第101話 できるできない

「「「―――どぅわぁぁぁーー!!!」」」

エソラの体内から吐き出された引野、ドッポ、マッソ、マジナ先生達が宙を舞う


「・・・で、でで、出られたーー!!」

粘液まみれの引野が雄叫びを上げる


「・・・何だ?エソラ、またそんなに呑み込んでたのか・・・!?」

「ゴホッ!・・・ゴホッ!・・・ゴホッゴホッ・・・!!」

大人数の男を吐き出し、元の小さく華奢な姿へ戻ったエソラへカサが笑みを浮かべる


「・・・・・・?」


・・・おかしい?

ヒマワリ達の姿が見当たらない!


地上にいるのは、風族嬢と謎の女だけ・・・


―――まさか!コイツらがヒマワリ達を!!


「許さないぞー!風族嬢!!ヒマワリ達の仇ーー!!」

落下する勢いそのままにスラッとした8頭身の謎の女へ殴り掛かる


「・・・何してんだ?引野テメーは!?」

「うぎゃぁぁぁーーー!!・・・ち、縮む!縮む!!縮んでいくーー!!」

頭上からの襲撃をあっさりと防がれて、掴んだ腕へ異能力幼児化を発動させられて引野の身体が若返っていく


・・・あれ?

この異能力ちからは・・・


―――コドナ先生っ!!


「すいません!すいません!!コドナ先生だったんですね!!いつもより美しかったので、気が付きませんでしたーー!!」

子供の姿になった引野が一生懸命、お詫びをする


「・・・全く!気を付けろよ!!次やったら握力で小さくさせるからな・・・!!」


・・・いや

気付く訳ねーだろ!


今までと全くの別人じゃねーか!!


「説明は、省く!今すぐ、ヒマワリを助けて来い!!」

引野に掛けた異能力幼児化を解除させる


「・・・えっ・・・コドナ先生、それってどういうことだよ?」


・・・折角、エソラの体内から無事生還したのに・・・


―――もう少し感動してくれても良いじゃないか!!


「悠長な事は、言ってられねーんだよ!周りを見てみろ!!」

「・・・な、なな、何だ!この状況は!?」

引野とコドナ先生の周囲を何十体にも及ぶ雨分身カサに取り囲まれて、空中そらには、雨水で出来た刃が無数に点在している


「お前は、さっさと・・・」

「―――ちょっ、ちょっと待って!コドナ先生、どうしてそんな所を掴んでるんですか!?」

コドナ先生に首元の襟を掴まれて混乱する


「ちゃんと生き残ったら、千切れるぐらい頭を撫でてやるよ!!」

「―――い、いい、いやぁぁぁーーー!!」

力いっぱい投げ飛ばされた引野がカサの包囲網を潜り抜けこの場から離れていく


「・・・隙だらけだよ!!」

コドナ先生の背後に鋭く尖った雨水の刃が襲い掛かる


「―――雨刃アメーバ!!」


「・・・肉体完全武装マッスルバリア!!」

カサの降り頻る雨刃アメーバからコドナ先生を庇うようにマッソが盾となり、全てを防ぎきる


「俺の筋肉の前では、雨水など無に等しいな・・・!!」


「マッソ!お前だけは、まだ闘えそうだな・・・!!」

マッソ以外の男達は、負傷が酷く立ち上がれない様子


「・・・あぁ?・・・何だ貴様は、俺に指図するな!引っ込んでろ!!」

助けた女性がコドナ先生と気付かず横柄な態度を取る


「テメー!エソラに敗れたザコのくせに・・・!!」


「―――雨水巨人兵ポセイドン!!」

雨水を大量に集めて巨大な姿をしたカサを造り上げる


「2人仲良く消え失せろ!!」

言い争いをしているマッソとコドナ先生を踏み潰そうとする


「そんなので俺を倒せると・・・」

「奇遇だな!同意見だ!!」


「「―――舐めんじゃねーぞっ!!」」

マッソとコドナ先生が力を合わせて雨水巨人兵ポセイドンの足の裏を殴り付ける



―――パァァァーーーン!!!


「・・・イライラするな」

雨水巨人兵ポセイドンを壊され、カサがストレスを感じ始める


「マッソ!ここは、俺に譲れ!お前には、お前にしか出来ない仕事がある!!」

「・・・・・・?」

コドナ先生がマッソへ耳打ちをする



「エトム、ケーさん!もう無茶だよ!!その身体じゃ!もっと他の方法を考えようよ!!」


「「・・・ハァハァ・・・ハァハァ・・・!!」」

傷だらけになって横たわっている2人をヨミが説得する


「・・・ま、まだ・・・行ける」

「もう一度・・・!!」

「―――少し休みなよ!!」

ボロボロになった身体で無理矢理、立ち上がろうとするのを必死に引き止める


「―――ぎゃぁぁぁーー!!・・・た、たた、助けてーー!!」

「・・・ん?・・・あれ・・・この声は・・・―――なっ!!?」

勢い良く吹っ飛んで来た引野とヨミが激突する


「「いっててて・・・!!・・・―――わぁぁぁーーー!!!」」


「な、何でヨミ!お前、全裸はだかなんだよ!?」

「な、何で引野!生きてるんですか!?」

引野とヨミが驚きの声を上げる


・・・一体

俺がエソラに呑み込まれている間に・・・


―――何があったんだ!?


コドナ先生は、自分に掛けた異能力幼児化を解放させて本来の姿に戻っているし、エトムとトキド・ケーさんは、傷だらけになっていて、ヨミは、何故か素っ裸!!


―――誰か説明してくれ!!


「・・・ヒマワリは?ヒマワリは、どこにいるんだよ!」

「・・・・・・あそこ!」

ヨミが辺りを見回す引野の頭上を指差す


「・・・えっ!・・・あの暴風雨の中にヒマワリがいるの?」


・・・何であんな所に!?

降りられなくなったのか・・・?


「ヒマワリは、エソラの異能力を受けて記憶を操作されて今、自分が異能力者だということもわからない状態で暴風雨あの中にいるの・・・!!」

トキド・ケーから説明を受ける


「・・・そんな・・・ならヒマワリは、自分で造り出した暴風雨の中から出ることが出来ずにいて!ヨミは、服を着ていた頃の記憶を消されたのか!?」


・・・記憶の操作か!

・・・何て卑劣な奴らなんだ!!


「―――いや、ヨミのは、無関係!!」

「・・・あ、そう」


・・・アイツ!

通常状態ナチュラルで何やってんだよ!!


「せやから!ウチがもう一回、あの中に・・・」

「私らのこの傷は、暴風雨あの中に入って弾かれた結果なの!!」


・・・そ、そんな

只でさえ、辿り着けない程の上空にいるのに・・・


暴風雨の中へ入ると傷付き、弾き飛ばされてしまうなんて!


一体、どうやってヒマワリの元へ行けばいいんだ?


「トキド・ケー様!ご無事で・・・!!」

トキド・ケーを心配したマッソが駆け付けて来る


「マッソ!良いタイミングだ!!暴風雨あそこの中にヒマワリがいるんだ!助けてくれ!!」


・・・良かった!

マッソの筋肉なら暴風雨の中でもへっちゃらだろ!!


「―――それは、出来ん!!」


「・・・な、なんで?」

「悔しいが!俺には、あそこまで跳び上がる手段脚力がない!!」

マッソが言い切る


・・・クソっ!

マッソの肉体ならあの暴風雨にだって耐えられた筈なのに・・・


―――肝心のジャンプ力がないなんて!?


「・・・いや、待てよ!考えてみたら、わざわざ危険を侵して暴風雨の中へ入ってヒマワリを助けに行かなくても、コドナ先生がエソラを倒すのを真下で待ってれば良いんじゃないの?」


・・・そうだよ!

簡単な事じゃないか!!


「―――だが!相手は、雨の中なら無敵のカサと不死身の異能力者を呑み込んだエソラだぞ!!一筋縄では、いかんだろ?」


た、確かに・・・

マッソの言う通りか・・・


「・・・つ、冷たっ!!」

突然、頬に水滴が落ちてくる


「・・・・・・血」

引野が頭上を見上げる


・・・そんな

ヒマワリは、あの中で自分が何者かも解らず、1人傷付き、苦しんでいるのか!?


・・・・・・


・・・何とかしたい!救いたい!!


―――考えろ考えろ考えろ考えろ・・・!!


俺に出来ることは、ないのか?助ける方法は、ないのか?


「・・・ちょっと誰か見て下さいよ~!たんこぶ出来てないですか?」

ヨミが引野と激突したのを大袈裟に騒ぎ立てる


「―――!!」


・・・・・・ある!!


俺だから出来る!いや、俺にしか出来ない方法が!!


「―――待ってろ!ヒマワリ!!俺が必ず助けてやる!!」

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