180「ヒミリ村の古代遺跡」チルト
ボクが魔剣を見付けたヒミリ村は、ラワとターヤを東西に隔てるナハマ山脈の山間の村。
ナハマ空洞の麓がターヤ城の真北で、ヒミリはそこからもっと西の方だ。
「ヒミリって言うと、世界で最初に見付かった遺跡があるところッスね」
「お、さすがホーちゃん。地上に遺跡の入口があって、聖なる場所として村の人が守り続けてきたんだって。だから歴史上では一番最初に発見された遺跡ってことになってるんだ。もっとも、ちゃんと中を調査できたのはだいぶ後みたいだけどねー」
「村の人がなかなか遺跡に入れてくれなかったって教わったッス」
「へぇ……。あと確か、初代ターヤ国王が生まれた地だって言われてるよね」
「らしいねー。ターヤの人なら一度は行ったことあるんじゃない?」
「私は中学の時に学校の授業で行きました」
「あ、それ私も。泊まりで行ったよね」
「やっぱりねー。ボクとサキも中二の時に学校で行って、その時に魔剣を見付けたんだ」
「林間学校ってヤツですね! アカサでも似たような授業がありましたよ~」
なんて話で盛り上がっていると、アイリンだけがしゅんとして、
「わたし、行ったことない……」
「え……そうなんだ。てっきりターヤの学校はみんな行くもんだと思ってたよ」
「もしかしたら城下町の学校だけかもしれないわね」
「うぅ、ニィミ町の学校はそんなのなかったよ~。東の海に行く臨海学校ならあったけど……」
「いいなー。ボクらはそっちがなかったよー」
「海は楽しかったけど、わたしもヒミリに行ってみたかったな~。ね、ね、みんな、ヒミリってどんなところなの?」
アイリンがテーブルに乗り出して聞いて来る。でも……。
「……遺跡以外は、特になにも……」
「そうね、あとは山しかないわね」
「まーぶっちゃけ田舎だよねー」
「はぅ、私は結構楽しめたよ……? 色んな薬草がありましたから」
それはナナシュだからかな。
ニィミ町よりもずっと小さな村で、チルトの言う通り田舎だったという印象が強い。
「あー、でもアイちゃん知ってる? ヒミリってね、世界で唯一、神って呼ばれる存在を信じている村なんだよ」
*
「へ~、これがヒミリの神の絵なんだー」
中学二年生の春。ボクたちは林間学校でヒミリ村に来ていた。
遺跡見学が終わり先生が配ってくれた紙の資料を見ていると、そこにはこの村で信じているという神様の絵が描かれていた。
神様というのは色んなことができちゃうすごい人――もとい、人を越えたなにからしいんだけど、詳しいことはわからない。とくかくすごい存在だから崇めているらしい。
ちなみにその神の絵は、子供でも描けるような簡単なもの。手足や胴体の輪郭を線で引いただけの絵だった。ほとんど人と同じ形なんだけど、頭は長方形。人の胴体に箱を乗っけた感じだ。
うーん、ますますどんな存在かわからなくなった。
「ねぇサキ。この絵、どう思うー?」
「どうって言われても……」
「これが神様って言われてもわかんないよねー」
「そうね。でもそういうこと口に出さないの」
おっと、それもそっか。村の人はこの絵が神様だって信じてるんだし。
「あ、チル。下に説明が書いてあるわ。昔はもっと丁寧に描かれていたけど、時間と共に簡略化されていったと言われている……だって」
「えー、本当かなー」
「だからチル、そういうこと言わないの」
「はいはいー」
ボクは神の絵が描かれている紙を畳んで、ポケットにしまう。
たった今見学した遺跡は、とても小さなものだった。
地上に入口があって、地下に部屋が六つあるだけ。他の遺跡同様、調度品の類はほとんど無かったみたいだけど、ここからは三つの魔剣が発見されているという話だ。
そのうちの一つが、かの有名な
この規模の遺跡に三つの魔剣というのは他に例がなく、古代文明にとって特別な場所だったのでは、なんて言われてる。村の人たちが聖なる場所として長い間人が入るのを拒んでいたのは、そういう理由からだったのかも。
ここがすごい場所だってのは十分わかってるんだけど……もう探索済みの場所だからなー。
調べてない場所とかあればワクワクするんだけど、そんなこともなさそう。ちょっとガッカリ。
他になにか面白いものないのかなー……。
「あれ? せんせー、あっちの墓地は遺跡じゃないんですかー?」
「向こうは村の人が作ったと言われていますね。古代遺跡特有の建築素材が一切使われていませんから」
「そうなんだー……。見に行ってもいいですかー?」
「この後は自由時間です。遺跡をもう一度見てもいいですし、墓地の方を見に行っても構いません。時間までには戻ってくださいね」
「わかりましたー! サキ、墓地に行こっ!」
「しょうがないわね……あ、ちょっとチル、引っ張らないで!」
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