108「忘れちゃってた」クランリーテ


「あそこまで微妙な反応をされるとは思わなかったわね」


 放課後、未分類魔法クラフト部の部室。

 五人集まってもしばらく無言が続いていたけど、最初に口を開いたのはサキだった。

 それをきっかけに、みんなポツリポツリと話し始める。


「正直、ショックでした。せっかく創った薬なのに……」

「ボクも驚いた。評価保留だもんねー……」


 通常、課題発表会の最後に先生たちが評価を付けてくれるのだけど、私たちの猫アレルギーの薬は保留にされてしまったのだ。薬が本当に効くのか、本当に無害なのか、副作用はないのか、調査する必要があるとかで。

 もちろんそんな理由ではないと、みんな気付いている。


「この学校、私たちが思っていたよりもずっと、未分類魔法への反発が大きいのかな……?」

「でもさークラちゃん。だったらなんでこの部活があるの?」

「ですね。あそこまで強く反発されるなら、このクラフト部だって……」

「うん、そうなんだよね。そもそもクラフト部はアイリンが復活させたわけで、過去にもこの部は……って、アイリン? 大丈夫?」


 テーブルを見つめてぼーっとしているアイリンに気が付き、思わず話の途中で声をかけてしまう。


「えっ? あ……ごめん、クラリーちゃん。聞いてなくて」

「アイリン……」


 みんなの視線がアイリンに集まる。

 アイリンはちょっとだけ驚いて顔を上げるけど、すぐに俯いてしまう。


「……あのね。わたし、ちょっと忘れてたよ。未分類魔法の話をすると、あんな感じの反応をされるんだって。理解されないんだって。……みんなは、受け入れてくれるから……つい、忘れちゃってた。えへへ……」


 恥ずかしそうに笑って、頭をかくアイリン。

 だめだよ。そんな笑顔……。



 ――コン、コン。



 アイリンに言葉をかけようとして、ノックの音に止められる。

 ……ノックが無くても、声をかけられたかわからない。



 ――コン、コン。



 私たちが動けずにいると、もう一度ノックの音。

 ……誰だろう?


「開けるわよ?」


 サキが立ち上がり、ドアを開けに行く。ドアの向こうにいたのは……。


「みんな、揃っているようね。よかったわ」

「あっ……オイエン先生!?」


 驚く私たち。オイエン先生はすっと中に入り、扉を閉めた。そして、


「話があるの。少しだけ、厄介なことになったわ」

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