192「早く元気になって」ナナシュ


「ナナシュさん、ナナシュさん。起きてください」

「ん……ホシュンちゃん? ……あっ!」


 私は慌てて椅子から飛び起きた。

 いけない、少しだけ寝るつもりだったのに……ホシュンちゃんがいるということは、もう、朝?


 ベッドにクラリーが寝ているのを見てホッとする。その横で座って寝ているアイリンちゃんも。


「にゃはは、朝食作りに来たらみんな寝ててビックリしたッス」

「はぅ……ごめんなさい」

「大丈夫ッスよ。ふたりはぐっすり寝てますね~。これからご飯作るので、それまで寝かせておきましょう」

「うん。ホシュンちゃん、ご飯作るの手伝います」

「はい! お願いするッス」


 朝ご飯は昨日の残りの雑炊と、味噌を使ったスープ。それから朝市で買ってきてくれた鮭を焼いた。


「スツではこれ、味噌汁って言うみたいッス。イッシキとスツ地方って文化はかなり違うんですけど、料理は共通点多いんですよね~不思議なことに」


 と、ホシュンちゃんが言っていた。


 朝食ができたからクラリーの部屋に戻ると、すでにクラリーは身体を起こしていた。


「おはよう、ナナシュ。ホシュン」

「起きて大丈夫なんですか? クラリー」

「うん、もう熱はないと思う。喉もちょっと違和感ある程度で。ただ……」


 クラリーの視線が、下に向けられる。


「すー……すー……むにゃ……おなかすいたよクラリーちゃぁん……」

「アイリンが袖を掴んでて、離してくれないんだよね」

「にゃはは……」

「アイリンちゃん……」


 よく寝ているところ悪いけど、さすがにアイリンちゃんを起こして。

(もう朝だと気付くと飛び起きてクラリーに泣いて謝りだした)

 みんなでリビングに向かい、遅めの朝食を食べる。



「ホシュン、このスープ雑炊にすごく合うよ。美味しい……」

「鮭もいい焼き加減だよね~」

「やっぱりホシュンちゃん、料理得意ですよね」

「にゃ、にゃはは、それほどでもないッスよ~」


 美味しい朝食を食べて、一息ついて。

 クラリーもかなりよくなったみたいだし、そろそろ帰った方がいいかも。

 特にアイリンちゃんは、さすがに一度帰らないとお母さんが心配してしまう。



「というわけで帰るけど、クラリー。無理しちゃだめですよ。まだ寝ててください」

「う、うん。そう、だね」

「魔法の練習なんて絶対したらいけません」

「わ、わかってるよ。みんなに心配かけちゃったし、自粛する」

「ふふ。ならいいんです」

「ナナシュ。アイリンとホシュンも。本当にありがとう」

「どういたしましてッス! 困った時はお互い様ですよ~」

「そうだよ! 気にしないでクラリーちゃん! ……わたし、途中寝ちゃったし」

「早く元気になってくれたら、それでいいんですよ。クラリー」

「……うん。でも、ありがとう」


 お互い笑い合い。

 クラリーに見送られて、玄関の扉を開けると――。


「あ……」

「――あらあら? お客さんが来てたのね」


 開いた先に、背の高い女性が立っていた。

 クラリーのお母さんではない。でも、透き通るような水色の長い髪はクラリーと同じ色。そして私たちをお客さんだと言う、この人は……。


「えっ、うそ?」


 後ろから、慌てたようなクラリーの声。


「クラリー! 久しぶりね。元気に……あら、なんだか具合悪そうね」

「カラー姉さん!?」


「……え?」

「えぇぇ! お、お姉さん!?」


 そこに立っていたのは、クラリーのお姉さんだった。




未分類魔法クラフト部

クラフト28「看病しなくちゃ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る