第19話 オレの正体

 長い螺旋状の階段を上り、オレ達はついにこの塔の屋上へと到達する。


 夜も更け、真っ暗で辺りはほとんど見えないが、やや遠くの方にある城や町の明かりなどはちらほら見える。その景色から見るに、おそらく昼間だと、ここら辺はかなり一望できる場所なんじゃないかと思える。


 だが、この屋上は端には柵のようなものが一切ない。

 つまり、何らかの理由でここから落ちようと思えば簡単に落ちれるわけだ。


 入るなキケンの文字に、入り口付近の謎の札の数々。ユウレイ的なものが出るという噂。なるほどな、色々合点が言った気がする。


 これ以上は何も触れたくはないな。

 いや、別に怖いとかそういうわけじゃねえけど……。



「あれ? 誰かいる?」



 そう思いめぐらせている中、メルノがそう発する。オレとロイはメルノが向いている目先の方へと視線を向ける。



「本当だ。誰かいますワン」



 二人の言う通り、屋上のちょうど端っこ付近。ギリギリで転落しない程度の場所に大きめの人影が見える。だが、その影はあくまで人型。オレ達のターゲットの竜の魔物ようには到底思えねえ。



 じゃあ……だとしたら……。



「ま、まさか……ユ、ユウレイ?」


「残念ながらユウレイではない」



 そう発すると、その人影はこちらへと近づき始める。そして、近づいたことでその姿がはっきりと視認できるようになる。


 大きな腕に、引き締まった身体。そして、屈強な脚。角が生えた頭に、瞳が赤く光らせながらこちらに目線を送る鋭い目。

 それらを見た時、コイツが少なくとも人ではないことは理解ができた。そいつは、ユウレイというものでも、ターゲットの魔物でもねえ。



ぞ。赤い髪」



 低めの声で、その得体のしれない生物はオレに対してこう続ける。



「貴様には悪いが……ここで消えてもらう。あのお方のためになっ!!」



 大きな拳を上に上げ、その生物は雄たけびをあげる。心臓が飛び出るような爆音。そして、殺意に満ちた鋭い目。その時点でこいつが少なくともただの魔物ではないことがすぐに分かった。



「てめえ、魔獣か」



 負けじと俺も背負っていた剣を降ろし、柄を握る。



「いかにも。我が名はドーゲス。貴様を葬るために、ここに来た」


「オレを……葬る?」


。先日の大魔法使いの抹殺とマージルの襲撃。ゲルマからも話を聞いている。その場のすべてに貴様が関与していたのは言うまでもない」


「……?」



 マージルの襲撃に大魔法使いシュウトの抹殺。確かにそれはオレも当事者だった。ただ、6年前の勇者の末裔暗殺というものに関しては、全くもって記憶にねえ。


 勇者ってなんだ? 一体何の話してやがる? 


 それに、ここにきてまた6年前ってワードが出てきたのが若干気になる。

 だが、それよりも……。



「てめえ、ミーナの兄ちゃん殺した奴の仲間か」



 魔将ゲルマ。シュウトが死んだあと、ミーナから事情を聞いたときにその名前を耳にした。その魔獣がシュウトを殺し、マージルを襲撃した黒幕だってな。



「ふっ。いかにも」



 ドーゲスと名乗った魔獣は不敵に微笑み、オレ達を睨みつける。



「我はドーゲス。力将ドーゲス。魔将ゲルマと同じく、デイン四天王が一人」


「デイン……四天王?」


「ふん、これ以上は語るまい」



 ドーゲスは大きな拳を握り、そいつで殴り掛からんとオレに迫ってくる。屋上に着いた途端に、まさかの魔獣の出現ときたもんだ。ここはなんとかうまく対処しねえとだな。



「メルノ、ロイ、お前らは下がってろ」


「で、でも赤い人、アタシも魔物を呼んで戦うよ」


「メルノはロイを守ってろ。あくまでオレはお前の護衛。こういうのはオレの役目だ」


「赤い人……」



 メルノは確か、魔獣との戦闘経験はあるって言っていた。だが、こっちには出会ったばかりのロイもいる。戦えるのかどうか分からない以上、ここはメルノに守ってもらうのが賢明だ。それに……。



