全てが粒状に撹拌される世界にて、朱色の瞳と瞳が刹那の間、交錯する。
白き怪人にとっては自らの領域に踏み込まれる事自体が予想外だったというのか。幾度も打ち合う度に研ぎ澄まされる神経が、明の世界を限りなく停止へと誘っていく。
もはや常人の動体視力では捉える事すら不可能な程の戦闘機動の最中、スノーホワイトの速度を明がほんの一瞬、まばたきにも満たない間上回った。
大きく開かれた脇腹を抜け背後に回り込んだその直後。
明が伸ばした右手には柄だけの刀が握られていた。本能的に人差し指がトリガースイッチを叩き込み、逆袈裟に勢い良く振り抜いた漆黒の長刀――レイブン・ソードは、動体と翼の接合部、甲殻で覆われていない無防備な箇所を狙い澄ました高精度で切断――
純白の片翼が、血霧舞う虚空に踊る。
金属を爪で引っ掻いたような絶叫が、周囲に響き渡る。翼の基部から切断された傷口から赤黒い血液が噴水のように吹き出し、ビルの硝子に紅色が飛び散った。苦悶の叫びを上げるスノーホワイトだったが、驚愕すべきはその再生能力だった。翼が切断されたまさにその時から傷口の再生は始まっており、既に塞がった傷口からは赤子の肌のように潤いを持つ右翼が生え始めていた。
されど、無から有は生まれない。幾ら驚異的な再生能力を持ち合わせていようとも、体の一部を喪失した分、再生に要するエネルギーの量は決して少なくはないはずと明は体験を以って知っている。その証拠にスノーホワイトの巨躯が、心無しかふらつきを見せている。代わりの翼を形成するのに必要な体力を再度補給する為か、今までの戦いで攻勢を保っていたスノーホワイトが、初めて逃げ腰の姿勢を見せる。
「――逃がすか!」
だが、ここで奴を逃すわけにはいかない。
再生したての未成熟な片翼で羽ばたくと、スノーホワイトはビルとビルの狭間へと飛翔した。繁華街の夜景の中に消えゆくスノーホワイトを追い、対する明は加速形態を維持したまま一瞬だけ足を止め、全身を弛緩させた前傾姿勢へと移行した後、
漆黒の銃弾が、標的に向け撃発する。
踏み込んだ右足を起点に発生した衝撃波が、玄崎明=ブラックシャドーを音速の領域に誘った。爆発的な風圧が強烈な振動を伴い周囲を揺らした刹那、ブラックシャドーの姿はその場から消失、甲殻の枷から解き放たれた高機動形態で開始した疾走は即座に音域を引き千切り、さながら黒き稲妻と化してスノーホワイトを追い掛ける。
赤き双眸が暗闇に揺らめきながら、線となって尾を引いた。足下のアスファルトを剥がしながら爆走する明は、足場をビルの壁面へと立て続けに変えて跳ぶ。道路を挟んだ向かい側のビルに跳躍、そして壁面を疾走し、再び反対側のビルへの跳躍――都市そのものを足場としたジグザグの立体走行を繰り返す中で、衝撃波にて砕け散った硝子の破片が光り輝く軌跡を描く。
右翼を再生したばかりの影響か、スノーホワイトの飛行速度は目に見えて落ちていた。今なら奴を堕とせる――ビルの壁面を今一度強く踏み込んだ明はトップスピードを保持したまま、都会の虚空へと躍り出た。遂に標的に手が届き、右腕に持ったレイブン・ソードを展開、スノーホワイトの背後から突き立てようとしたその時。
玄崎明にほんの少しの油断が在ったのは、紛れも無い事実だった。
スノーホワイトが空中で180度方向転換、鋭い鉤爪を描く急速なターンで振り向いた。明が敵の狙いに気付いた時には既に遅し。急接近したスノーホワイトは明の背後に回り、羽交い締めの形で拘束した。右手のレイブン・ソードにて迎撃しようとするが、急加速する勢いに負け、思わず刀の柄を取り落としてしまう。迂闊にも取り落としたソードは遙か眼下の暗闇へと、呆気なく吸い込まれていく。
