19「ふたりからみんなに」クランリーテ
「というわけでね。このガラン石を使った宝石を持っていれば、遠くの人と話すことができるんだよ」
部室の端と端で、アイリンとサキが宝石を持って会話をしてみせる。近いから普通に声は聞こえるけど、僅かにズレて宝石からも声が出ているのがわかる。
「ほおおおおおおお!? なにこれ! すっごいじゃん! うわぁ! 遺跡探索で超欲しいやつだー! ていうかちょうだい!」
なるほど確かに。遺跡で仲間同士が持っていれば、離れていても連絡を取り合いながら調査ができる。
「だめだよーチルちゃん。まだ未完成だからね。完成したらいいよ。だから……」
「わかった! ボクも協力するよ! スマート鉱石でもなんでも取ってくるから!」
「やった! ありがとう! あ、でも完成するまでこの魔法のこと誰にも秘密にして欲しいんだ」
「秘密に? いいよいよ。秘密の魔法研究! いいね、楽しそう!」
話が早くて楽だな、チルトは。
私は椅子に深く座って、部室のみんなを眺める。
アイリン、サキ、チルト。これで四人。……これから騒がしくなりそうだ。
……さっきのアイリン。
チルトを研究の仲間に入れるかどうか、どうして私に聞いたんだろう?
たぶんアイリンは、チルトを仲間に入れたくてしょうがなかったはず。スマート鉱石は喉から手が出るほど欲しそうだったし、今後のことも考えれば研究に欠かせない存在だ。
もともと補習仲間で仲良くなっていたみたいだし、サキの幼馴染みでもある。信用に関してはまったく問題なかった。……それでもアイリンは返事を一旦止めて、私に相談してきた。
……どうして、だろう? でも……
「ねぇクラリーちゃん! このスマート鉱石があればね、今までの三倍は魔法を大きく複雑にできるんだよ。あぁでも、あんまり大きくしすぎてもダメなんだ。バランスが難しいの。でもとにかくまずはこれを加工しなくっちゃ! うう~やることがいっぱいだよクラリーちゃん! これから大変だぁ、どうしよう!?」
「……そうだね。協力できることはするからさ。がんばっていこう、アイリン」
「うん! がんばろうね! クラリーちゃん!」
どうしてか、わからなかったけど。
嬉しそうに話すアイリンを見て、まぁいっか、と思う。
……あの時、私に聞いてくれたこと。ちょっと嬉しかったから。
それだけで。まぁいっか。
未分類魔法クラフト部
クラフト3「冒険科と魔剣の秘密」
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