第15話 天才児
昼食をとり、父さんと母さんと一緒に裏山に来た。魔術の鍛錬のためだ。
母さんは魔術はからっきしだそうだが、気になるのでついてきたらしい。
「シリウス、まずどんな魔法が使える?」
「えーと、『初級光魔術』『中級火魔術』『中級水魔術』『中級風魔術』『中級土魔術』『中級氷魔術』『中級雷魔術』が使えるよ」
「あー…… っと、耳が遠くなったかな…… ほぼ全ての基本属性の中級が使えるように聞こえたような……」
「あっ!! ごめんなさい、中級はまだ少ししか使えないんだ…… 魔術書を読み解くのに中々時間がかかっちゃって……」
「お、おう…… と、とりあえず、得意な魔術とかあるよな?いくつか使ってみてくれないか?」
「分かった! じゃあそこの木に撃つね!」
改めて、誰かに自分の魔術を披露するのに緊張してきた……
深呼吸し、集中を高める。よし、行くぞ!
『
『
そして空中の丸太を、槍系魔術により貫く。僕の使える魔術の中では、攻撃力重視の物を披露してみた。
「「…………」」
二人共黙ってないで何か言ってほしい…… レベルの高い父さんから見たら子どものお遊びみたいな魔術だったからガッカリしたのだろうか?
「複数属性の中級魔術を並列展開して、しかもこの精度と威力か…… 鍛えがいがありそうだな…… 威力的に、俺と同じ雷属性に適性がありそうだな」
「父さんも雷属性が得意なの?」
「あぁ、雷属性と時空属性が得意だ。魔術適性は遺伝しやすいから、シリウスにも時空属性の適性があるかもしれないな」
「時空属性? 魔術書には載ってなかったよね。まさか転移とかできたりするの?」
「あぁ、父さんのオリジナル魔術だからな、魔術書には載っていない。転移も可能だけど、高位の魔石で補助した上に魔力を大量に消費するからそう簡単に使える物じゃないんだ」
「そんな魔術をオリジナルで創るなんて…… 父さん凄すぎない?」
「はっはっは! 大したことはないさ! そもそも魔術師は、オリジナル魔術を創り出して初めて上級魔術師と言われるからな。一人前になるには必ず通る道さ」
戦闘に転移を使えれば強すぎると思ったけど、流石にそこまではできなさそうだな……
しかし、やっぱり時空魔術を創ったってとんでもないことだと思うんだけど…… この世界では普通なのかな? 僕もオリジナル魔術を創って一人前になれる日が来るのだろうか。
「剣だけでなく魔術も才能があったなんて…… 魔術に負けないよう剣もしっかりと鍛えてあげないとね…… うふふ……」
母さんが不敵な笑みを浮かべている、怖い。
「シリウスはきちんと魔術理論を理解して詠唱を破棄しているようだし、魔術書にある属性魔術を広く学んでいるから少し教えれば成長は早いだろう。最近の魔術師はすぐ詠唱に頼るが、詠唱なんて隙が大きいし威力も燃費も悪いからな。これからも詠唱は破棄できるように魔術理論をしっかり理解していくんだぞ。そうすれば上級魔術修得なんてすぐさ」
「はい! 頑張ります!」
その後、父さんに魔術の手ほどきを受け三人で家に帰ると、家の前に村の狩人衆の人が一人待機していた。
「どうしたの?」
狩人衆のリーダーである母さんが話しかける。
「ミラさん、お休みの所申し訳ありませんが本日の報告に来ました。本日も村内にゴブリンの出現はありませんでした。探索については村の警護を優先しているため、中々進んでおりません。ゴブリンマジシャンに隠蔽されていると思われるため、少ない高位の探索スキル持ちでないと発見できず、探索の進みが遅い状態です」
「そう…… 報告ありがとう。探索速度は仕方がないわ、村の安全が優先ですもの。明日は私も探索に参加するわ」
「はい、ありがとうございます。それでは失礼します」
ゴブリンの巣の探索は中々芳しくないようだ。『隠密』スキルを持っている僕ならスキルを中和して見つけられるかも知れないけど…… 探索には参加させてくれないだろうなぁ。
仮に見つけたとしてもゴブリンマジシャンやゴブリンキングの戦闘力は未知数だし、逆に見つかったら僕では勝てない可能性が高いと思うので、危険だろう。
歯がゆいけどゴブリンの討伐は母さん達に任せ、僕は鍛錬を積もう。
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