195「頼ってくれたのは」クランリーテ


「そんなことないよ! ユミリアちゃんは逃げたんじゃない!」


 アイリンは立ち上がって、ユミリアに訴えかける。


「ユミリアちゃんがわたしたちを頼ってくれたの、すっごく嬉しいよ」

「アイリンさん、確かに私はみなさんを頼ってしまいました。つまり問題から逃げたということです」

「ううん、違うよ。だって頼りたいと思ったってことは、どうにかしたいと思ったからだよね?」

「――それは」


 そっか。私も、アイリンがなにを言いたいのかわかった。


「そうだね。ユミリアは解決方法を考えたくてここに来た。なら、それは逃げたんじゃないと思う。向かい合うために、ここに来たんだよ」


「私は……向かい合う、ために……」


「あ……」


 呟くユミリアと、どこからか漏れた小さな声。

 見ると、ホシュンがハッとした顔をしている。

 気付いたのは私だけかもしれない。みんなユミリアのことを見ていた。


「ユミリア、どうなの?」


 サキがユミリアをじっと見つめる。


「アイリンやクラリーが言ったように、自分でどうにかしたいと思っているのよね?」

「……はい。そうです」

「そう。だったら」

「問題を放棄したわけじゃないねー」

「そうだね。それは逃げたとは言わないと思います。ユミリアちゃん」

「みなさん……」


 夏休み最後のあの日、両親に決意を伝えるユミリアの姿を見た。

 だからわかる。ユミリアが簡単に問題を投げ出すはずがないと。

 きちんと向き合おうとするのが彼女だ。


 ユミリアは一度顔を伏せてから、立ち上がって前を向く。


「ありがとうございます。やっぱり、ここに来てよかったです。すみません、必ず解決方法を考えてみせます」

「だめだよユミリアちゃん!」

「……え?」


 頭を下げるユミリアのもとに、アイリンが駆け寄って腕を掴む。


「頼るなら最後まで頼って! わたしね、クラフト部のみんなにすっごく助けられてる。仲間だから、友だちだから、頼っていいんだって教えてくれた。だからユミリアちゃん、もっと頼って! わたし、ユミリアちゃんの力になりたいよ」

「アイリンさん……」

「……アイリンの言う通り。私たち友だちなんだから。その解決方法、一緒に考えよう」

「私……は……」


 ユミリアが目元を拭う。


「まだ、大事なことが、わかっていなかったみたいです。……みなさん。どうか、一緒に考えてください」

「うんっ! 任せて!」


 嬉しそうな笑顔でアイリンがユミリアに抱きつく。

 そんな二人のことを眺めていると、


「クラリー、いい友だちを持ったみたいね」

「……うん」


 カラー姉さんの言葉に頷いて。

 ……あぁ、もう誤魔化せないや。


 自分がアイリンみたいな笑顔になっていることに、気付いてしまった。

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