第14話 親心

 目を覚ますと、いつもの天井が目に入った。

 あれ、何してたんだっけ……


 そうだ! ゴブリンと戦って、最後に力を使い切ってぶっ倒れたんだった。

 ゴブリンリーダーは、確か何かに消し飛ばされていた記憶がある。

 そして僕がここに寝ているということは、誰かに助けられたのか。皆は大丈夫だったんだろうか……

 皆の安否が気になりリビングへと行くと、父さんと母さんが話をしていた。


「シリウス!起きたのね、気分はどう?」


「大丈夫だよ。それよりゴブリンはどうなったの? 皆は?」


「落ち着け、今村の中にゴブリンはいない。皆は無事だ。それより、話がある。座りなさい」


「はい……」


 とりあえず皆が無事で良かった。

 しかし話って…… やっぱりゴブリンと戦ったのバレたよな…… ぶっ倒れたし……


「賢いお前のことだ、俺たちが言いたいことは分かっているだろう。……どうやって魔術を身に着けた?その年でゴブリンリーダーを倒すほどだ、誤魔化しは聞かんぞ」


「気力の扱いもかなりのものね。少なくとも武器に気を纏わせられないとあんなナマクラでゴブリンを両断することなんてできないもの」


 ダメだ、父さんも母さんも洞察力が半端ないから、変に嘘をついてもすぐバレそうだ。

 ある程度正直に話すしかないな……


「魔術は、父さんの部屋にある魔術書を読んで、勝手に身に着けました。気力は、毎日薪割りをしている内に扱えるようになりました」


「それだけじゃないだろう……? ただ魔術や気力を身に着けただけでは、あれだけのゴブリンを撃退することは難しい。シリウス、裏山にでも行っていたな?」


「……ごめんなさい……」



「反省はしているようだな…… しかし、どうしたものか……」


「この子は私達が思っていたより、早く成長していたようね。あなた、もうこれだけの力を身に着けているこの子を抑えておくのは、もう無理よ」


「むぅ…… シリウス、お前はどうしたいんだ」


「僕は…… 強くなりたい。母さんの狩りの手伝いもしたいし、最近は、いつかは外の世界を見てみたいって思うんだ。……ダメかな……?」



「……ふぅ ……大人しい子だと思っていたが、やはり俺たちの子か……」


「あなた、私はシリウスに剣や狩りを教えるわ、いいでしょ?」


「分かった。シリウス、魔術は俺が教える。危ないからな。あと、これからは勝手に危ない所には行くな。俺たちに言ってからにしなさい、いいな?」


「父さん、母さん…… ありがとう……!」


「明日からはビシバシ鍛えちゃうからね! とりあえず今日はもう休みなさい、まだ疲れが取れていない顔してるわよ」



 そうして僕は自室に戻ってきた。

 明日から父さんと母さんに鍛えてもらえる!!やった!!

 そういえばゴブリンリーダーを倒したけど、どれくらい成長してるかな?ふと気になり、久々に『洞察』でステータスを確認する。


【名前】シリウス・アステール

【性別】男

【年齢】6歳

【種族】人族

【ステータス】

体力:400

気力:2500

精神力:8000

魔力:3000

【スキル】

『超耐性』『洞察』『解析』『操気』『隠密』『魔力操作』『魔力感知』『詠唱破棄』『初級光魔術』『中級火魔術』『中級水魔術』『中級風魔術』『中級土魔術』『中級氷魔術』『中級雷魔術』


 うん、全体的に少しだけステータスが上昇してるな。

 しかし改めて、他ステータスに比べて体力が低い…… 道理でゴブリンリーダーに力負けするわけだ。

 山で鍛えていたとはいえ、威力が高いから魔物とはほとんど魔術で戦ってたからなぁ。

 でも明日からは母さんに鍛えてもらえるし、頑張って体力も鍛えよう!


