6「ようこそ!」クランリーテ


「未分類魔法クラフト部?」

「うん! 未分類魔法を創り出す部活だよ! ……部員はまだ、わたしひとりなんだけど」


 名前の通りの部活だった。なるほど、ここは部室だ。

 部員が一人だからか、彼女の私室というか研究室みたいになってるけど。


「ね、クランリーテさん!」

「うん?」


 ぎゅっと、アイリンが私の手を取る。


「未分類魔法クラフト部に、入りませんか?」

「えっ……えぇ? 私が?」


 まさかの勧誘にたじろいでしまう。


 未分類魔法を創り出す。

 それはつまり、新しい魔法を創り出すという意味でもある。

 実際アイリンは、離れたところにいる人と会話をする魔法を創ろうとしている。


 未分類魔法には、可能性が眠っている。

 だとしたら…………。


「ね、どうかな?」

「…………」


 アイリンは授業で教わる魔法はてんでダメで、簡単な魔法さえ失敗してしまう。

 でもそれは教わるのが四属性魔法だったから。

 彼女は未分類魔法の才能に長けているんだ。


 きっと、その才能はこれまで認められてこなかったと思う。

 必要の無い、未分類魔法。それがどれだけすごくても、誰にも気付いてもらえない。


 だから……なのかな。

 私がすごいと言ったから。だからこんなに――嬉しそうな顔で話をするの?


(未分類魔法クラフト部、か……)


「……いいよ。入部する」

「ほ……ほんと? ほんとにいいの!?」

「うん。面白そうだし。それに、この宝石の魔法が完成するところ、見てみたくなったから」

「ありがとー! よかった、実はこの会話する魔法、一人だと実験できなくて困ってたんだ」

「そうなの? って、それはそうだ」


 よくここまで一人で創れたなぁ……。

 完成するまで誰にも秘密にするって言ってたけど、実験もできないしどうするつもりだったんだろ。


「ほんとうにありがとう、クランリーテさん!」

「ん……あのさ、さんとか付けなくていいよ。みんなにはクラリーって呼ばれてるから、それで」

「あ、そうだね。じゃあ……クラリーちゃん! わたしのこともアイリンでいいからね!」

「クラリー、ちゃん……。まぁいっか。アイリン、これからよろしく」

「うん! こちらこそ、よろしくね!」




未分類魔法クラフト部

クラフト1「未分類魔法との出会い」




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