「それにコイツは、オレの客だ」


「赤い人?」



 後ろにいるメルノやロイの視線を感じながらもオレはドーゲスと対峙する。


 なんでこんなところにいるのか、どういう経緯でオレがここに現れることを知ったのかは知らねえが、今はそんなことはどうでもいい。

 四天王だかなんだか知らねえが、シュウトを殺した奴の仲間だってんなら、話は早え。シュウトには飯をおごってもらった恩があるからな。コイツをとっちめて、ゲルマってやつの居場所を突き止めて、借りとツケをきっちり返す。


「てめえの相手は、オレだ」


「よかろう……と、言いたいところだがその前に」


「んあ?」


「貴様らの探し物を出してやろう」



 ドーゲスはそう言うと、小声で何かを呟き始める。そして、オレやメルノ、ロイのちょうど真横に、禍々しい黒色の……ブラックホールのような球体が現れる。そして、そこからゆっくりとそれが現れる。



「なっ!? 嘘……でしょ?」



 そいつを見た途端、メルノは目を丸くし、同時に顔が一気に青ざめる。


 鋭い目つきに、赤い瞳。鋭利な牙。4つ足。そして、竜の姿の身体。

 そいつは、おそらくオレ達が追っていったはずのターゲット。だがそいつは、もうターゲットではなくなっていた。



「グォオオオオオオオオオオ!」



 理性を失ったかのように、頭をぶん回し、手足を地面に叩きつけ、大きく咆哮を放つ。

 その様子から、世界に疎いオレでもこいつが【ビースト化】した魔獣だという事が分かる。



「族長の魔物まで……魔獣に!?」



 メルノの言う通り、そいつはオレ達が追っていたバロックの魔物。でもそいつは魔獣となって、オレ達の前に立ちはだかる。そして……。



「グォオオオオオオオオオオオ!!」


「「なっ……」」



 魔獣となったバロックの魔物は、長い尻尾でメルノとロイを思いっきり薙ぎ払う。

 それにより、なすすべなくメルノとロイは吹っ飛ばされる。



「メルノ! ロイ!」



 まて、ここは柵がねえんだぞ!?

 こんな場所で思いっ切り吹き飛ばされたら二人は!



「メルノォオオオオ! ロイィイイイイ!」



 対峙するドーゲスを背にして、オレは吹き飛ばされた二人を必死に追いかける。だが、吹っ飛ばされた二人は、落ちることなく、端の一歩手前で地面に叩きつけられるようにしてなんとか止まった。


 そんな二人の元へオレは急いで駆け寄る。



「おい、メルノ! ロイ! しっかりしろ! おい!」



 そう呼びかけても、二人は返答を返さない。倒れる二人の肩をゆすっても、目を覚まさない。

 まさか……死んで……?



「安心しろ。気を失わせただけだ。あの魔獣の尻尾にはそういった魔法が込められている。まずは貴様を亡き者にする」


「てめえ……」



 どうやらコイツは、本気でオレを殺す気のようだ。


 だが、さっきコイツは「待っていた」と言った。つまり、コイツはオレ達がここに来ることを知っていたという事になるよな……。


 なんだ……? なんで知っていたんだ?

 コイツら、一体何者だ?



