174「ヘンなもの」チルト


「チルトちゃんはどうするんですか?」

「ん~どうしよっかなー。ボクも悩むなー」


 アイちゃんへの誕生日プレゼント。ナナちゃんはどうするか決めたみたいだけど、ボクはまだ迷っていた。


「じゃあ、サキちゃんの誕生日にはいつもどんなものをあげてるの?」

「サキに? ん~……ヘンなのあげてる」

「へ、へんなの?」


 今年はカエルの貯金箱。中にどれだけ入っているかで色が変わるやつ。

 その前は水に浸けると膨らむ魚の人形。魔法道具を応用して作られているとかなんとか。

 さらにその前は……確か、火属性魔法で炙ると絵が浮かんでくる紙。サキの魔法が強すぎて、危うく燃やしちゃうところだったっけ。


「選んでる時はこれ面白い! って思って買うし、あげた時も盛り上がるんだけど、あとあとになって、なんであんなヘンなのあげたんだろう? ってなるんだー」

「あはは……チルトちゃんらしいね」


 ボクらしいかー。

 でもヘンなのあげるのって、サキにだけなんだよね。他の友だちには割と普通のものをあげてると思う。

 たぶんそれは……。


「これ、サキにも言ったことないんだけど」

「うん?」

「やっぱり自分が好きなものあげたいんだよね。例えその時だけでも、ボクが面白いって感じたものをあげて、気持ちを共有したいんだ。同じ物を見て、笑って欲しい。サキなら一緒に笑ってくれるってわかってるからさ、ついついそういうヘンな物をあげちゃうんだよね」

「チルトちゃん……。うん、いいと思うよ。お互いのことをよくわかってるからこそ、なんだね」

「あはは、まあねー。あ、でも今のサキには内緒だよー」

「はい。わかってます」


 笑顔で頷いてくれるナナちゃん。

 わかってくれてると思ったから、ボクも話したんだなって。話してから気付いた。

 それだけボクはナナちゃんのこと信頼してるんだ。

 きっとナナちゃんだけじゃなくて……。


「ボクたちみんなさ、クラフト部で友だちになってからほんと仲良くなったよねー」

「はい、私も思います。……でも、急にどうしたの?」

「いま唐突にそう思ったんだよー。だからさー、アイちゃんにもボクの好きなものをあげたいんだよね。面白い! って、ビビッとくるやつを!」

「アイリンちゃんにも? そうだね、アイリンちゃんなら喜んでくれそう」

「でしょー? アイちゃんならボクの感性を受け止めてくれるはず。だってさ、補習で一緒になった時、一瞬で仲良くなったからね! ぜったい一緒に面白いって思ってくれるはず!」


 そうだ、ボクとアイちゃんの関係は、あの時から始まっている。

 例えサキがクラフト部に入っていなくても、ボクたちは友だちになって、仲間になっていたはずだ。


「ふっふっふ。アイちゃん、覚悟しててね。ボクがいま一番面白いと思う物をプレゼントするからね!」

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