第23話 彰人、ついに接触する

 月夜の空に現れた3つの影――


 それらは、既に門が閉じられたトルガナの町へ高速で近付いていた……



   ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「極楽極楽」


 俺は年寄りのように呟いた。


 久しぶりの風呂は最高に気持ち良い。しかもここは露天風呂で、天に輝く美しい月と星の眺めも最高だ。

 これで何も心配事がなければ、まさに『極楽』なのだが…… 俺はゆっくりと温泉に浸かりながら、どうやってエレーヌとアメルダをやり過ごそうかと思案していた。


 何か有耶無耶にできるような事件でも起きてくれないかなぁ……


 そんなことを思いながら温泉を出ると、エレーヌとアメルダが待ち構えていた。

 湯上りの美少女2人―― バスローブを身に纏い、髪の毛はまだ少し湿っている2人の様子は、何とも言えない色っぽさ。


「アキト! さあ部屋へ行きましょう!」


 2人は俺の腕に左右から腕を絡め、引き摺るように俺を部屋へ連れて行こうとする。

 しかし、普通なら嬉しいはずのこの展開も、今の俺にとっては地獄でしかない。

 俺は断じて『不能』ではないが、今はまだ結婚するつもりなど全くないのだから、無用なトラブルは避けるに限るのだ。


「なあ…… 俺達、婚約もしてないのに、こういうのは、良くないだろ?」


「何を言ってるの? アキトは私を『妻にする』と約束したわ!」


 だから、それは『夢だった』と今朝あれだけ説明しただろ!?


「私は『第二夫人』なので、何の問題もありません」


 否、『第一夫人』だとか『第二夫人』だとかの問題じゃなくて、そもそも結婚の約束すらしてないだろ!?


「そんなに拒絶するなんて、アキトはやっぱり……」


 エレーヌとアメルダは、またしても俺に憐れむような眼を向けてくる。

 俺だって決して『やりたくない』わけではない。否、寧ろ『したい』のだ!

 でも、今は無理なんだ……


 2人には見えていないが、俺の側にはずっと『タマ』がいるのだ。

 タマに見られながらの『初体験』なんて、俺(DT)には難易度高すぎる。


 と言って、タマがいないことには会話が成立しない。

 こんなことなら、タマに頼ってばかりいないで、エシューゼの言葉を少しは勉強しておくのだった…… と今更後悔しても後の祭りだ。


 どちらにしろこのままでは、俺は2人に『不能』だと思われてしまう……


 そして、とうとう部屋の中―― 絶体絶命の俺。


 そのときだった!



   ◆ ◆ ◆ ◆ ◆



「それにしても、安請け合いしたのは失敗だったな。人族のいる大陸に着くのにこれ程苦労するとは思わなかった……」


「全くその通りだ。こんなことなら、斥候などに出るのではなかったわ。

 食料が尽きたときはどうなるかと思ったが、あの鳥のおかげで助かったな…… あの鳥に付いて行かなければ、この大陸に辿り着けなかったかもしれないな」


「だが、無事に辿り着いたは良いが、当初の予定よりかなり南に来てしまった。ここは『あそこ』と違って随分と暖かい」


「そうだねデノム。あの国は雪が降っていたもんね。早く人族共の情報を集めて戻らないといけないけど、正直あそこに戻るよりも、ここにずっといたいよ」


「何を言うかゼド! 偵察に出てから既に20日も経ってしまったのだぞ。きっとベルゾン様はお怒りだろう」


「俺達の苦労も知らないで、ベルゾン様から雷を落とされるかと思うと、益々やってられんな…… 大体、ベルゾン様はいつもながら慎重すぎる」


「ゲルボの言う通りだよ。態々偵察なんて必要ないのに…… この世界の人族の情報など知らなくても、我ら魔王親衛隊には何も恐れるものなどないのにね」


「ああ、ゼドの言う通りだ…… そうだデノム! どうせなら俺達3人で、この辺りの町を潰してしまわないか? この20日間のストレスを、ゴミ共にぶつけて発散しようではないか!」