「ふん、そう睨むな。こちらの目的はあくまでもお前だ、赤い髪。そのために二人には少々眠ってもらっただけだ」


「いきなりこんな事してくるやつのいう事を信じるとでも?」


「ふっ、別に信じてもらわなくても構わんよ。こちらはお前さえ消せればそれでいい」


「…………」



 周りをつぶして、2対1で追い込むこの徹底っぷり。理由は分からねえが、こいつ、標的が完全にオレのようだ。



「その竜の魔獣は元々バロックって魔物つかいの魔物だった。それが今このタイミングで魔獣になっているってことは、その魔物攫ったのはてめえか?」


「さて、どうだろうな? 当ててみるがいい」


「ちっ、ふざけた野郎だ」



 そもそも、行方不明になったメルノの魔物も魔獣になった。んでもって、今度はバロックの魔物も魔獣になって今目の前にいる。まさかとは思うが、魔物を魔獣にさせる何かがあるってのか?


 まさか、コイツがそれをやったってのか? 

 だとしたらエレカたちが言っていた一連の魔物行方不明事件の犯人もコイツか?


「ふん。貴様の考えていることは大方見当つく。いかに気高き魔物つかい族長の魔物と言えど、我らにかかれば【ビースト化】させることなど造作もない」


「なっ……!?」



 ビースト化……させるだと?

 そいつぁつまり、無害な魔物を、意図的に狂暴な魔獣へと変えられるってことか!?



「そこで眠っている魔物つかいの魔物も、意図も簡単に魔獣化させることができた。まあ、特攻部隊としてのマージルの襲撃は失敗に終わったがな」



 ドーゲスは軽くため息をつくと、つぶやくようにこう言った。



「ふん、使えない魔物だったよ。アレは」


「…………」



『行方不明になったアタシの魔物ね、自慢になっちゃうかもだけど、本当はすっごく強いの。何回か魔獣と出くわすことがあったんだけど、あの子のおかげで何とかなったから。何度も何度も、あの子に助けてもらったから』


『あの子を倒してくれて……ありがとう。魔獣になって、理性を失って、苦しんでいたあの子を救ってくれて、ありがとう……』



 メルノが前に言っていたことが脳裏によぎる。



「そうか。それなら……」



 オレは持っている剣の柄をグッと握りしめ、剣を思いっきり構える。



「てめえを倒す理由が、また一つ増えた」



 コイツはメルノの魔物を魔獣化させた仇。オレの、オレ達の仇。遠慮はいらねえ。コイツを……おもいっきりぶった斬る!


