35「おばあちゃん」クランリーテ


「はぁ~~素晴らしかったわ、アスフィール先生の講義!」

「すごく勉強になった。特に、イメージのこと」

「そうね。自分の中のイメージを増やして、イメージを広げていく。そして」

「新しい魔法を創る……」


 講義が終わり、ちょうど昼休み。私とサキは廊下を歩きながらその内容について話し合っていた。

 本当に、とても刺激になった。今すぐにでも試したいことがいっぱいできた。

 最後の魔法……私にもできるかな?


「それで? 教えてもらうわよ、アイリン。どういうことなの」

「――って、そうだ! アスフィール先生がおばあちゃんって本当なの?」


 私たちの後ろを黙っていたアイリン。振り返ると、びくっとして気まずそうな顔になる。


「どういうことって言われても、そういうことだよ~……」

「まぁそうなんでしょうけど……ねぇ?」

「うん。教えてくれたらよかったのに」


 前にこっちの方におばあちゃんが住んでいると言っていたけど、それがまさかアスフィール先生のことだったなんて。


「わたしもね、おばあちゃんがすごい人だってわかってるよ。尊敬もしてる。でもね、なんかね、恥ずかしくって。さっきの講義も恥ずかしくてしょうがなかったんだよ」


 しゅんとするアイリン。サキは怪訝そうに、


「別に恥ずかしがることないじゃない。胸を張りなさいよ」

「……私はアイリンの気持ち、ちょっとわかるかも」


 身近な人が学校の教壇に立って、その人の講義を受けるとなったら……なんか恥ずかしいかも。

 私はたちが教壇に並ぶ姿を想像してしまい、思わず顔を手で覆った。


「おばあちゃん、いつもは風の塔の研究室に籠もりっぱなしなんだ。昔はあちこち行ってたみたいだけどね。講義も滅多にしないのに……今日いきなりするって聞いてビックリしたよ」

「アイリンがこの学校を受けたの、おばあちゃんがいるから?」

「そうとも言うかなぁ。おばあちゃんに勧められたんだ。受けてみたらって。属性魔法苦手だし、自信無かったけど……受かっちゃって」

「なるほど……」


 ……あれ? それってもしかして。

 私がちょっと嫌な想像をしてしまったところで、不意に後ろから声がかかる。


「勘違いしないでね? アイリンちゃんはちゃんと試験を通ったのよ」

「あ……」


 その声に、私とサキは慌てて振り返る。


「「アスフィール先生!」」

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