188「食事も大事です」ナナシュ
「クラリーさんの家のキッチンすごいですね。アカサの一部地方で使われてる土鍋まであるなんて思わなかったッス」
「家族が……みんな、あちこち行くから」
ホシュンちゃんが作ってくれたのは、雑炊という料理。アカサの北の方や、スツ地方が発祥と聞いたことがある。
風邪の時に大事なこと。暖かくして、水分を取って、そして栄養のあるものを食べる。
昼からなにも食べていないと聞いてホシュンちゃんが買い出しに出てくれて、そのまま料理もしてくれた。
「野菜と鶏肉、卵を入れましたが、食べるの辛かったらご飯だけでも食べてくださいね」
「ありがと……ホシュン」
クラリーの身体を起こして、お椀によそった雑炊とスプーンを手渡す。
鶏肉は食べやすいようにほぐしてあって、野菜も柔らかくなるまでしっかり火を入れてあるみたいだ。
「ふおおおお! 美味しそうだね~!」
「確かに……。ホシュンちゃん、料理得意なの? すごいです」
「にゃはは、得意ってほどじゃないッスよ~。あ、クラリーさん、熱いから気を付けてくださいね」
「ん……あちち。あ、でも……おいし……」
もくもくと食べ始めるクラリー。私たちは顔を見合わせて少しホッとする。
よかった、これだけ食欲があれば、すぐに治るかも。
「……ふぅ。美味しかった。もう、食べられないかも」
しばらくして。
さすがに全部は食べきれなかったみたいだけど、鍋の半分以上は無くなってる。
「なんか……ねむく、なって」
「クラリー、水を飲んでから横になりましょう」
「ん……ありがと、ナナシュ」
コップに汲んだ水を飲むと、もぞもぞと動いて横になるクラリー。
「ごめん、みんな……ちょっと……」
そしてそのまま、すーすーと寝息を立て始めてしまった。
「っぷは~……」
「ど、どうしたッスか、アイリンさん」
「クラリーちゃんが寝そうだったから、静かにしないと~って思って、息止めちゃってた。えへへ……」
「ふふ。クラリー、ご飯を食べてだいぶ落ち着いたみたいですね。ただ……」
額にそっと手を当てる。やっぱり、熱はまだ下がっていなかった。
「あの、ナナシュさん、アイリンさん。ひとまず休憩にしませんか? 気付いてないかもですが、実はもう日が暮れています」
「えっ……もう、そんな時間? アイリンちゃん、馬車は大丈夫ですか?」
「明日は学校休みだし、今日はこのまま泊まっていくことにしたよ~。だから看病は任せて!」
「アイリンちゃん……頼もしいですね。私は……」
ここに来る途中、クラリーのお見舞いに行くってお母さんに伝えてあるから、帰りが遅くなるのは大丈夫だけど……。
「雑炊、みんなの分も作ったッスよ。一緒に食べましょう」
「ほんとっ? やったっ」
「……そうですね。看病する側が無理をして倒れるわけにはいきません」
折角です。ホシュンさんの作った美味しそうな雑炊を、いただいてから帰りましょう。
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