第105話 赤ちゃん
「―――ぎゃぁぁぁーー!!・・・な、何だ!この大量の鮫は!?」
突如、襲い掛かって来た雨水で出来た鮫の大群が引野達を逃がさないように弧を描きながら空中を泳ぎ回り包囲する
「これは、カサの異能力!残りの雨水を使い仕留めに来やがったな!!」
・・・ど、どうする?
この状況は、非常にマズイ!
エトムとトキド・ケーさんは、疲労困憊で動けない状態!!
唯一、闘えるのは、マッソだけだが逃げることも出来ない俺達を庇いながら、この雨水の鮫の群れと闘うのは、厳しい!!
何か突破口は、ないか!?
「ねーねー!見て見て!!不思議~!!水で出来た鮫が空を泳いでるーー!!」
男性化したヒマワリが現状を理解できずに呑気に雨水の鮫に興味を持ち始める
・・・ク、クソ!
せめてヒマワリの異能力さえ使えたら・・・
「―――って、ヒマワリーー!!・・・あ、危ない!それは、
―――パンっ!
「―――えっ!?」
「・・・危ない?何で、ただの水の塊でしょ!?」
襲い掛かって来た雨水の鮫を意図も簡単にパンチや蹴りで破裂させていく
「「「・・・・・・」」」
ヒマワリの行動にエトム達が仰天し言葉を失う
―――そうかっ!!
今、ヒマワリは、魔力を失い異能力を使えない男性の身体になったから、この世界の男性と同じ肉体!同じ身体能力になった訳だから雨水の鮫を簡単に倒せる訳だ!!
「よしっ!後方の引野達の援護は、俺に任せろ!!ヒマワリは、どんどん蹴散らして行けーー!!」
「―――了解!!」
四方八方、あらゆる方向から襲い掛かって来る雨水の鮫をマッソとヒマワリが協力しながら一匹一匹、撃退していく
「・・・・・・くっ!」
ヒマワリとマッソの方が戦闘能力では、
ケガ人を庇いながら闘う、こっちの方が圧倒的に不利だ!
・・・そ、それに
何よりも・・・
「―――この数、相手は、流石に無理ゲーだろーー!!」
―――パンっ!パンパっパンパンっ!!
「・・・遅くなった!」
「「「―――コドナ先生っ!!!」」」
コドナ先生が一瞬にして雨水の鮫を一掃する
・・・た、助かった~!!
「引野、良くやった!約束通り、頭が千切れるぐらい撫でてやる!!ヨミ、
―――あれ比喩じゃなかったの!?
「いや、いいって!いいって!!ヨミも近寄って来るな!!―――それより風族嬢は!?」
辺りを見回すが風族嬢の姿は、どこにも見当たらない
・・・そうか
コドナ先生は、俺達を助ける為に戻って来てくれたのか・・・!!
「・・・まー・・・今から追えば・・・朝までには、見つけられるかな?」
「ま、待って下さい!コドナ先生!!」
走り出そうとするコドナ先生をマッソが引き止める
「一人で闇雲に探し回るのは、困難です!何か手掛かりや潜伏場所、逃走ルートなどの検討は・・・」
「―――ない!!」
コドナ先生が自信満々に胸を張って答える
・・・だ、だよな!
もし、心当たりがあればコドナ先生が既に壊滅させているよな!!
どうしよう、困ったな・・・!!
「・・・もう、別に良いんじゃない!その・・・敵だっけ?いなくなったんだから問題ないじゃん!!」
静まりきった雰囲気の中、ヒマワリが口を開く
「何言うてんねん!ヒマワリの記憶が・・・」
「そんなのその内、思い出すでしょ!?それにみんな、びしょ濡れだし、風邪引かない内に着替えようよ!!―――ねぇ?」
ヒマワリが気丈にも明るく振る舞い、切り上げようとする
「「「・・・・・・」」」
「―――それじゃ、ダメだ!!」
引野が声を張り上げる
何でヒマワリに気を使わせてしまってるんだ!俺達は!!
今、一番ヒマワリが記憶を失い、不安で心細い筈なのに・・・
これで風族嬢を見失ってしまうとヒマワリの記憶は、二度と戻らないかもしれない!
それに連日、雨の日なんかに襲われたら最悪だ!!
何としてでも今日中に、風族嬢を討たないと・・・!!
「引野、良く言った!」
「・・・コドナ先生!」
引野の頭をポンっと叩く
「安心しろ!後は、俺が絶対に探し出してやる!!大きな石の下や洞穴、家屋の屋根裏とかも見逃さずな!!」
・・・いや、害虫探してんじゃないんだから!!
「私は、今回、全く目立たなかったのでコドナ先生のお手伝いさせて下さい!一緒に行きたいです!!」
ヨミが風族嬢捜索に名乗りを上げる
動機は、不純だが・・・
ヨミも協力してくれるのか・・・
「手分けして探し回っていたら曲がり角などで
・・・そんなラブコメじゃないんだから!!
「―――そうか!そうだよな!!何で気付なかったんだ!!俺には、
興奮した面持ちで声を上げる
「「「・・・・・・?」」」
エトム達が首を傾げる
「・・・
「―――説明は、あと!これ以上、風族嬢と距離を離されたらマッソの怪力でも届かないかもしれない!!」
「・・・?一体どういうことだ!わかるように話せ!!」
マッソが声を荒げて説明を促す
「・・・わ、わかった!話すけど・・・みんな驚かずに聞いてほしい・・・俺の異能力は・・・」
全員に自分の異能力、ラッキースケベの能力を話し始める
・・・とうとう俺の
「・・・ハァ・・・ハァ・・・ここまで、来たら・・・大丈夫だろ・・・!!」
学園から立ち去ったエソラが何十㎞も離れた岩石地帯へと辿り着いた
「コドナの追跡に備えて、
エソラは、全魔力をカサの
「・・・フッフフ・・・待っていろ!コドナめっ!!・・・必ず殺してやる・・・!!」
―――オギャー!
「・・・・・・ん?」
―――オギャー!オギャー!!
「・・・な、何だ!?・・・こんな人気のない岩石地帯に赤子の泣き声!!」
突然、聞こえ始めた赤ちゃんの泣き声にエソラが警戒し辺りを見渡す
―――オギャー!オギャー!!オギャー!!!
「・・・・・・どんどん近付いて来ている!一体どこから・・・―――うわっ!!」
「―――オギャー!オギャー!!」
空から降ってきた赤ちゃんに押し倒され、エソラの胸と胸の間に赤ちゃんが挟まる形になる
「・・・何だ?この赤子は!?」
「―――どうもコウノトリでーす!!」
「・・・コ、コドナ!?」
コドナ先生が赤ちゃんと一緒に倒れ込んでいるエソラを見下ろしながら待ち構えている
「・・・決着、着けようぜ!!」
コドナ先生が満面の笑みで両手の指をパキパキと鳴らし始める
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