「ゲルボ、好い事言うね! 僕も思い切り暴れたい気分だよ!」


――――――――


 扉を通ってエシューゼにやってきた魔王軍は、エシューゼのほぼ全ての人間の住む【エジュール大陸】の北西の果ての国『エバステ』に現れた。


 魔王軍はその圧倒的武力を持って、わずか数日でエバステを陥落させた。

 魔王軍はその勢いのまま他の国にも攻め込むはずであったが、魔王軍は未だエバステに留まっている。


 それには理由があった。


 エバステは周りを海と1万m級の山脈に囲まれた国だった。

 しかも季節は冬で、軍を率いて海を渡ることも雪山を越えることも難しく、魔王軍はエバステに足止めされた状態にあるのだ。


 しかし、このまま冬が過ぎるのをじっと待っているわけにはいかない。


 デノム、ゲルボ、ゼド―― 翼を持ち空を飛べる『翼鬼族』の3人は、西の海を越えてエシューゼの人族の情報を集めるために、斥候として使わされた。


 3人は人族の残した小さな舟に5日分の水と食料を積み、海を渡った。


 昼は3人が協力して西を目指して舟を引きながら飛ぶ。

 夜は潮の流れに任せて舟で眠る。


 そうやって人族のいる陸地を目指したが、持ってきた食料は早々に尽きてしまい、3人はこのまま進むか引き返すか思案した。

 その時、偶々西に向かって飛んでいた1羽の鳥を見つけた。


 あの鳥は陸地を目指している。きっとそこに人族がいるはずだ。


 そう信じて彼らはその鳥の後を追うことにした。そしてそれは正解だった。

 海に点在する島々に立ち寄りながら、20日掛けて遂に『カザナック帝国』に辿り着いたのだった。


 常人なら発狂しそうな過酷な状況を平然と乗り越えた彼らは、間違いなく優秀な兵士であった。しかし、そんな彼らでもこの20日間は相当なストレスだったのだ。


――――――――


「2人共しょうがないな。ばれたらベルゾン様はもとより、魔王様からも大目玉を食らいそうだが―― まあ、ばれることもないだろうし、それも面白そうだ」


「じゃあ、このまま真っ直ぐ飛んで最初に見つけた町をぶっ潰そう!」


……


「灯りが見えるぞ! あれは、ゴミ共の住む町で間違いなさそうだな」


「折角だし、少しは抵抗してくれたほうがいたぶり甲斐があるんだけどね」


「そうだな。きっと町には兵隊くらいはいるだろうし、少し遊んで楽しんでから町を破壊して、逃げ惑うゴミ共を潰そうか」


「フフフ、楽しみだね」



   ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「2人とも、ちょっと待て!」


 俺は今にも襲い掛かってきそうなエレーヌを制するように言った。


「アキト! 今更そんなこと言ってもダメよ」


 俺はエレーヌを無視しタマに話しかける。


《タマ。大きな力を持った『何か』が3つ、東の方から近づいてきてるんだが、正体はわかるか?》


《えっ!? 彰人様、タマには何も感じませんが……》


 何だと!? タマにはこの大きな力が感じられないだと!?


 エシューゼの生物なら、タマには絶対にわかるはずだ。

 そうなると答えは1つ―― 接近しているのは『魔王の手下』に違いない!


 このスピードなら、後10秒もすれば町に着くだろう。


 真剣な表情で東を見つめる俺に何かを感じたのか、アメルダが尋ねてきた。


「アキト、そっちに何か気になることがあるのですか?」


 そのときだった!