明を後ろから掴んだ状態で、スノーホワイトは即座に急上昇を開始する。
「くそっ、離せ――」
拘束を振り解こうともがく明だったが強固に締め付けられた状態から逃れることは出来ず。スノーホワイトの羽ばたきが生み出す急加速の影響で押し寄せる重力感に、内臓が口から飛び出そうになっていた。完全に抵抗不可能な状態で、スノーホワイトに羽交い締めにされた明は鴉ヶ丘市の遙か上空に辿り着く。
眼下に見下ろすは鴉ヶ丘市一帯の煌びやかな夜景。上空遙か五百メートルの高さに辿り着いた今、もはやスノーホワイトの狙いは明白だった。紅き眼光が冷徹に一瞥した後、玄崎明は真っ逆さまに突き落とされた。
「――っあ……!」
スノーホワイトは落下する明を無慈悲にも見下ろしていた。
明が体をもがき続ける間にも、地面は着々と迫ってくる。幾らレイブン化した肉体でも上空五百メートルから地面に激突して五体満足で居られるとは思わない。死の予感が明確な気配を伴い、秒刻みで眼前に近づいてくる。
せめて、奴のような羽根さえあれば――空さえ飛べればこの状況を覆せると、叶いそうもない願いを頭に浮かべたまさにその瞬間。明の脳内にある可能性が過ぎった。
『むしろ、君と白いレイブン――スノーホワイトは同型の存在だと、ボクは推測する。姿形も似通っているし、甲殻の分子配列を比較してみてもそっくりだ。何より人間が変身している、というところが決定的だ』
古嶋晴臣はかつてそう言った。同じタイプ、同じ特性を持つレイブン。明が甲殻を鋭い刃に変えてブレード状の武器とするように、スノーホワイトも幾重の甲殻を重ね合わせた翼に刃を這わせ剣としている。スノーホワイトが自らに纏っている甲殻を自在に変異させ、巨大な双翼を形作っているのであれば。
ならば自分自身も、飛べない道理はない。
「―――、う」
頭から地面に激突するその刹那。
「ぉおおおおおおおおおおおっ――ッ!」
悲鳴とも雄叫びとも付かぬ声と共に、明は自らに秘めた可能性に全てを賭けた。
そしてブラックシャドーの背中に、四枚の翼が顕現する。
巨大な双翼。幾多もの甲殻が柔軟に組み合わさったその真下に一対の補助翼を備えた様はさながら堕天使の如く。計四枚のウイングが生み出す強力な風圧が、アスファルトの道路に激突間近の明を寸前で反転、浮遊状態のままに食い止めた。
飛べる、僕には翼がある――自身が翼を持ち、あまつさえ空を飛んでいるという感覚に、不思議と明は戸惑わなかった。生まれたての鳥やコウモリが誰にも飛び方を教わらず巣立っていくように、明もまた、本能的に羽ばたき方を識っていた。
偶然にも落下地点の近くには、先ほど手から零れたレイブン・ソードが突き刺さっていた。アスファルトに刺さった柄を地面ぎりぎりの低空飛行で引き抜くと、明は再び上空を見上げ、斃すべき標的に向け一際強く羽ばたいた。周囲に強烈な風圧が押し寄せると同時にに、引き絞られた矢が放たれるが如き勢いで、明=ブラックシャドーは再び地上から高度五百メートル地点へと突き進む。
裂帛の叫びに呼応するように、四枚羽が生み出す飛行速度は高度に比例し増していく。それは闇夜を切り裂く魔弾の如く。完全に虚を突かれたスノーホワイトが瞠目する刹那の間に、明が握り締めるは漆黒の長刀。
「っ――――!」