「………っ」



 言葉を発することなく、オレはドーゲスに一気に飛び掛かる。何の考えもなしに、正面から堂々と。

 だが、そんなもん関係ねえ。とにかく力で押し切る。そしてオレはコイツをぶっ倒す。



「ふっ、愚策な」



 でも、ドーゲスは避けることも、逃げることもせずに、オレの剣先を右の大きな拳一つで受け止める。



「お前と対峙するのはだ。お前の動きは、すでに見切っている」


「……っ!?」



 ドーゲスは左の大きな拳でオレの腹を思いっきり殴り上げる。体内から何かが破裂するような衝撃と激痛が襲い、同時に腹から口へとそれがこみあがってくる。



「ぐっ……」



 口から真っ赤に染まった液体を吐き出しながら、オレはメルノやロイが倒れこんでいる付近まで殴り飛ばされる。

 そして地面へと叩きつけられ、腹と背中の両方から激痛が襲ってくる。



「そして、もう一つおまけだ」



 腹と背中の激痛を我慢しながら、もう一度起き上がろうとしたその瞬間、魔獣となったバロックの魔物の尻尾が迫ってくるのが目に入る。



「ぐっ……は……っ」



 バロックの魔物の尻尾が全身に強くのしかかり、オレの身体はそのまま押しつぶされる。そして同時に、視界が一気にぐらつく。



「お前が魔法を吸収するのは知っている。だが、それはあくまでも視認できる物理的な魔法に限る。眠らせたり、気絶させたりと目に見えない間接的な魔法は吸収できまい」


「…………」



 視界がぐらつき、意識がゆっくりと遠のいていく。眠いのとはまた違う、無理やり何かに精神を掴まれ、引きずり込まれるような感覚。



 ぐらついていた視界も暗くなり、目の前は闇一つに染まる。



 だが、そんなもん問題ねえ。オレはコイツを……。



 コイ……ツを……。




 あれ……。おかしい……ぞ……。身体が、動かな……。


 頭が……回らな……



「これで、お前……思う存……始末で……る。よう……く、デ……ン様の……となる存……を………。後は勇者の……のネ……スだけだ」



 あ、やべえな……。こりゃ……。


 何言ってんのか、全然聞き取れねえや……。

 何も思い出せずに、オレは、こんなところで……。


 メルノ……ロイ……早くお前らは逃げ……ろ。



 ミーナ……クレア……ネルス……。

 すまねえ……。約束、守れねえかも……。



 すまねえ……。本当に……すま……ねえ……な……。





『約束だけはきっちり守る。本当に、ゼロってそこだけはいいよわね!』



 …………。



『もう、いつまで寝てんのよ! 今日はカネルのとこ行って、様子見なきゃでしょ!』




 なんだ……この声は……?






『ゼロが私たちを守ってくれるなら、私たちはゼロを守る。お互い助け合っていく。だから、魔王なんて怖くない。私たちにはあんたがいるから』







 女の声……? いや、この声……どこかで……?








「君は、またあの悲劇を繰り返すつもりか?」



 ……っ!?



「今君が死ねば、変えられるものも変えられなくなる」



 なん……だ? 今度は、男の声……?



「いい加減思い出してほしいものだ。我の事を。だろう?」



 勇者……? 魔王……?



「そもそも、君がここで死ねば、せっかく変わりそうだったものも変われなくなる。あの悲劇を、認めてしまう事になる」



 あの……悲劇?



「なるほど、無理やり封印を解くものじゃないな。思った以上に記憶がやられているようだ。仕方があるまい。もう少し手伝ってやろう」



 一体、何を言ってやがる……?

 ぐっ、なんだ? 急に眩しく……っ!?

 


 闇に染まっていた視界は、白い光に照らされ、オレはその光に飲み込まれる。



 そして、視界に映し出されるのは……。




『アスカ……、ソラ……、シオン……、マナカ……』



 横たわる4つの屍。

 その手前で、跪いて全身を震わせる深海のような青い髪をした男。そして、ただただ何もせずに棒立ちをする赤い髪の男の姿。


 でもその男は、俯き、静かに静かに体を震わせている。


 まさか、これは……オレか?



「そう。それは君。そして、横たわる4つの屍は君の大切な仲間。跪いて全身を震わせている人は、君の相棒に等しい存在」



 仲間……? 相棒……?



「4つの屍の内、1つは見覚えがあるんじゃないか? 例えば、夢の中で見た人とか」



 夢の……中!?



『その力とあんた自身の力で、私の事……。いや、私たちの事、守ってね……?』



 ……っ!


 思い起こされるのは、テンドールの牢屋で目を覚ます前に見ていた、青空のようにきれいな髪色の女の人の夢。そして、目の前にいる4つの屍の1つにそれと同じ姿の者がある。



「そう。それは君が仲間。そして、その娘はこの世界を救うための重要な鍵」



 オレが守れなかった仲間……? 重要な鍵……?