「ああ、ばれていたか……」


 クローゼットに隠れていたランテスが顔を出した。


 勿論俺は『出歯亀野郎』のこともとっくに気付いていたが、今はそんなことはどうでもいい。問題なのは接近している魔王軍の連中だ。


「ランテス、『覗き』とはいい趣味ですね…… こんな真似をして、タダで済むとは思っていませんよね」


 ランテスに詰め寄るアメルダ。


「落ち着けアメルダ…… アキト君でも2人同時に相手するのは無理だから、エレーヌさんは俺がちょっと手伝ってあげよう、と思っただけで……」


 俺の手伝い!? それはいい考えだ。


「ランテス、俺の手伝い、したいのか?」


「キミさえよければ手伝いたいね」


「そうか…… ただし、相手は、もう直ぐ、この町に来る連中だ」


「なんだって!? キミはこの2人以外にも『愛人』がいるのかい? 見かけによらず随分『お盛ん』なんだね。俺はそれでも全然構わないよ」


「そうか。なら、これから外へ行くぞ」


「まさか、キミは外でするのか? その若さで凄い趣味の持ち主だね…… 貴族や金持ちの親爺の中には、そんな変態的な趣向の持ち主もいるとは聞いたことがあるが」


 ランテス…… お前勘違いしすぎだ。


「ア、アキト…… あなた、私達の他にも愛人がいるだけでなく、そんな趣味まであったなんて…… ひどいわ」


 エレーヌもアメルダも、その『絶望的な眼』で俺を見るのはやめてくれ。俺には愛人など1人もいないし、変態趣味もない。

 説明するのも面倒なので、3人を無視して部屋を出ることにした。


「アキト、待ちなさいよ!」


 エレーヌ達が追いかけてくる気配を感じながら、俺は宿を後にする。


 大きな力を持った連中は、すでにトルガナの上空に到着しているのだ。



   ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 デノム、ゲルボ、ゼドの3人は、トルガナの町を見下ろしていた。


「フフフ、これがゴミ共の町か…… あの『エバステ』とかいう国の都よりもちゃっちい町だな。これなら、俺達だけでも簡単に消してしまえそうだ」


「焦るなゲルボ。折角なのだからゆっくり楽しもうではないか」


「見てみなよ! あっちに温泉があるよ。楽しみの前に温泉に浸かって気持ちを落ち着けようよ」


「温泉だと! それはいいな。デノム、構わんか?」


「楽しみの前に、温泉に浸かって鋭気を満たすのも悪くないな」


「じゃあ決まりだね。もし人族の連中がいたら僕が掃除してもいいかな?」


「ああ、それはゼドに任そう」


……


 温泉の上空に浮かびながら周囲の様子を伺う3人。


「温泉など、随分久しぶりだな。この20日間は、水浴びすらほとんどできなかったからな…… おい、右の方を見てみろ! ゴミが4匹近付いてくるぞ」


「ほんとだね。じゃあ、僕が掃除に行くよ」


「ゼド、折角の温泉を血で汚さぬように気を付けろよ」


「分かってるさ。それじゃあ、行ってくるよ」


 ゼドは近付いてくる人間の方に向かうために、翼を羽ばたかせ飛び立とうとした。

 しかし、ゼドは突然バランスを崩し墜落したのだ。


「う、うわあぁぁぁぁぁ!?」


「何!?」「ゼ、ゼド!?」


 どばーん!!!