鴉ヶ丘市中央区上空五百メートル。現代都市の人工的な輝きが煌びやかな夜景を創り出す、光と闇が織り成す世界の狭間。
そして彼我の距離は再び、零に戻る。
純白の双翼を抱きし天使と四枚羽を持つ悪魔が、闇空の中で掴み合う。その姿はさながら神話の戦いを描く宗教画にも似ていた。
レイブン・ソードがスノーホワイトの左脇腹に突き刺さっていた。腹部可動部位として薄くなった甲殻の継ぎ目、そして先ほどメトセラ・マグナムで撃ち抜いたばかりの傷跡。防御が薄く、かつ再生途中の急所をただ一点に狙い澄ました刺突は背部まで深々と刃を貫き通す。しかし致命傷には未だ至らず、苦悶の叫びを上げながらもスノーホワイトは未だ滞空状態を保っている。
「これでも……まだっ!」
尚も抵抗を続けるスノーホワイトは、明=ブラックシャドーの右肩に、鋭い貫手を突き刺した。指先の甲殻を槍の如く尖らせた攻撃を、排殻形態で守る術はない。深く抉られた肩口から出血と共に凄まじい激痛が全身に響き渡るが、明はスノーホワイトを離さない。何度も繰り返し突き刺さる貫手の攻撃に血塗れになりながらも、明は背中に生やした四枚羽を再び強く羽ばたかせる。右翼が再生しきっていないスノーホワイトよりも、明の黒翼のほうが瞬間的な推力自体は優っている確信があった。
「だったら、これで――」
眼下に見据えるは高層ビルの屋上。敢えて真下に落ちるように軌道を変えた明の目論見に気付いたのか、スノーホワイトは暴れて体を離そうとする。しかし明は左肩に突き刺さった貫手を敢えて深々と沈め、気が狂いそうなほどの激痛と引き換えに、自らの鮮血に塗れたスノーホワイトの体を固定する。
「今度こそ、堕ちろよっ!」
小さな彗星と化した白と黒の怪人は、互いに掴み合った状態のまま垂直落下する。重力の軛さえも味方に付けた墜落は、周辺一帯に強烈な衝撃音を轟かせると同時に、高層ビルの屋上にクレーターが穿たれる。
「っ……ぐ、あ」
墜落地点から衝撃で弾き飛ばされると同時に、明の変身状態が自動的に解除される。もはや満身創痍の状態で最後の力を振り絞った明。スノーホワイトを盾にした墜落とは言え明に伝わる衝撃は決して少なくは無く、意識を繋ぎ止めるので精一杯で、もはやその場から一歩たりも動けそうも無かった。
これほどの高さから無防備な状態で墜落したのだ。奴も決して無事ではないはずと、明は瞼の隙間から、霞む視界でスノーホワイトを探す。
そして。
墜落地点に朦々と煙る白塵の中に、蠢く人型の姿があった。
「――おま、え」
甲殻の所々が剥離している状態ではあるものの、スノーホワイトは爛々とした赫眼を輝かせ、一歩。また一歩と明の元に迫り来る。腹部にはレイブン・ソードが刺さったまま、赤黒い血を流しながらも明確な意識を保っていた。ここまで傷付いてまで、いったい何が、奴を殺戮に駆り立てるのか――まさに地獄から這い上がりし悪魔の如き異様で迫り来るスノーホワイトを、明は倒れ伏したまま見上げ続けていた。
「……まだ、だ」
呟く声にもはや生気は無く、冷たい夜の空気にか細く消えてしまう。
「まだ――」
倒れ伏す明に止めを刺そうとした、まさにその時。スノーホワイトは明の目の前で数秒、足を止めた。それは本当に僅かな間。しかし明は、紅い瞳の向こうに、どこか見覚えのある光を視た気がした。だがそんなことに気を配る余裕なんて今更無い。
何故なら今この時こそが、
絶体絶命の死線を、千載一遇の好機に変える瞬間だった。
「――今だ、飛鳥!」
明が首元に付けた通信機に叫ぶ。
