143「ヒミナのイメージ」クランリーテ
「フリル先輩。本当に、諦めなきゃいけなかったんですか?」
「……クランリーテちゃん?」
笑っていたフリル先輩の顔から、表情が消える。
「どうしてそう思うの?」
「先輩、マナ計測器の打ち上げの時、土台まったく壊れてなかったです。そもそも土台のイメージを考えて四人の魔法をまとめたのはフリル先輩じゃないですか」
「あぁ、あれね。クランリーテちゃん、それフォローのつもり? あれくらいじゃヒミナの魔法には全然届いてないことくらいわかってるでしょ」
「で、でも……本当に、そう思って」
「はぁ……。そうだった。クランリーテちゃんは、ヒミナの魔法のイメージについて聞きたかったんだよね。わたしのことなんかじゃなくって」
「い、いや、それはその」
……しまった、フリル先輩を怒らせてしまったかも。
フォローとかそういうのじゃなくて、本当にそう思ったんだけど……。
「いいよ、昔ヒミナが話してくれたこと、教えてあげる。わたしにはさっぱり理解できなかったけど」
「は、はい……」
すっかり不機嫌になってしまったフリル先輩。私は大人しく頷くことしかできなかった。
「人はみんな、四つの箱を持っている」
「……え?」
「四大属性って言いたかったみたい」
「四大属性……四つの箱」
思わず、自分の胸に手を当てる。
「でも本当は箱なんてない。ワタシはそれを知っているだけなんだ――って。意味わかんないでしょ? 誰も理解できなくて、さすがのヒミナもその話をしなくなった」
「…………」
話を聞いて――ふと、昨日アイリンが何気なく言った言葉を思い出した。
『わたしの場合、未分類魔法の部屋が大きすぎて、なかなか属性魔法の部屋に辿り着けないんだよね~』
似ている。近いことを言っている気がするんだけど……。
あぁ……なんだろう、モヤモヤする。胸がドキドキする。
なにかすごいことがわかりそうで、でもわからない。
手が届きそうで届かない。
一人では辿り着けない。
そんな時はどうする? 私はもう、その方法を知っているはずだ。
「クランリーテちゃん……?」
「あ、あの、フリル先輩。箱って……魔法のイメージのことなんですよね?」
「……うん。たぶん、そうだと思うよ」
「私たちは無意識に、魔法のイメージを四つに区切って……枠に入れている?」
「え? あぁー……魔法はマナを鋳型に入れて形にするイメージだから? だから箱?」
「使う属性に合わせて、マナを箱に流し入れている」
「いやいやいや、それ普通のことだよね? 属性魔法のイメージ切替えスイッチみたいなの、みんなあるでしょ。普通にやってるよ」
「……そうですね」
風属性魔法を使うとき。
火属性魔法を使うとき。
水属性魔法を使うとき。
土属性魔法を使うとき。
イメージのスイッチ切替えを、無意識に行っている。
このことは、アイリンに属性魔法を教えるようになってから強く意識するようになったかもしれない。
「ヒミナ先輩が言う四つの箱って、つまりこのスイッチ切替えのこと、ですよね」
「そうかもしれないけど、だからなに? ってならない?」
「確かに、普通のことですからね。でも……ヒミナ先輩は、箱なんてないって言った」
「…………え? あ、でも、そんなの」
私の中で答えが固まりつつある。きっと、フリル先輩も気付いた。
「フリル先輩」
「いやいやいやいやいや! 待ってクランリーテちゃん、だとしてもだよ! そんなの無理だって! ヒミナだからこそなんだよ!」
手をぶんぶん振って否定しようとするフリル先輩の手を、ガシッと受け止める。
「もしかしたら、できる、かも」
「えぇ? クランリーテちゃん……」
「一人では無理なんです! 試すの、付き合ってください!」
一人で辿り着けないのなら、二人で!
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