クラフト20 隣りにいたいから
132「どうして思ったの?」サキ
「……静かね」
あたしの口から、自然とそんな言葉がこぼれた。
チルがアカサへ留学を決めてから出発するまで、あっという間だった。
準備期間はたったの一週間。まるで風のように飛び出していった。
チルらしいと言えばらしいけど、行くと決めてからは一切躊躇いがなかった。
真っ直ぐ前へ。突き進む。
あたしの隣りを歩くために。
変わったって、よく言われるようになった。
夏休みにスツに行ってから、落ち着いたって。
……自覚はあった。余裕ができて、周りのことが見えるようになった。
不測の事態が起きても、慌てず、冷静に動くことができた。
でも実際はどう?
あたしは、隣りにいる幼馴染みが悩んでいることに気付けなかった。
チルはいつも気に掛けてくれていたのに。あたしのことを見ていてくれたのに。
周りのことが見えるようになった、なんて。気のせいだった。
静かだった。
常に一緒だったわけじゃない。別々で行動することも多かった。学科が違うからクラスも離れていたし。
なのに、チルが遠くにいると思うだけで、会えない日があるだけで、こんなにも世界を静かに感じるなんて、思いもしなかった。
心に、ぽっかり穴が空いてしまっている。
これじゃまるで……夏休みの、あの頃のあたしに戻ってしまったみたいだ。
「ねぇ、チル。どうして……」
あたしが変わったなんて、思ったの?
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