59「合宿おつかれさま!」クランリーテ
「暑いね~……」
「うん……暑い」
私は屋上で大の字になっていた。頭の向こう側に、アイリンも同じように寝っ転がっている。
まだ午前中だけどすでにものすごく暑い。
「いい天気だね~、クラリーちゃん……」
「雲一つない、気持ちのいい青空だ……」
見ている分には気持ちがいいんだけど。雲がないということは、高くなってきた太陽の光が思いっきり突き刺さるということでもある。
これ以上ここでやるのは無理かもなぁ……。
「でもわたしたち、やったよね」
「うん。これなら、自由課題は間違いなく合格できるよ」
私たちは手を頭の上に持っていき、お互いグーを作って手首を合わせる。
「まったく、たいしたものね」
「アイちゃんがあんなに属性魔法を使えるなんてビックリだよ」
「すごかったですよ、ふたりとも!」
寝っ転がっていた私たちの傍らに、サキ、チルト、ナナシュが腰掛ける。
「えへへ~、みんなありがとうー。おかげでなんとかなったよ~」
「自由課題はね。……普通の属性魔法の試験は、やっぱりやばいよ」
「うっ、今は言わないでクラリーちゃんっ」
「あははっ、アイちゃん、ボクと一緒に練習しようねー。意外とナナちゃんも教えるの上手かったよ」
「はうっ。薬学は魔法のコントロールが大事だから、そういう方面はね。基礎はやっぱりサキちゃんに教わった方がいいよ」
「サキちゃん教えるのすっごく上手だよね!」
「そ、そう? ま、試験まではまだ時間あるんだから。学校がある時に、また教えてあげてもいいわよ」
「うん! 是非おねがい!」
「…………」
この話になると、私は口をつぐんでしまう。
私なりに頑張って教えようとしたんだけど……。
『これをこうして……こう。ボワッ! っていうイメージだよ。同じようにやってみて』
『えぇ~? クラちゃん、ボワッ! って言われてもわかんないんだけど?』
どうも私は魔法のイメージを人に伝えるのが苦手らしい。
アイリンはそんなことないって言ってくれたんだけど、それでもショックだ。
「もうすぐお昼ね。合宿は終わりかしら」
今回の合宿は普通の休みを利用したものだったから、昼でおしまい。この暑い中ここでやるのは難しいという理由もあるけど。
「涼しい午前中にって思ったけどさー。もう朝から暑くて、ボク汗だくだよー」
「みんなそうだよ、チルトちゃん」
「でもちょっと気持ち悪いわよね……。クラリー、お願いがあるのだけど」
「なに? ……って、ああ。そうだね。みんな、お風呂で汗流していってよ」
「助かるよ! クラリーちゃん。ありがと~!」
そんなわけでみんなでお風呂に入り、汗を流すことに。
昨日も思ったけど、サキってスタイルいいよね。
そうやって褒めてあげたら、むちゃくちゃに照れてて面白かった。
お風呂から出たら母さんがお昼ご飯を用意してくれていた。
昼前には解散する予定だったのに。母さんありがとう。
食べ終わったあとの片付けの時、チルトはキッチンに押しかけて母さんとなにか話してた。内容は聞こえなかったけど、チルト、すごく目をキラキラさせてた。
片付けも終わって、じゃあ解散しよう。
……と、なったんだけど。この炎天下、城下町に住む三人はともかく、ニィミ町のアイリンを帰すのは危ない。
城下町からバスは出ていないけど馬車はあるから、駅まで行けばなんとかなるけど……それでも、夕方まで家にいていいよと誘った。
そしたらまぁ、みんな残ることになって。結局五人でずーっとお茶しながら話していた。
こんなに長くみんなと一緒にいるのは初めてで、すごく楽しくて。
日が暮れ始めて今度こそ解散となると、なんだか離れがたくなってしまった。……言わなかったけど。
みんな帰らないといけないし、私は見送らなくてはいけない。
「まだ暑いから、気を付けて帰るのよ」
「お世話になりました、クラリーのお母さん。ご飯、とても美味しかったです。ありがとうございました」
「どういたしましてナナシュちゃん。みんなもまたいつでも遊びに来てね」
「いいんですかっ。ボクまた絶対来ますよ!」
「チル、クラリーのお母さんになんでそんなに懐いてるのよ……。あ、あのっ。あたしも、お世話になりました。また、遊びにきますっ」
「サキちゃんどうしてそんなに顔を赤くしてるの? ――クラリーちゃんのお母さん! いっぱいお世話になりました!」
「アイリンちゃんは元気な子ね。みんな、これからもうちの子と仲良くしてね」
母さんが四人の方を向いてそう言うと、はーいと返事が返ってくる。
……なんか恥ずかしいな。
私も外に出て玄関先まで見送ろうとすると、最初に道に出たアイリンがクルッと振り返る。
「みんな! 今日はほんっっっとおおぉぉに、合宿してくれてありがとう!」
「なによ急に。お礼ならさっきも聞いたわよ」
「ボクたちも楽しかったし、そんな改まって言わなくてもいいのに」
「そうですよ。私も、属性魔法科の授業内容が聞けてとってもためになったよ」
「……私も。色々と勉強になったし……色んなこともあって、楽しかったよ」
アイリンはみんなの言葉を聞いて、とびきりの笑顔を見せる。
そして、拳をぐっと空に掲げ――
「わたし! 試験最終日までにあの未分類魔法を改良して、みんなに見せるからね!」
――高らかに、宣言するのだった。
「うん、期待してる」
未分類魔法クラフト部
クラフト8「カルテルト家の秘密」
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