少年期編

第7話 教会

 僕が産まれてから、もうすぐ六年になる。

 僕は日々、薪割りや畑仕事、家事の手伝いなどの合間に、前世の道場で行っていた自己鍛錬を積み、また時々父さんの部屋に忍び込み魔術書を読み漁っていた。


 あれから初級魔術はマスターし、今は中級魔術書を読み進めている。

 中級魔術は教本がないため、魔術書を読み解き術式を解析しながら試行錯誤しているため、中々進んではいない。

 父さんに教えてもらえれば習得も早いんだろうけどなぁ……


 父さんと母さんには狩りの手伝いをしたいから剣と魔術を教えて欲しいと言っているのだが、まだ早い、危ないと言われている。

 ……実はこっそり森で弱い魔物を狩って経験を積んでいるんだけど、これは秘密だ。



 ある晩、父さんに呼び出されてリビングに来た。

 まさか…… バレたんじゃ……


「シリウスももうすぐ6歳になる、早いもんだ…… 知っているかも知れないが、この村には教会があってな、村の子どもはそこで色々なことを学ぶんだ。色々な本を読んでるシリウスは既に知ってることも沢山あると思うが、同い年の友達もできるし楽しいと思うんだ。どうだ、行ってみないか?」


「お隣のララちゃんも同い年だから一緒に通うことになるわね。覚えてるかしら? お隣さんもシリウスが一緒なら安心だって言ってるのよ〜」


 小学校みたいなものかな。

 この世界の知識をつけるに越したことはないし、楽しそうだ。


「うん、行ってみたい! いつから?」


「おぉ、そうかそうか…… 神父様には明日伝えるから、来週からでも通えるだろう。明日、神父様に挨拶がてら必要なものを買いに行こう」


「はーい!」



 翌朝、朝食をとったあと、父さんと家を出る。

 家の前には、軽くウェーブがかったミルクティー色の髪で、ほんわかとした印象の女の子が立っている。お隣さんのララちゃんだ。

 今日は、父さんが僕と一緒に挨拶に連れていくそうだ。


 ララちゃんとは、親と一緒に何回か顔を見たことがある程度で、まともに会話をしたことはなかった。どんな子なんだろうか。


「こ、こんにちはっ! レグルスさん、シリウスくん、今日はよろしくお願いしまひゅっ!!」


 ……噛んだ。

 恥ずかしそうに俯くララちゃん。


「はい、こんにちは。今日はよろしくな。これからシリウスと仲良くしてくれると嬉しい」


「ララちゃん、こちらこそよろしくお願いします」


 ララちゃんがこくこくと頷く。


 道中、ララちゃんと話しながら歩く。


「シ、シリウスくんはお家でいつも何してるの?」


「えーっと、本読んだり、家事の手伝いしたり……かなぁ。ララちゃんは何してるの?」


 まさか鍛錬だとかは言えないので、無難に返しておく。


「ほぇー…… 私も絵本好きなの! 『ネココのおうち』が一番好き! シリウスくん読んだことある??」


「へぇー、その本は初めて聞いたよ。今度読んでみるね!」


「う、うん! 今日帰ったら貸してあげるね! えへへ」


「ありがとう、楽しみにしてるね」


 そんな取り留めのない話をしていると、すぐに教会に到着した。

 30代前半くらいの穏やかな顔立ちの金髪男性が出迎えてくれた。


「神父様、こんにちは。この間話しました、うちの息子とロジャーの娘さんです。二人共、この方が教会で色々と教えてくれる神父様だ」


「はじめまして、レグルスの息子のシリウスと申します。よろしくお願いします」


「は、はじめまして! ララです! よろしくお願いしますっ!」


「はじめまして、神父のフレッドです。二人共これからよろしくお願いしますね」


「「よろしくお願いします!」」


「ふふ…… シリウスくんもララちゃんも礼儀正しい良い子ですね。レグルスさん、お二人をお預かりするのは来週からでよろしかったですか?」


「はい、来週からでよろしくお願いします」


 そうして僕らは教会に持っていく黒板とチョーク等を購入し、帰路についた。

 家についたらララちゃんが『ネココのおうち』を貸してくれた。可愛い黒猫のような魔物が表紙になっている。


 子ども用絵本だと侮っていたが良作品で、すごく癒された。続編が気になる。

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