スノーホワイトが、見えない悪寒に振り向きかけたのは、まさに人知を超えた能力への目覚めだったのかもしれない。
――距離にしておよそ1200メートル。
鴉ヶ丘市内最高層六十二階を誇るメトセラ・スカイタワービル。その五十階に位置するオフィスの窓際にて、凉城飛鳥は二脚に固定した対物狙撃銃――バレットM95のスコープ越しに、標的を捉えていた。
繊細な指先で引き金を絞った直後、現代科学が生み出した鋼鉄の弩砲が、銃口に炎の華を咲かせる。巨大なマズルブレーキですら抑えられないほど壮絶な反動と共に放たれた五十口径の弾丸は、静寂な闇夜を一直線に切り裂き、スコープ内の
遙か彼方から飛来した閃光が、スノーホワイトの頭部甲殻を粉砕した。
熟れた果実が破裂した時のように鮮血が飛び散り、明の目の前で屋上のアスファルトを真っ赤に濡らす。
今しがた目の前で起きた出来事に、玄崎明は驚きも動揺もしなかった。ただ当たり前に通り過ぎる風景を眺めるように、目の前で頭部の半分が消し飛んだ白き怪人の姿をじっと睨み付けていた。何故なら明は確信していた。ここまで来れば、ここまで耐えれば彼女なら、必ずやってくれると信じていた。
飛鳥は素早い動作でバレットM95のボルトを操作、排莢口から吐き出される巨大な薬莢がごとりと重い金属音を立てると、薬室に次なる弾丸が装填される。装填されるは12.7mm
「目標への着弾を確認――流石だな。こいつを喰らっても、奴はまだ生きてる」
飛鳥の隣でスポッティングスコープを覗きながら観測主を務める古嶋晴臣。そして彼は、今しがた放たれた対甲殻徹甲弾を開発した張本人でもあった。玄崎明――レイブン・ブラックシャドーから採取した甲殻を粉末状に加工し弾頭に配合、標的への着弾直後に硬化する事でレイブンの甲殻相手にも徹甲効果を見込めるという、謂わば机上の空論の産物は、今まさに、標的への命中を以て
「……だけど、このまま立っていられるかな」
頭部の半分を喪失し、全身をがくがくと震わせながらも、スノーホワイトは操り人形のように上体を起こした。逆再生したビデオテープを見ているかのように、頭蓋が再生していく様をスコープ越しに確認した飛鳥は改めて、常識外のおぞましさを覚えた。見た目こそ天使の姿に似ていても、その実は
「次で仕留める」
ゆえに、撃ち抜く。偽物の天使を堕とす為、飛鳥は躊躇なく二発目の砲声を轟かせた。飛鳥を中心に発生した衝撃と共に放たれた弾丸は、再び1200メートルの空間を隔てた長距離を疾走、超音速弾独特の、F1カーの走行音を更に鋭くしたような銃声が響いた直後、弾頭はスノーホワイトの胴体を甲殻越しに貫通する。五十口径の炸薬が生み出した強力な運動エネルギーが生み出す破壊力は、残忍極まりない威力を伴いスノーホワイトの半身を喪失させた。
喪った肉体の再生が、すぐさま始まるかと思われた。ピンク色に露出した傷口の表面が、隆起と収縮を繰り返しながら蠢いている。しかし。つい先ほどであれば数秒の間に元の形に再生したであろうスノーホワイトの肉体が、いつまで経っても輪郭を取り戻さなかった。代わりに回復の兆しを見せない傷口からぐずぐずと肉片が落ち、スノーホワイトの全身から風化した化石のように、細かい甲殻が剥離し始める。
「――いいぞ。
スポッティング・スコープ越しに様子を伺う晴臣の口元が弓なりに上がる。
スノーホワイトの驚異的な再生能力は、その異常なまでの新陳代謝にあると晴臣は睨んでいた。溜め込んだエネルギーを井戸の底から汲み上げるように細胞分裂に利用し実現した強力な再生能力と、常軌を逸した機動力。
