第109話 東京マジ卍會

「・・・って訳だ!ヒマワリ達が異世界人だと気付かれたら、全員強制送還されるから異能力は、禁止!わかったな!!」

改めてヒマワリ達に状況を伝える


「ひ、引野・・・引野っ!!?」

ヒマワリが怯えた声をあげる

「な、何ぃ・・・!?なんなの?───この人達は!!?」

「ヒマワリ、ウチの後ろに・・・!!」

通行人の女子高生が握手や写真撮影を求め、人集りができる


・・・マ、マズい!

やはり、見られてたか!?


なんとか誤魔化さないと・・・


「今のマジック!凄かったです!!これは、何の撮影ですか?」


・・・え


「綺麗な人、モデルさんですね~!海外の方ですか~!!」


・・・・・・ん?


「引野、この方々は、一体何語を喋ってるんですか?」

「ヨミ、今は、ふざけている場合じゃないんだ!早口じゃないんだから何言ってるかぐらいわかるだろ?」

「ねぇ~引野・・・あたしもみんなが何言ってるかわかんないんだけど・・・」


・・・・・・


───そうか!


駆け込み乗車で転送して来たヒマワリ達には、マカオの加護も施しも受けてないから、この世界の言語が理解できないんだ!

だからヒマワリ達の異世界語も外国語のように聞こえてるんだな!!


この状況は、好都合だ!

異能力を何かのトリックだと思い、ヒマワリ達を外国人と勘違いしてくれているんだから・・・


この状況に乗らない手は、ない!!


「すみません、ご迷惑お掛けしてます!アクションシーンの撮影してました!!直ぐに引き上げまーす!!」

とりあえず この場は、ヒマワリ達を芸能人ということにして立ち去ろう


「オイ!私の意見は、無視してヒマワリの話は、信じた訳を聞かせてもらおうか?返答次第でアクションシーンを始めますよ!!」

「「「───おおぉぉーーー!!!」」」

ファイティングポーズを取ったヨミに女子高生達が歓声を上げる


「フフフ・・・皆さん、見ていて下さい!私がこの男をケチャケチャにしてやります!!」

「何テンション上がってんだよ!遊んでないで行くぞ!!俺の家は、ここの通りを真っ直ぐ行って左に曲がった先にある赤い屋根の大きなお家だ・・・!!」

シルバニアファミリーでしか見ない家だからわかるだろう


「ねーねー、ずっと気になってたんだけど・・・みんなが持ってる。あの小さな板みたいなのって何なの・・・!?」

「ウチもそれ思ってた!何かこっちに向けて狙ってないか?」

エトムとヒマワリが携帯電話スマホに興味を示し、この場から離れようとしない


「あれは、ヒマワリ達の写真や動画を撮ってるんだよ!まー言ってもわからないと思うが・・・お前らの姿形をあの機械の中に記憶させて保存してるんだよ!!」

「「「・・・・・・ふぅ~ん」」」

全く興味なさそうに返事をする。


「何してる?こんな道の真ん中で!!」

パトカーが止まり、警察官が駆け寄ってくる


・・・ん?

なんだなんだ・・・


「また、悪さしやがって!暴走族、東京とうきょうマジ卍會まんじかい!!今日こそ補導してやる!!」


───暴走族、東京マジ卍會っっ!!?


・・・・・・あっ!

さっきエトムが絡んでいたバイク集団のことか!?


それなら、だいぶ前に離れたから、もう追い付けない先にいるだろう!!


「いました!東京マジ卍會の幹部格です!!」


・・・な、何ぃ!?

このギャラリーの中に暴走族の幹部が紛れ込んでいたのか・・・


・・・どこだ?

どこのどいつだ・・・?


折角だから顔を拝んでおこう!!


「この金髪に短ランの格好した旗持ち!恐らく東京マジ卍會の創設メンバーだ!!」


───ここのコイツか!!


めちゃくちゃ顔見知りじゃねーか!!


「エトム何やってんだよ!その旗、早く捨てろ!!」

「嫌や!これは、この世界に来て初めての戦利品やから持って帰るねん!!」

引野が旗を奪い取ろうとするがエトムの方が腕力が強いので取り上げれない


・・・コ、コイツ!何でこんな強情なんだ!!


「ま、待って下さい!お巡りさん!!・・・ご、誤解なんです!誤解!!この旗は、拾っただけで・・・僕達は、暴走族じゃないんですよ!!」

・・・そうだ!俺達は、本当に暴走族じゃないんだから正直に言ったら信じてもらえる!!


東京マジ卍會っていう証拠がないんだから・・・!!


「よく、そんな白々しい嘘を平気でつけるなーー!!社会のクズは!!」

「本当です!信じて下さい!!」

「バイクに股がって何言ってやがる!!」


・・・はぁ?

バイク?この警官は、何を言って・・・


「───って、ヨミ何しとんじゃぁぁーーー!!」

「な、何ですか?これは、私が発掘したんですよ!!乗りたければ順番を守りなさい!!」

いつの間にか拾ったバイクの部品に異能力リサイクルを発動させバイクを再生させていたヨミをバイクから引きずり下ろそうとする


「この場にいる者、全員検挙しろぉぉーーー!!」

「「「───ハッ!!!」」」

警官達が一斉に身柄を取り押さえに来る


マズイマズイマズイマズイ・・・!!

この状況は、マズイぞ!!


「ヒマワリ、エトム、ヨミ・・・逃げるぞ!!」

「「「───えっ!!?」」」

ヒマワリ達が驚きの声を上げる


「なんでなんで・・・突然、どうしたの?何かみんな興奮してるけど・・・あたし、握手ぐらいならしてあげても良いよ!!」

「今は、それどころじゃないんだよ!とりあえず走れ!!あの制服を着た人にだけは、絶対捕まるな!!」

「なんでやねん!別に逃げんでも・・・ウチが返り討ちにしたるわ!!」

「止めろ止めろ!国家権力に手を出すな!!」

言葉が解らず状況が掴めていないヒマワリ達を連れて走り出す


このまま、警官に捕まって身元を確認されると異世界人だとバレてしまう!

今は、この場を離れた方が得策だろう!!


「はぐれるなよ!俺について来い!!」

「ひ、引野!よっちゃんが全く違う方向に・・・!!」


・・・え


「おおぉぉーーー!!速い速い速いーーー!!!」

バイクを乗りこなせないヨミが1人逆方向に走って行く


───あのトラブルメーカーめっ!!


とある閑静な住宅街

「・・・見つけた!!」

暗がりの部屋でパソコンを眺めていた男が呟く

「ようやくだ!ようやく見つけたぞ!!場所は、日本!しかも近所だ!!やっぱり俺は、幸運の女神に愛されているぞ・・・!!───フッフフフ・・・!!」

不敵な笑みを浮かべながら部屋を出る

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