クラフト29 自分たちの道のために
193「突然の来訪」クランリーテ
カラートゥス・カルテルト。
私たち三姉妹の長女で、三つ年上の姉さん。私と同じ水色の髪をとても長く伸ばしている。背が高くて綺麗な人だ。
誰よりも知識欲が強くて、その興味が未開の大陸に向いた瞬間、彼女の中でプランが出来上がっていた。
今よりも高性能な船を自分で作って、未開の大陸を見に行く。
そのためにアカサ王国の建設専門の学校に留学し、造船について学び、実際に新しい動力の研究に携わっている。
武術を極めるためにラワ王国に行ったキラル姉さんもすごいけど、一番行動力があるのはカラー姉さんだと思う。
年末年始に帰ってくることはあるけど、このなんでもない時期に帰ってくるのは珍しい、いや初めてだ。
でもそこは、カラー姉さんだから。きっとなにか思い付いて帰ってきたんだろうで納得できる。
それより驚いたのは……。
「クラリーさん。突然申し訳ありません。みなさんも、お久しぶりです」
「え――――ユ、ユミリア!?」
ユミリア・ユキヅキ。スツにいるはずの彼女が、何故かカラー姉さんの後ろにいた。
*
「突然帰ってきたカラー姉さんにも驚いたけど、まさかユミリアが一緒なんて……本当に驚いた」
カラー姉さんとユミリアを家の中に通して、帰るはずだったアイリン、ナナシュ、ホシュンも一緒にリビングに戻った。
お茶を用意して、みんなにカラー姉さんを改めて紹介。ホシュンにユミリアのことを紹介したりしていると、サキとチルトがお見舞いにやって来た。
「驚いたのはこっちよ。まだよく状況がわかっていないわ」
「そうだよー。クラちゃんはすっかり元気っぽいし。カラーさんがいるし!」
「あぁ……ごめん。おかげさまで、もうだいぶいいよ」
なんかもう、風邪なんか吹っ飛んでしまった。
もちろん本調子ではなくて……ナナシュの視線がちょっと痛い。さすがにこの状況で部屋で寝ていろとは言ってこないけど。
「チルトちゃん久しぶりね!
「お久しぶりですー。アカサではお世話になりました」
「そっか、二人はアカサで会ってるんだ」
チルトがアカサに留学した際に、カラー姉さんに会ったという話は聞いていた。
そして今さらだけど、この二人は話が合いそうだなと思った。
「クラリー、チルトちゃんから聞いたわ。学校、頑張ってるみたいじゃない。成績トップなんでしょう?」
「えっ、ま、まぁ。火属性以外は……」
「やっぱりすごいわ。――あ、そうそうこれアカサのお土産よ。みんなもどうぞ。多めに買っておいてよかったわ」
カラー姉さんはみんなに……変わった人形を配っていく。
魚やカニ、イカ、クラゲなど海の生物をモチーフにしたもので、何故か大きなフォークやフライパンを持っている奇妙なデザイン。若干不気味だ。
みんな微妙な表情でお礼を言って受け取っていく。
私のはナイフを剣の様に構えているカエルだった。……なんでこのラインナップにカエルが?
最後にサキがクラゲのようなイカのような不思議な人形を受け取って、
「あ、ありがとうございます。それでクラリー、これはどういう状況なのよ?」
「いやそれが、私たちもまだよくわかってないんだ。紹介し合ってるところにサキたちが来たから。……というわけで、どこから聞けばいいかな」
お土産のことはさておき。
カラー姉さんとユミリア、二人には聞きたいことがいっぱいある。
と、私が迷っているとアイリンが手を挙げた。
「ユミリアちゃん! どうしてカラーさんと一緒だったの?」
「確かに。まずはそれが気になるね」
「カラーさんとはバスで――」
「ほらほら、アカサからのバスってスツを通るでしょう? そこでユミリアちゃんが乗ってきたのよ」
「――はい。カラーさんのお隣に座りました」
「せっかくだから話しかけようと思ったの。スツのことたくさん聞けて楽しかったわ~」
「私も、あんなにスツのことを話したのは初めてです」
「……さすが、カラー姉さん」
私だったら、隣りに座った見ず知らずの人に話しかけるなんてできないかも。アイリンやチルトなんかはそういうの気にしなさそうだけど。
「で、よくよく聞いたらクラリーのお友達だって言うじゃない! もう驚いたわよ」
「まさかクラリーさんのお姉さんだとは思いませんでした」
「すごい偶然でしょう? だから、あらあらそういうことなら家にいらっしゃい! って誘ったの」
「なるほど……」
カラー姉さんらしい。例えそこで会ったのが私の友だちじゃなかったとしても、家に誘ってたんじゃないかな。
とにかくこれで、二人が一緒だった理由はわかった。
「じゃあ、どうしてターヤの城下町に?」
「それはね」
「それは……」
カラー姉さんとユミリアが、同時に口を開いて顔を見合わせる。
城下町に来た理由。両方に聞きたいところだけど……。
まず気になるのはユミリアの方かもしれない。
そんなことを思っているとカラー姉さんが、
「みんな。まずはこの子、ユミリアちゃんの話を聞いてあげて? 私のは急ぐ話じゃないから」
「……うん。ありがと。ユミリアは、どうして急に城下町へ?」
そう、急になんだよね。
私たちには通話魔法がある。ユミリアの性格的に、来るなら予め教えてくれるはずだ。サプライズで来るようなことはあまりしない気がする。
それでも突然来たということは……なにか、余程のことがあったのかもしれない。
そう思うと緊張してきた。
ユミリアは真剣な顔でテーブルを見つめている。
静まり返るリビング。みんな黙って、ユミリアが話し始めるのを待っている。
やがて、ユミリアの口がゆっくり開き、
「実は……。スツの学校で作った部活が、上手くいっていないのです」
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