 翌朝、僕は母さんと裏庭に来ていた。

 母さんに鍛えてもらえるのが楽しみで、昨日は全然寝付けなかった、眠い。


「じゃあまずは、薪割りをやってみせて。勿論気を纏ってね」


「分かった!」



 淀み無く斧に気力を纏わせてテンポよく薪を割っていくシリウス。

 操気のスムーズさは、もはや一般的な冒険者と遜色ないレベルね。

 6歳でこの才能…… 将来が楽しみだわ……


「終わったよ! 次はどうすればいい?」


 これだけの薪を割ったのに、平然としてるわね…… 予想以上の気力の内包量だわ。

 薪割りだけで終わるかと思ったのに…… なら!!


 私はシリウスに木剣を手渡す。


「これで私に打ち込んできなさい。ゴブリンリーダーと戦ったんだもの、使い方は分かるわよね? 気力はいくらでも使ってもいいわ、全力で来なさい」



 母さんに木剣を手渡される。

 懐かしい感触だ…… 学生時代に近くの道場に通っていたけれど、社会人になってからとこの体になってからを合わせると十年以上まともに剣を振っていなかったので、ぎこちない感じだ。


 母さんは『洞察』が通じないほど、力量が離れた相手だ。これなら僕程度が全力で打ち込んでも、本当に全く歯がたたないだろう。

 これから鍛えてもらうんだ、出し惜しみはしない。僕の全力を知ってもらう……!


 学生時代を思い出しながら、木剣を前世には幾度と繰り返した納刀の構えを取る。

 母さんは一瞬怪訝な顔をしたが、すぐに中段に構えこちらを窺っている。

 一切の隙がない、美しいとすら感じる構えだ。


 母さんに向かって一歩、ゆっくりと歩み出す。


「ハァッ!!」


 二歩目を踏み出す瞬間、僕は全力で気力を纏い、抜刀と同時に母さんの胴を斬りつける。

 当たる! と思った瞬間、僕の木剣と母さんの体の間に、母さんの木剣が割り込まれていた。

 そしてそのまま僕の攻撃は難なく弾き返された。


「グッ!」


 あまりの威力に手が痺れている。けど、母さんも若干驚いた顔をしている。

 相手に落ち着く隙を与えては駄目だ……!

 僕は弾き返された勢いを利用してそのまま回転し、母さんの足へ斬りつけるが、やはり防がれる。

 そのまま連撃を放ち続けるが、木剣によって全て防がれていた。


「はぁ…… はぁ……」


「まだ気力には余裕があるみたいね…… じゃあ次は私の攻撃を防いでみせなさい」


 そういうと母さんが高速で打ち込んできた、僕が防げるか防げないかギリギリの速さだ。

 僕は必死に木剣で攻撃を受け続けた。

 しかし、幾度か攻撃を受けたところで握力が弱まり、木剣を弾き飛ばされた。



 変な構えをすると思ったら、かなりの速さで打ち込んできたシリウス。

 咄嗟に木剣で受け止め、弾き返す。筋力はまだ未発達だけど、それを補う気力の量でそこそこの重さの剣撃だった。

 この子、本当に6歳なの……!?


 その後も気力が衰えることなく、剣撃を打ち込んでくる。この子の限界を見てみたい……

 そう思い、今度は私からギリギリ防げるであろう速度と威力で剣撃を放つ。

 そして幾度か攻撃を防がせたところで、シリウスの手から木剣が離れた。


 まだ教える前からこの才能…… この子は、一流の剣士になる才能を秘めているわ!! ワクワクしてきた……!


「あなたの力は大体分かったわ。あなたは成長期、これからドンドン強くなるわ、私が強くしてあげる。まず第一に、筋力と体力をつけるトレーニングをしていきましょう。あとは私との模擬戦で気力と技術を鍛えていきましょ」


「はい!! お願いします!!」


 ふふふ…… シリウス、立派な剣士にしてあげるからね……!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます