第103話 美少年

「・・・引野、中々降りて来ないですね」

空を見上げながらヨミが呟く


「引野がヒマワリに出会えたんなら、魔力の使い方を教えて異能力を制御させるから、もう直ぐやろ!!」

「確かにそうですが・・・それを差し引いても少し遅い気が・・・!!」

エトムとヨミが話し合う


「・・・ね~・・・その肝心の引野は、魔力の使い方を知っているの?男の子でしょ!?」

トキド・ケーが問い掛ける


「「―――あっ!!?」」

エトムとヨミが驚きのリアクションを見せる



「・・・ちょ、ちょっと、いつまで揉んでんのよ!早く離れてよーー!!」

「別に揉んでんじゃねーよ!掴んでないと離れ離れになるからだよ!!―――もみもみ!!」

抱き着いてくる引野を必死に振りほどこうとヒマワリが抵抗し暴れ回る


「わかった!わかったから!!離れるから先に異能力を発動させて、この暴風雨を抑えてくれよ!!」


・・・流石に

暴風雨この中にいるのが苦しくなってきた!


「・・・い、異能力?・・・何訳のわからない事を言ってんのよ!暴風雨を抑えるだなんて、そんな人智を越えたこと人間に出来る訳ないでしょ!!」


・・・・・・え!?


「・・・いや、だから・・・魔力をコントロールして・・・」

「・・・魔力?本当に何言ってんのよ!それより早く離れてよ!!」

引野の話す内容がヒマワリには、全く伝わっていない様子


「エトム達の言った通りだな・・・」

本当に異能力者だった記憶を失っている!!


「・・・エトム?何それ、脱出できる道具か何か?」


――――――はぁ?


「いやいやいやいや・・・!!エトムだよ!エトム!!お前の親友の!!いつもえっちゃん、えっちゃんって言ってたじゃねーか!!」

「・・・・・・?」

引野の激しい問い掛けにヒマワリは、首を傾げて不思議そうな表情を浮かべる


「エトムだけじゃない!ヨミやトキド・ケーさん!コドナ先生達に!マッソやドッポも・・・!!」


「・・・・・・」


「・・・何も覚えてないのか?」


・・・そ、そんな

まさか日常的な記憶まで失ってるだなんて!?


―――いや、違う!!


俺がショックを受けてどうする?

ヒマワリの方が何倍も辛い筈だろ!!


「―――でも大丈夫だ!ヒマワリ!!お前は、1人じゃない!!俺が必ず!いや俺達が必ず助け出してやるからな・・・!!」


「・・・フフフ・・・・・・あたしには、こんなにも仲間がいるのに・・・助けに来たのは、痴漢野郎か・・・!!」

「う、うう、うるせーな!今、暴風雨ここから出してやるから、大人しく引っ付いてろ!!」


このまま一緒にいれば2人の重さで徐々に落下していき、地上に降りられる筈だ!!


「―――それは、無理よ!そんなので出られるんだったら、あたしが既に抜け出してるでしょ?」


・・・た、確かに!

言われてみたらそうだな!!


「あたし暴風雨の端まで行ったけど・・・乱気流になっていて内側からは、出られないようになっていたよ!!」


・・・そ、そんな

入ったは、良いが出られないだなんて・・・


「・・・ど、どど、どうしよう~!!」

引野が不安な声を漏らす



「あぁ~!何てことや~!!」

「こんなことなら、もっと果実を持たせて置くんでした!」

引野を行かせたことを後悔し反省する


「・・・マッソ!頼みがある!!あと1分して2人が戻って来へんかったら、ウチも暴風雨あの中に投げ入れてくれへんか?」

「・・・・・・それは、出来ん!!」

エトムの提案をマッソが拒否する


「・・・な、なんでや!!」

「俺の今の筋肉量では、これ以上の十字架を背負うには、貧弱過ぎる!!」


「・・・マ、マッソ」

「・・・大丈夫だ!もう少し・・・もう少しだけ待ってみよう・・・!!」

エトム達の身体に豪雨が無情にも打ち付ける



「「―――うぎゃぁぁぁーーー!!」」

暴風雨の中から抜け出せない2人は、縦横無尽に回転しながら飛ばされている


・・・も、もうダメだ!

この全身を激しく打ち付ける雨量!呼吸が出来なくなるほどの風圧!!


意識を保つのが厳しくなってきた・・・!!


・・・な、何か!

何かないか?この状況を打開する手段は!?


ヒマワリの記憶を取り戻す方法は、ないのか!?


「・・・ねぇー・・・ちょっと大丈夫?」

「・・・だ、大丈夫・・・安心しろ・・・・・・絶対・・・助けるから・・・!!」

心配するヒマワリへ弱々しい声で答える


「・・・・・・―――ったく!何しに来たのよ!!暴風雨こんな所へ来るぐらいなんだから、何か持って来てないの?」

引野のポケットの中身を調べ始める


「・・・・・・何で役に立ちそうな物を持って来ないの!―――ん?これは、何の実・・・?」

ヨミがこっそりと忍ばせて置いた禁断の果実に手を伸ばす


「・・・回復アイテムかな?・・・ほら食べて!!」

「・・・・・・」

ヒマワリが食べるように促すが引野の反応がない


「・・・・・・助ける助けるって言っといて、もう~!これは、あくまで人命救助の為だからね・・・!!」

ヒマワリが果実を口に含み、口移しで食べさせようとする


「・・・あ、あれ?・・・何かおかしい!・・・か、身体が・・・身体が熱い!燃えるように熱い・・・!!」

ヒマワリの体温が急激に上昇していき、身体から蒸気が立ち上ぼり、身体全体が湯気に包み込まれていく


「―――あああぁぁぁーーー!!!」

暴風雨全体にヒマワリの叫び声が響き渡る



「・・・1分や!マッソ、一生のお願いや!!ウチを・・・―――ん?」

「・・・あ、雨が弱まってきた・・・!?」

空を見上げると降り頻る豪雨が弱まり小雨へと変化していく


「―――見て!暴風雨がっ!!」

暴風雨が弱まり、規模が小さくなっている


「引野がヒマワリの救出に成功したんだ!!」

エトム達の顔に笑顔が戻り始める


「・・・あっ!あそこに引野達の姿が・・・!!」

暴風雨の中に人影が2つ分見えて、落ちて来る


「「「・・・引野!・・・―――と、誰!!?」」」

暴風雨から飛び出して来た中にヒマワリの姿は、なく!引野と謎の美少年が一緒に落っこちて来る


「「「・・・・・・ヒマワリは?」」」

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