そしてもう一つ。何度も背中に伸縮自在な翼を生成し武器と化す能力は、
しかし与えられた力の代償は大きく、度重なる活動にて消費したエネルギーを回収する必要が生じた。だからスノーホワイトはただ捕食の為に獲物を求める暴走状態に陥っていた。
ゆえに。
玄崎明が変身するレイブン・ブラックシャドーとスノーホワイトは甲殻の性質からして酷似した特徴を有している。スノーホワイトほどでは無いものの、武器や甲殻の生成を得意とする明も同じ能力を有していると仮定すれば、彼の甲殻から採取される特殊因子は、即ちスノーホワイトへの特攻作用を持ちうると言っても過言ではない。
そして、甲殻徹甲弾に上乗せする形で付加された、
スノーホワイトの体内に食い込んだ徹甲弾は、内側から肉体を蝕み始める。細胞分裂の速度を上回る速度で繰り返される細胞死。今、スノーホワイトの体内では再生と死が幾度と無く輪廻する。発生と崩壊のサイクルが幾度となく発生し、しかし新たなるエネルギーを摂取出来ない今、明確な終わりが待ち受けていた。自身の運命を悟ってか、スノーホワイトはよろめきながら歩きだすと、ビルの淵へと足を掛けた。
「――逃がすか!」
彼方から飛鳥が放った弾丸は一足遅く、スノーホワイトの居た箇所を通り抜けた。力尽き果て、自殺志願者のようにビルの縁から身を投げた白い怪人を追って、ようやく立ち上がった明が見下ろすと、既に都会の闇の中に、スノーホワイトの姿は溶け込んでいた。ビルの壁面には、赤黒い血液がべったりとこびり付いていた。
『――っ……明くん、奴は?』
通信機に舌打ち交じりの飛鳥の声が響く。
「逃げられた。でも、もう虫の息のはずだ」
逃げ出したスノーホワイトの気配を、明は肌に強く感じていた。全身が鋭敏な感覚に包まれ、レイブンに変身した時と似たような万能感に包まれている。
「行きそうな場所は分かってる。後は私たちで追う。明くんは――」
「奴を仕留めるのは僕だ。僕が必ずこの手で、彼女を斃す」
「……分かった。くれぐれも無理はしないでね。私たちは先に、例の場所に向かう」
通信機を一方的に切断し、明は荒い息で闇の向こうを一瞥する。
ここで仕留められなかった苛立ちと、浮かび上がった疑問が氷塊せずに、明の喉につかえていた。奴は何故、自分に止めを刺さなかったのか。あの時――廃工場で死にかけた明に命を与えた時と同じ眼で、スノーホワイトは止めを刺そうとした明に容赦を見せた。その隙が無ければ、あるいは飛鳥の狙撃は成功しなかったかもしれない。
爛々と血走った瞳の中に、どこか感じられた人間的な感情。
いったい。あれは、誰だ。
ふと、明は自ら口走った言葉に疑問を抱いた。
「僕は今……彼女って?」
男性か女性かなんて分かるはずがない。全身が無骨な甲殻で覆われたスノーホワイトの外見から変身者の性別を推測することは不可能に近い。
なのにどうして、僕はあいつを、女性だと思ったんだ?
理由を考えれば考えるほど、怖くなった。
これから殺し合う相手の中身を、あるいは無意識下で識っているのかもしれない。
「きみは――誰なんだ?」
死の淵で逃げ延びた白き怪人に、明は返って来るはずの無い問いを投げかけた。
その答えに辿り付くのに、もう多くの時間は要らないように思えた。
――鼓動の音が、再び大きく聞こえていた。
EPISODE:12 Operation:Angel Fall
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