「君は確かに、我が父、魔王ドグナとの戦いに勝利した。でもその代わりに多くのものを失った。そしてそれは、世界の滅亡へのカウントダウンの始まりを意味していた」



 ………。



「君は確かに、戦いには勝った。でも、勝負は負けたんだよ」



 男の声をBGMに、オレはその光景を黙って見る。


 跪いて体を震わせる青い髪の男を背中に、そこにいるオレは黙って歩き始める。



『君までいなくなったら、俺は……いったいどうしたらいいんだ……』



 そう言ってくる男に向かって、オレはきっぱりとこう答える。



『生きろ。そいつらと……オレの分まで』

 生きろ。そいつらと……オレの分まで。



 ……ああ、そうか。



『あとは頼むわ……。もう、オレにはこれくらいしかやれそうにねえ』

 あとは頼むわ……。もう、オレにはこれくらいしかやれそうにねえ。



 ……ああ、そうだった。




「そう、これは君にとっての最期の瞬間」



 オレはこの時に思ったんだ。もう、仲間なんて作らない方がいいんじゃないかって。



「でも、君はまた作ってしまった。仲間というものを。守りたいと願うその存在を」



 仲間……。


 それで思い起こされるのは、ネルスやクレア。ミーナ、メルノ、ロイの姿。

 記憶がないとはいえ、それでもオレは作ってしまった。もう作らない方がいいと思っていたそれを。仲間を。



「それでいいのさ。結局君は、いつの時代でも変わらなかった。我が知っている君だった。そしてその足掻きが、諦めないその気持ちが、絶対にあり得ない奇跡を生みだした」



 奇跡……?



「こちらの話だ。それよりも見るがいいさ。君の最期だ」



 ………。


 オレは持っていた剣を上へと掲げる。剣からは青白い光が溢れ出て、それがオレを包み込む。


 青い髪の男は、目から溢れんばかりの涙を垂れ流し、必死に必死にオレに向かって手を伸ばす。でも、オレはそれに構わず黙って光と共に消えるのを待つ。

 そして……。



『ゼロォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!』



 を呼ぶその男の叫びを聞きながら、オレの姿は、意識は、消えてなくなった。


 これが、オレの最期の瞬間。



「思い出したか? 自分の事を、仲間の事を、勇者の事を」



 ああ、少なくとも自分が何者なのかは思い出した。



「そうか。それなら話は早い」



 どこの誰だか知らねえが、一応礼は言っておく。



「礼なら後からじっくり聞こう。それに、君は時期に目を覚ます。ただ……」



 んあ?



「その時、そこには広がっている。君にとってはあり得ない光景がね」



 あり得ない光景?



、君は紫色の髪の少年を救い、その後、魔法使いの少女を助けた。今は何も関係のないことかもしれない。繋がりのないことかもしれない。でも、それ等の事象はやがて繋がっていき、。そしてそれは、紛れもない、だ」



 お、おい待て。お前、いったい何言ってやがる? 



「しかし君がここで死ねば、それらは全て無くなる。でも、もうその心配もなさそうだ。嬉しい誤算だ。我は、の力を甘く見すぎていたようだ」



 おい、何の話だ!? 答えやがれ!



「目を覚ませばわかるさ。さあ、時は満ちた。今こそ再び目を覚ませ。魔界の勇者ゼクロスよ。我ら魔族を助けた時のように、今度はこの世界に生きるものを救いとれ」



 魔族……!? そうか、お前は……!


 ぐっ、また眩しく……!?


 視界が再び白い光に包まれ、それはそのままゆっくりと暗転していく。

 白で覆われていた視界は、再び闇に染まる。

 でもそれが瞼の裏側だと気が付くのに数秒もかからなかった。



「ん……?」



 オレはゆっくりと目を開ける。


 外はまだ夜明け前。場所は変わらず例の塔の屋上。オレ達と対峙していたドーゲスという魔獣と、魔獣になったバロックの魔物は相変わらず顕在していた。

 だが……。



「大丈夫!? ゼロ!?」


「なっ……!」



 目の前に広がる光景。それは、ぐったりと倒れこむバロックの魔物と、右の大きな拳で左肩を苦しそうに抑えるドーゲス。

 オレやメルノ、ロイの周りを大きく覆うように現れている、緑色でできた半透明の結界。



 そして……。



「言ったでしょ? あんたは私が絶対に守るって」



 記憶の中では屍になっていたはずの人が、オレが守れなかったはずの人が、起き上がったオレに、そっと優しく微笑みかけてくる。



「ソラ……?」



 今はいないはずの、が、青空のような綺麗な色の髪をした女の姿が、確かにそこにあった。


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