クラフト12 サマープールは眩しくて

77「城下町サマープール」クランリーテ


「あ、あのっ。今度、みんなでプールに行きませんか?」


 夏休みに入ってほぼ日課になった夜の通話魔法。

 だいたい最初にテレフォリングを発動させるのはアイリンかチルトなんだけど、その日はナナシュが発動し、そんな提案をしてきた。


「行きたい! もう毎日暑くてやってらんないからさー」

「八の月になって、暑さもピークって感じよね」

「プールって南門の外の? わたし行ったことないんだ~」

「……私も、無いかな」

「はい、城下町サマープールです。それであの、明後日とかみんなどうかな?」

「ボクは暇だよー! 絶対行くよ!」

「チル、ちょっと声大きいわよ。私も大丈夫ね。水着用意しとかなきゃ」

「あ~水着かぁ。新しいの欲しいな……。あ、わたしも行けるよ!」

「ほっ……よかったです。クラリーはどう?」

「私はどうしよう。水着も無いし……」

「クラリーちゃんも行こうよ! 水着がないなら明日一緒に買いに行こっ!」

「う、うーん……」

「みんなで行ったらぜったい楽しいから!」

「っ……ア、アイリンがそこまで言うなら、行こうかな」

「やったっ。じゃあ明日そっち行くね!」

「クラリーの水着選び、ですって? そ、それは……」

「サキぃ、手伝ってあげなよー。ボクは家で、ぐでーっとしてるからさー」

「サキちゃん来てくれるの? だったら助かるなぁ。わたしお店詳しくないんだ。クラリーちゃんは?」

「私もぜんぜんわからない」

「……! しょ、しょうがないわね。あたしに任せなさい!」

「はうっ……いいなぁ。私、水着こないだ買っちゃったし、明日は一日店番しなきゃ」

「ははーん。もしかしてナナちゃん、新しい水着をみんなに見せたかったのー?」

「ち、違うよチルトちゃん! そんなんじゃないからね?」



 そんなわけで次の日の午後、サキの案内でアイリンと水着を買いに出た。

 だけど……。


「ビキニ、ワンピース、タンキニ……一通り着てみましょ」

「サキちゃん、これはどうかな!」

「いいわね。でもクラリーは足長いから、こっちの水着の方が似合うかしら」

「ふおおお、大胆だよー!」

「あ、でも待って待って、クラリーこっちも着てみて!」


 ……という具合で、何着も試着することになった。

 でも、おかげでいいのが買えた。やっぱりサキはセンスあるなぁ。


 買うのに時間がかかったけど、お茶飲んで一休み。

 最後にナナシュのお店に顔を出して、早めに解散した。



 そして当日、朝。

 私は買ったばかりの水着を持って、城下町サマープールの前に立っていた。


 結局来ちゃったな。今さらだけど。

 ……でも私だけ行かないなんて後で絶対後悔するし。

 不安はあるけど、きっと大丈夫。


 城下町サマープールは、街の外側に作られたレジャー施設。夏の間だけ営業している屋外プールだ。

 南門の辺りから見たことはあったけど、こう間近で見ると……でかい。

 すごい高いところにパイプのようなものがぐねぐねと通してあるけど、あれはなんだろう?


 辺りをきょろきょろと見回しても、まだみんなの姿はなかった。

 ちょっと、早く来すぎたかな。

 すでに開園しているからどんどん中に人が入っていく。この暑さ、みんな涼を求めてるんだ……。


「……あれ? あそこにいるの……」


 白の下地に青の水玉模様。浴衣、だったかな。黒い髪をアップにしているけど、あの子は……。


「ユミリア?」

「あ……クラリーさん。少しだけ、お久しぶりですね」

「う、うん。そうだね。ユミリアもプールに?」

「はい。というより……」


 ユミリアがなにかを言いかけたところで、


「ユミリアさーーーん! おまたせー!」

「こら、ニニア。走らないの。…………はうっ! クラリー!? どうしてもうユミリアちゃんと……!?」

「えーっと、ナナシュ……と?」


 振り返ると、南門の方からやって来たナナシュ。

 それから、銀髪の小さな女の子。背の低いナナシュよりもさらに小さい。


「はぅ……クラリーがこんなに早く来るのは予想外でした。今日はね、ユミリアちゃんと、私の妹のニニアも一緒なの」

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