クラフト14 ナハマ山脈に行こう!

90「ふわふわなかき氷」クランリーテ


「ん~~~~、つめたーい! クラリーちゃん食べてる? ふわっふわだよ!」

「うん……少し落ち着いて、アイリン」

「ずーっと食べたかったから嬉しくって! ね、ナナシュちゃん!」

「あはは……。気持ちはわかるけど」


 天然氷のかき氷。

 私はアイリンとナナシュと一緒に、それが食べられるお店に来ていた。

 城下町のお店はもう今年の分が売り切れだったから。私たちが今いるのは……。


「おいし~! ナハマまで来てよかったよ~」


 ナハマ山脈の麓にあるお茶屋さんだ。


 夏休みも後半が過ぎ、例によってテレフォリングを使って話をしていると、旅行に行きたいという話になった。

 確か……アイリンが言い出したんだっけかな? みんなで旅行とかいいよね~、みたいな軽いノリで。そしたらトントン拍子で話が進んでいった。予定を確認し合い、行くならナハマがいい! と、これまたアイリンが提案し、場所と日程が決まった。


 城下町からナハマ山脈の麓まで、バスで半日。午前中に出発し、途中の街で一休み、お昼を食べて再度出発。日が暮れる前には到着することができた。

 そして真っ先にこのお茶屋さんに入ったのだった。


「ふふ。アイリンちゃん、本当に天然氷のかき氷があってよかったね」

「教えてくれたチルちゃんにあとでお礼言わなきゃ!」

「……本当は五人で食べる予定だったんだけどね」


 今ナハマに来ているのは私たち三人だけ。

 サキとチルトは、ここではなくスツに行っている。


 スツの行事の「三夜の御霊送り」には間に合わないけど、夏休みの間に行っておきたいとサキが話してくれた。ひいお祖母ちゃんと……黒猫のソラのもとへ。

 一人で行くつもりだったみたいだけど、チルトが一緒に行くと言って聞かなかったらしい。


「大丈夫! 明日サキちゃんとチルちゃんと合流したら、もう一度食べればいいんだよ!」


 今いるナハマ山脈の麓は城下町の真北で、スツはここからやや北寄りの東。

 サキたちは明日の朝スツを出発し、私たちと合流、もう一泊してから帰るというのが今回の行程だ。

 みんな揃ってからかき氷を食べる予定だったんだけど、アイリンが我慢できず、こうして食べてしまっている。


「そういえばさ、アイリン。宿題ちゃんとやってる?」

「むぐっ! いたたたたたっ」

「あ、アイリンちゃん?」

「アイリン……話題逸らしたいからって頭痛いフリするのはどうかと思う」

「ち、ちがうよ! 一気に食べ過ぎて、キーンって……あたたた。ていうかクラリーちゃんこそだよ! かき氷食べてる時にする話じゃないよ!」

「ちゃんとやってたら気にならない話題だよ」

「進んでないんだね、アイリンちゃん……」

「う、うぅ。ちゃんと持ってきたから大丈夫……」


 夏休みの宿題。

 私たち属性魔法科は座学で習う魔法の名前と呪文の暗記。

 二学期すぐに宿題になっていた魔法の実技試験があるから、やってないでは済まされない。

 ……私は実技は問題ないんだけど、呪文を覚えるのが少し大変だった。

 前よりは呪文に興味を持つようになったけど、普段使わないから覚えるのに時間がかかる。

 私でこうなんだから、そもそも属性魔法が苦手なアイリンは余計に大変だと思う。


「ナナシュちゃんはどんな宿題が出てるの?」

「指定した薬を作ってきなさいって課題だよ。でも……実はね」

「ん、なにか問題あったの?」

「ううん。いつもお店で作ってるのだったから、夏休み初日に終わっちゃって」

「ええぇぇ! ずるいよナナシュちゃん!」

「いや、ずるくはない」

「あはは……。もちろん属性魔法科と同じ課題も出てるよ。数は少なかったけど」

「ナナシュちゃんいいなぁ。クラリーちゃんはもう終わってるんだよね?」

「まだだよ。あと少しだけ残ってる」

「終わりかけってことだよね……うぅ、お願いクラリーちゃん! 宿題手伝って!」

「……座学は自分でやりなよ? 実技は見てあげるから」

「ほんと? ありがとう!」


 前から属性魔法はちょくちょく教えてるし、私も未分類魔法を教わってるから。

 今度、宿題で出ている魔法を中心に教えるとしよう。


「よーっし! 宿題の話は終わり! 今日はもう日が暮れちゃうから宿屋さんに行かなきゃだけど、明日はナハマ空洞、見に行こうね!」


 アイリンは元気よく宣言し、残っていたかき氷を口の中にかき込んで……


「うぐ、いたたたたっ」

「……落ち着いて食べなよ」

「あははは……」


 まったく。今日はずっとアイリンのテンションが高い。でも……。


 ふふっ。つい笑みがこぼれてしまう。

 私も、みんなとの旅行が楽しみだった。

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