 温泉に水柱が上がった。


 上空では、何が起きたのか理解できていないデノムとゲルボが茫然としていた。



   ◆ ◆ ◆ ◆ ◆



《タマ、上空に3人いるのが見えるか?》


 温泉の上空30mくらいのところに影が3つ―― 月をバックに、翼を生やした人型のシルエットが浮かんでいる。


《はい、彰人様。確かに3人いますね…… 残念ながら、タマには彼らの気配が全く感じられませんが》


《何をしているかわかるか?》


《何かを話しているようです。タマには話し声は聞こえるのですが、エシューゼの言葉ではないようなので、会話の内容は全く分かりません》


 聞こえるのかよ!? ここから100m以上距離があるのに、すげぇ地獄耳だな。

 エシューゼの言葉でないのは予想通りだ。奴らと接触しても、コミュニケーションを取ることはできそうにないか。


 俺の後ろの3人も、連中の存在に気付いたようだ。


「何かしら? 温泉の上に何かいるわ」


「本当ですね。大きな鳥でしょうか? 人間くらいの大きさがありそうです」


「鳥? 否、まるで人間のような形に見えるぞ……」


「人間ですって!? もっと近付いて確認しましょうよ」


 相変わらずエレーヌは危険に対する意識が足りないな。


「待ってくださいエレーヌさん。これ以上近付くのは危険です」


 アメルダがエレーヌを止める。


「ああ…… 奴らは間違いなく危険なものだよ。ここまで近付くまで気付けなかったが、かなり『強い力』を持っている」


 ランテスとアメルダは、奴らの発する気配から危険性を感じ取ったようだ。


「アキト。あなたは『アレ』のことに気付いていたのですか?」


「まさか……『俺の相手』とは、あの連中のことじゃないだろうね?

 そもそも、あの連中は一体何者なんだい? 空を飛べる人間なんて、噂にも聞いたことがないのだが」


 俺は2人の質問には応えず、奴らの様子を観察する。

 どうやら、奴らも俺達の存在に気付いたようだ。右端の奴の殺気がこっちに向けられたのを感じた。


 とりあえず攻撃してみるか。


 俺は徐に落ちていた小石を拾い、それを親指で弾く。


 霊気を纏った小石は、音速に近いスピードで、右端の奴の翼を貫いた。

 こっちに向かって飛ぼうとして、翼を羽ばたかせたタイミングだったために、そいつはバランスを崩し、温泉に一直線に落下―― 激しい水柱が上がった。


「エレーヌとアメルダは、危険だから、そこで待て。ランテス、行くぞ!」


 俺はそう言って、急いで奴の落下した場所に向かう。


「えっ!? 俺は行くのかい?」


 当然だ。お前は『手伝いたい』と言ったのだからな。



   ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「ハァハァハァ…… い、一体何が起きた?」


 ゼドはパニック状態だった―― 何とか温泉から這い出ることができたが、訳も分からぬまま落下したことに動揺していた。


「ゼド! 大丈夫か!?」


 上からデノムの声がした。


「一体どうした?」


 ゲルボの声も聞こえた。


「わ、わからない…… 飛び立とうとした瞬間、突然バランスが崩れて……」


 ゼドは何とか気を落ち着かせて、2人に今自分の身に起きたことを説明しようとしたそのとき――


「驚いたね。ほんとに翼の生えた人間だとは!?」


 別の声が割り込んできた。


 人族!?


 ゼドが声の方を向くと、すぐ側に2人の男が立っていた。


「ゼド、手を貸そうか?」


「必要ない!」


 上から聞こえたゲルボの言葉を強く打ち消し、ゼドはすぐさま立ち上がった。


 よもや人族に醜態を晒すとは……

 さっきまでのゼドの動揺は怒りに変わっていた。


 恥を雪ぐには、こいつらをいたぶって殺すしかない。


 ゼドはそう考えた。


「そこのゴミ共。俺の言葉が分かるか?」



   ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 月明りの下、真っ暗な温泉から必死に這い出そうとしている人影―― 背中にはカラスのような翼―― こいつを『カラス1号』と名付けよう。


 上空にはカラス1号の仲間と思われる2号と3号がいた。何かを話しているが内容はわからない。しかし、焦っているのはなんとなくわかった。


 俺は、カラス1号の手前8mくらいの所に立って観察する。

 俺に追いついたランテスが、カラス1号を見て声を出した。


「驚いたね。ほんとに翼の生えた人間だとは!?」


 その瞬間、カラス1号は立ち上がってこっちを見た。

 暗くて顔はわからないが、眼だけが真っ赤に光っていた。抑えているようだが、殺気が伝わってくる。


「そこのゴミ共。俺の言葉が分かるか?」


《あれっ!? タマ、通訳できるのか?》


《はい、彰人様。今の言葉は大陸北西部で広く使われている【エブロ語】です》


 まさか、このカラス1号―― 自分でエシューゼの言葉をマスターしたのか?


