9「2位」サキ
あたしの名前はサキ・ソウエンカ。ターヤ中央区高等魔法学校の一年生。
四属性魔法の実技試験でトップ……にはならず、2位。
トップは隣のクラスのクランリーテ・カルテルト。噂には聞いていたけど、やっぱりとんでもない天才だった。
だからといって、このまま2位に甘んじるつもりはない。いつか! ぜったいに! あたしがトップになってやるんだから! 見てなさいクランリーテ!
……というわけで、クランリーテの才能の秘密を探るため、彼女を見張っていたのだけど……。
どうも部活に入っているらしいじゃない。
知らなかった。あたしと同じで帰宅部かと思ったのに。
真っ直ぐ帰って一人でこっそり特訓してるんじゃないの? 才能は努力の結果です! というのを期待していたのに。部活なんてしてる余裕あるの?
いったいどんな部活かと後をつけたけど、彼女が入った部屋のドアには名前がかかっていなかった。
しばらくすると、ブラウンカラーの女の子が部屋に入っていった。あの子、クランリーテと同じ部員なのね……。気になるわ。
聞き耳を立てようと近付くと、扉が開いてクランリーテが出てきた。あたしは慌てて逃げた。危ない危ない。彼女を見張っていたなんて、バレてはいけない。
その後もクランリーテの後をつけて行くと……時々ブツブツとつぶやきながら、水の塔の方へ向かっていった。
……なんか、怪しい。あんな風に独り言を言うタイプには見えなかったけど。
そして、水の塔の一番奥に辿り着く。
すると今度はもう堂々と独り言を始めた。
ううん、別の声も聞こえる。他に誰もいないのに?
彼女はいったい――。
「……ねぇ、クランリーテ。あなた、なにしてるのよ……」
「……あっ」
堪えきれず、あたしはついにクランリーテに話しかけてしまった。
「えっと……」
狼狽えるクランリーテ。なにかを握りしめるように両手を胸に当てた姿は……正直、可愛らしい。透き通るような水色のショートヘアーで中性的なイメージがあり、クールな印象の彼女だけど、そのギャップのせいか女の子っぽい仕草はとても可愛らしく見えるからずるい。
……って、今はそうじゃなくて。
「な、なにか言いなさいよ」
「うん……。その」
クランリーテがあたしをじっと見て、小さな口を開いていく。そして、
「誰、だっけ?」
「なっ――――!!!!」
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