201「言うべきこと」クランリーテ


「――おかげさまで、ヤエさんとヨリフェルさん、仲直りができました」

「ふおおお良かったねユミリアちゃん!」


 その日の夜。ユミリアを交えての通話魔法。

 私たちは先日の結果を聞くことが出来た。


「おめでとう、ユミリア。歌を聴かせたんだよね?」

「――はい。そうしたら、もう一回聞かせて欲しいと言われまして。ヤエさんとヨリフェルさんが歌に魔法を合わせてくれました」

「よかったじゃない。演技をしたくなるような歌を聴かせられたってことよね」

「計画通りだねー」

「計画って、チルトちゃん……。でもユミリアちゃんの歌、素晴らしかったから。当然の結果です」

「――ありがとうございます、みなさん」

「ね、ユミリアちゃん! 二人はそれでなにか言ってた?」

「――そうですね……。私の新しい歌を聴いて、随分と意気投合していました」

「い、意気投合? どんな風に?」

「――実はどうやってこの短期間で歌を作ったのか質問されまして、先日のこと、みなさんのことをお話ししたんです。まだ学生ですが、すごい魔法士がいると」

「すごい魔法士って……」

「ふふっ、クラリーとサキちゃんのことですね」

「そ、それほどでもないけど?」

「――ヤエさんとヨリフェルさん、とても感心していました。どれだけすごい魔法士なのか、自分たちも会ってみたい。是非魔法を見せて欲しい。そして自分たちの魔法も見て欲しいと」

「そうなんだ。……いやそれって」


 ユミリアは気付いていないみたいだけど……。

 私たち、対抗心燃やされてるよね?


「あっははー。サキとクラちゃんのおかげで意気投合してくれたわけだー」

「え、えぇー……」

「いいじゃない。クラリー、堂々としなさいよ。ユミリア、二人に伝えて。いつでもいらっしゃいって」

「――わかりました」

「ひゅー、サキかっこいー」

「はぅ……。でもユミリアちゃんたちの演技、私も見てみたいです」

「だよね! わたしも絶対見たい!」

「……ま、そうだね。その日を楽しみにしてるよ、ユミリア」

「――はい! みなさんには是非演技を見て貰いたいです。本当に、ありがとうございました……!」


 たぶん深々と頭を下げてるんだろうな、ユミリア。

 本当に、仲直りできてよかったよ。


「――……そういえば、気になることがあるんです。あれからホシュンさん、大丈夫でしたか? とても思いつめた顔をしていたので、心配です」

「あぁー……それね。一見普段と変わらない感じなんだけど、たまにボーッとしてるんだ。私たちもちょっと心配でさ」

「今日も聞いてみたんだけどね~。結局なにも話してくれなくて。悩んでるなら話して欲しいんだけどなぁ」

「そうだね、私たちのこと頼って欲しいです」

「ホシュンなりに考えることがあるのよ、きっと。本当に聞いてもらいたいことがあれば、いつか話してくれるわ」

「んー、気長に待つしかないのかもねー」

「――そうですか……」

「ユミリア、ホシュンのことでなにかあったら教えるよ」

「――はい。お願いします。少しのやり取りでしたが、ホシュンさんのおかげで改めて決意を固めることができました。ホシュンさんも悩みがあるのなら、解決できるといいのですが」

「うん、そうだね……」



                  *



 それからしばらく他愛のない話を続けて、通話魔法を終了する。

 でも頭の中にあるのは、やっぱりホシュンのことだった。


 以前、チルトとホシュンが話していたのを思い出す。



『そのまま冒険科でリベンジしようと思わなかったの?』

『うっ、痛いところを突いてきますね、チルトさん。いいんです、アタシには才能無かったんですよ。きっと属性魔法の方が向いてるッス!』

『ふーん……そっかー。じゃあしょうがないねー』



 この時私もチルトと同じことを思ったけど、言うことができなかった。

 アカサの冒険科の厳しさを知らない私に、無責任なことは言えないから。

 これはホシュンが決めたことなのだからって。


 でもやっぱり言うべきなのかもしれない。

 冒険科でリベンジしないとダメだ。

 諦めずに頑張ろうとするユミリアの姿を見て、あんな風にショックを受けるのなら。

 ホシュンも逃げるべきじゃない。


「……よし。今更って思われるかもしれないけど、言うだけ言ってみよう」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る