《この野郎、通訳なしで言葉が話せるとか…… 舐めやがって》


 これじゃあ、タマの能力に頼りぱなしの俺が『バカ』に見えるだろうが!?


 俺は無性に腹が立った。


《彰人様。『ゴミ扱い』されて怒っているのではないのですか?》


《それも勿論怒ってるわ!》


「アキト君。怒っているようだが、あいつは何と言ったんだい?」


 ランテスはカラス1号の言葉がわからないようだ。


「ああ、大陸北西部の言葉で、俺達を、『ゴミ』と言った」


「凄いなキミは! 大陸北西部の言葉まで分かるなんて!」


 ランテスは俺に尊敬の眼差しを向けているが、俺の力じゃないだけにバツが悪い。


「これで『不能』でなければ、まさに『完璧超人』なのにね…… 勿体ない」


 おいっ! 誰が『不能』だ!


 俺が、怒りの矛先をランテスに向けようかと考えたとき、


「どうした、ゴミ共。恐怖でこっちを見ることもできないか?」


 やっぱり、カラス1号から先に片付けるべきだな。とりあえずランテスを吹っ掛けて、様子を見てみるか。


「ランテス。こいつが、お前を、バカにしているぞ。相手してやれ」


「俺をバカにしている? つまり、戦って黙らせればいいんだね」


 よしよし。ランテスはやる気になっている。

 今度はあっちを挑発しよう。


「墜落した、雑魚が、でかい口、叩くな」


 初めて話す『エブロ語』だったが、どうやらうまく伝わったようだ。

 俺の言葉にカラス1号の殺気が膨らんだのが分かった。


「殺す!」


『殺す』頂きました―― 辺りが暗くて、奴の表情や顔色は全くわからないが、きっと真っ赤な顔して怒っているんだろうな。


「ランテス、気を付けろ」


 俺の声と同時に、ランテスは動いた。

 カラス1号に近付き、居合抜きを放つ!


 カラス1号は突っ立ったまま、全く反応することがなかった。


 勝負は着いた! はずだったが、ランテスが俺の方に吹っ飛んできた。


 避けてもよかったが、とりあえず俺はランテスを受け止めてやった。


「何だ? 今のは攻撃だったのか? 虫に刺された方がまだ痛いぞ」


 ランテスの攻撃は、カラス1号に全くダメージを与えなかった。

 カラス1号の全身が薄すらと光っている。身体に『気』か『魔力』を纏わせて、剣を跳ね返したようだ。


 大したものだ―― とは言えないな。身体が光るようではまだまだだ。光の強弱で防御の高い所と低い所が一目瞭然だ。


 しかし、身体が光ったおかげでカラス1号の顔がはっきりと見えた。


 俺は『カラス天狗』のような顔を想像していたのだが、見た目はほとんど『人間』だった。人間との違いといえば、額の角、真っ青な顔色、そして漆黒の翼くらいだ。

 尤も、翼が生えてる時点で人間とは全く別物だし、カラス1号の呼び方は変えないことに決めた。


「くっ! なんて硬さだ。俺の剣が弾かれた」


 ランテスは、吹っ飛ばされた割にはダメージは少なそうだ。


「まだ、やれるか?」


「身体は大丈夫だが、俺の攻撃が効きそうな気がしない」


 ランテスは少し弱気になったようだ。


 確かに今のままでは、カラス1号にダメージを与えることは無理だな。

 ちょっとだけ『裏技』を使ってやるか。


 俺はランテスの背中に触れ霊気を送った。


「な、何だ!? 身体に力が漲ってくる」


 ランテスは驚いたように俺を見る。


「どうだ? やれそうか?」


「ああ…… これなら負ける気はしない」


 そうだろう! 軽く本来の5倍以上のパワーが出せるはずだ。

 尤も、その後の反動が怖くて人にはなかなか使えないのだけど…… 黙っておこう。

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