クラフト3 冒険科と魔剣の秘密

14「ガラン石」クランリーテ


「ガラン石ね。魔法道具には向かなくて、特に使い道も無いからゴミ石って呼ばれてるのよ。一応マナを込められるから名前が付いてるけど」

「そこらへんに転がってるからね~。わたしは大助かりだったけど」

「マナを増幅したらダメなのよね? 例の、魔法の内容を込めるのって。だからガラン石に目を付けたと」

「うんうん! ちょうどいい石がないかなぁって思ってた時に、小さい頃ガラン石を削って宝石にする遊びをしてたの思い出して」

「あ、それあたしもやったわ」


「…………」


 放課後、未分類魔法クラフト部の部室。

 アイリンとサキが、石についての話に花を咲かせていた。


 遠く離れた人と会話ができる魔法で使う白い宝石、ガラン石。

 これを目印に離れた相手に声を飛ばす。その魔法が、この石に込められている。

 他の石だと取り込んだマナを増幅させてしまい上手くいかない。多すぎるマナが宝石の中の魔法を崩してしまい、発動しなくなる……らしい。

 アイリン曰く、


『水の入った小さいカップに蓋をして、魔法で水の量を倍にしたらカップが破裂しちゃうでしょ? そんな感じだよ~』


 その説明に、一応納得したけど……。

 正直、なにがどうしてそうなるのか、理論や技術はまったく理解できていない。


 サキも言っていたけど、やってることは魔剣のそれに近い。

 古代遺跡から見付かる魔剣は、マナを込めるだけで特殊な魔法が発動する。未だに仕組みがわかっていないアーティファクト。

 アイリンの魔法は、その解明にも繋がっているかもしれない。

 ……つくづく、とんでもない魔法だ。


(それにしても……)


 私はチラッと、二人に視線を向ける。


「表面はゴツゴツした普通の石なのに、削ると中は真っ白なのよね」

「綺麗だよね~。子供の頃はみんな持ってたよ」

「…………」


 まずい。話についていけない。

 ガラン石を削って宝石にするなんて、そんな遊びしたことないよ?

 そもそも私は鉱石とかの知識に乏しい。逆にサキは魔法道具作成が得意なだけあってかなり詳しい。意外とアイリンと話が合うみたいだ。


(私は、属性魔法しかできない……。アイリンの研究に役立てるの?)


 ……不安になってきた。


「でもね~、これ以上のことをしようと思ったら、他の石を見付けないとダメかも」

「これ以上って? どういう風にしたいのよ」

「……それは、私も聞いておきたいかも」


 やっと入り込めそうな話になり、私は身を乗り出す。


「えっとね、こないだ思ったんだけど……届いた声が、本人にしか聞こえないようにしたいの」

「こないだ? それってもしかして、あたしが……」

「あぁ、サキに魔法がバレた時」

「うっ……」


 サキが気まずそうに目を逸らした。


「あっ、いいんだよサキちゃん。おかげで周りの人に聞こえちゃうっていう問題に気付けたから!」

「べ、別に気にしてないわよ。でも周りに聞こえないようにするのって大変なんじゃない?」

「そうなんだよ~。色々試してるんだけど、ガラン石だとどうしてもダメで」

「難しい問題ね。魔法道具とは勝手が違うみたいだし……」

「なるほど……そっか」


 話しに加わったものの、やっぱり私では手に負えないものだった。他の石と言っても、私は詳しくない。サキも難しいと言って考え込んで……いたけど、すぐにスッと顔を上げる。


「……要は、マナを増幅させない石があればいいのよね?」

「うん~。それでいてガラン石よりもマナを込められないとダメなんだ。少しでいいんだけど……」

「サキ、なにか思い付いたの?」

「ちょっとね」


 サキは椅子から立ち上がると、アイリンをじっと見る。


「ねぇアイリン。紹介したい子がいるんだけど。きっとあなたの研究の役に立つわ」

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