22「どうしよう!?」アイリン


 わたしは属性魔法が苦手だった。

 どうしても、どーしても、勝手に火が出たり風が出たりするイメージができなくて。

 だから小学校の時から落ちこぼれって言われてきた。友だちもなかなかできなかった。四属性魔法の研究で栄えているこのターヤ王国に、わたしの居場所は無かったんだ。


 属性魔法がダメな代わりに、わたしは未分類魔法と呼ばれる必要のない魔法が得意だった。こんな魔法が得意でも意味がない。わたしは、必要ない……。

 そんな風に思ったこともある。でも、


『アイリンちゃん。未分類魔法はね、確かに必要ないとされてるよ。でもね、そこには可能性が眠っているんだよ。だからね、下を向かないで。自分の得意な魔法を伸すことを、考えてごらん』


 おばあちゃんが言ってくれた言葉に、わたしは救われた。


 わたしの魔法をわかってくれるのは、おばあちゃんとお父さんとお母さんしかいない。

 そう、思っていたけど。

 クラリーちゃんが、すごいって言ってくれた。


 ……この学校に来るの最初は気が進まなかったんだけど。

 今は入ってよかったって思う。クラリーちゃんのおかげでね。


 そのクラリーちゃんが、わたしに属性魔法を教えようと色々考えてくれている。

 ぜったい期待に答えなきゃ!



「じゃあさっきと同じで、炎を――」

「……? クラリーちゃん? クラリーちゃん!?」


 魔法を使おうとしたクラリーちゃんが、突然自分の胸を掴んで苦しみだした。ぐらりと身体が揺れて、その場に蹲ってしまう。

 わたしは慌ててクラリーちゃんに駆け寄って身体を支える。


「クラリーちゃん? 大丈夫? 顔が真っ青……! どうして? さっきまで、ぜんぜん……」

「く……あ……」

「喋れないの? うぅ、クラリーちゃんなにか言いたそうなのに……」


 震える指で、クラリーちゃんが風の塔を指す。……部室?


「く、す……り」

「薬……? クラリーちゃん、病気なの? 部室に薬があるんだね? 任せて、取ってくるよ!! 鞄の中かな? あ、それよりもまず先生を呼んだ方がいいのかな!?」


 うわあああ、どうしよう!?


 わたしはパニックになりかけていた。

 薬を取りに行くにしても、クラリーちゃんをこのままにしておけないよね? やっぱりまず誰か呼ばなきゃ! ここから離れずに――どうやって?


「あ……そうだ!」


 わたしはクラリーちゃんを支えながら、手のひらに黒い箱を創り出す。


「ボイスボックス! ……だれか来て! おねがい、助けて!」


 外には誰もいない。校舎の中の誰かに、この声が届けば……。


「はうっ!? ど、どこから声が? 誰です? 外ですか?」


 届いた! すぐ近くの校舎の窓から女の子の声が聞こえた。わたしは慌てて答える。


「こっち! 中庭です! お願い、来て!」

「中庭……誰か、倒れています? すぐに行くね」


 顔は見えなかったけど、窓からこっちを覗いて状況を確認してくれたみたいだ。

 よかった~……。あ、来てもらうんじゃなくて、先生を呼んでもらった方がよかったかな?

 そんなことを考えている間に、校舎から女の子が飛び出してきた。そして、


「どうしました、怪我人ですか!? 私は――あ……そこに倒れているの、クラリー?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る