第99話 豪雨ところにより津波

「・・・そろそろ生き埋めになった頃か」

両手で指を鳴らしながらエソラが呟く



―――ポツンっ!


「・・・・・・?」



―――ポツンっ!ポツンっ!!



「・・・・・・!!」

地面が点々と浸み始めたことに気付き、空を見上げる



―――ザッザァァァーーー!!!


「・・・・・・雨」

上空に浮かぶ巨大な雲が雨雲へと変わり、校庭全体に激しい豪雨が降り始める


「―――っ!!」


「ヒマワリがおったから助かったわ!ありがと!!」

「えっちゃん、お礼なんか言わないで・・・全部トキド・ケーさんの助言のお陰だよ!!」

エソラによるビスケット攻撃を受け、身動きが取れなくなった筈のヒマワリとエトムが姿を現す


「・・・生きてたのか?」

次々と姿を見せるヒマワリ達にエソラが声を上げる


「もう、この豪雨の中では、手品ビスケットは、ふやけて使えませんね!」

「はーはっははは・・・!!手品敗れたりーー!!」

ヒマワリが異能力で豪雨を降らせて、雨水によりビスケットがびしょ濡れになり、ボロボロに崩れたビスケットから全員無事に脱出する


「・・・・・・」


「・・・不気味・・・何笑ってるの?」

トキド・ケーが自分達の事を無視して、空を見上げ微笑むエソラの態度を不思議に思う


「この時を・・・この瞬間を・・・どれほど待ち侘びたことか・・・!!」

エソラが歓喜な表情で叫ぶ


「―――特技人間ポンプの時間だ!―――ごっくん!ごくごくごくごく・・・!!」


「「「・・・・・・えっ?」」」

エソラが突然、大口を開けて豪雨を呑み始める姿にヒマワリ達が戸惑いの声を上げる


「・・・な、何!?あれ?えっちゃん!!怖い怖い怖い・・・!!」

「お、落ち着き!ヒマワリ!!」

雨水を大量に呑み込んでいくエソラの姿に仰天する


「・・・まるで妊婦ですね!」

エソラの腹部が膨れ上がっていく


「・・・凄いお腹の音・・・まるで断末魔!・・・あの身体の中で一体、何が起きているの・・・!?」



――その頃、エソラの体内では――


「「「―――ぎゃぁぁぁーーー!!!・・・な、なんだ?この水はーー!!!」」」

エソラの体内にいた引野達の頭上から大量の水が滝のように流れてきて、津波のように押し寄せて来る


「・・・や、やばい!やばいやばいやばいやばい・・・!!」


・・・一体、何なんだ?

この水分量は!?


熱中症対策だったとしても摂取し過ぎだぞ!!


「ゴボッ・・・ゴボッ・・・ゴボッゴボッ・・・!!」

「ネ、ネネ、ネチュー!!・・・ま、待って!大丈夫ーー!!」

激しい水の勢いに足を滑らせて、風族嬢のネチューとビゾンが流されていく


「・・・クソ!」

益々、流れが強くなってきたぞ!

このままじゃ、俺も一緒に流されてしまう!!


―――体外そとで何が起こってるんだ!?



「―――ゴクゴクゴクゴク・・・!!」


「・・・コイツ、何時まで呑み続けてるんだ?」

エソラの不可解な行動に全員が疑問に思う


「・・・フゥ~・・・これで準備は、整った!お前らもこれで終わりだ!!」

たっぷりと雨水を呑み込んだエソラが自分の指を口の奥へと突っ込んでいく


「・・・マ、マズイ!呑んだ雨水を吐き出す気やで!!」

「―――大丈夫!私がいるから絶対に当たることは、ない!!」

警戒するエトムをトキド・ケーが安心させる


「―――オェェェーーー!!!」

大量に呑み込んだ雨水を1つの巨大な球体として吐き出す


「「「・・・・・・」」」

エソラの攻撃に備え、身構えていたヒマワリ達とは、全くの別方向の森林へと雨水の塊が飛んでいく


「・・・え?・・・ど、どういうこと!?」

「スベった?スベったよね!完全にスベったよね!?」

「アホほど呑んだから狙いが定まらんかったんか!?」


「「「―――あはははーーー!!!」」」

エソラの失態を大笑いする



―――ヒュュューーー!!



―――ドォーーンッ!!!


「「「―――っ!!?」」」

森の奥地から凄い勢いで何かが校庭の真ん中に吹っ飛んで来た


「・・・・・・な、何?」

「・・・コ、コドナ先生っ!!大丈夫ですか!?」

「ひ、酷いケガや!!」

傷だらけで倒れるコドナ先生を心配したヒマワリ達が駆け寄って行く


「・・・お、お前ら!どこ見てんだ!!後ろだ!!」

コドナ先生が声を荒げる


「「「―――っ!!?」」」


のろい!―――異能力発動っ!!」

気配もなく、いつの間にか現れた風族嬢のカサがエトム達の背後から異能力を発動させて、ヒマワリを除く生徒達を一人一人、雨水の球体の中へと閉じ込める


「「「―――なっ!・・・だ、出せーー!!」」」

閉じ込められたエトム、ヨミ、トキド・ケーが雨水の膜を壊そうとするがびくともしない


「雨ドーム!脱出は、不可能だよ!!」


風族嬢カサの異能力は、雨女あめおんな

雨水を自由自在に操り、コントロール出来る異能力者!!


「生徒達を解放しろーー!!」

「ノマール、行くな!止めろ!!お前の敵う相手じゃねぇ!!」

カサに立ち向かって行くノマール先生を呼び止める


「・・・男には、容赦しないよ!!」

「それは、こっちのセリフ・・・―――ぐはっ!!?」

身体中から血しぶきを上げながら倒れる


「―――ノマール先生ーー!!」

ヒマワリが泣き叫びながらノマール先生の元へと駆け寄る


雨水刀コレに反応できないなんて・・・」

カサの手の平には、雨水を集めて、造り上げた刀を持ち、目にも止まらぬ速さでノマール先生を斬り伏せて嘲笑う


「・・・・・・ご、5回・・・いや6回?」

「―――8回や!何てスピードや!!無駄な動作なく斬りやがった!!」


「・・・ほ~・・・今のを目で追える女が他にもいるとは・・・!!」

雨ドームに閉じ込められたエトムとトキド・ケーに関心する


とどめは、本気を出す!目で追えるかな?」


「―――待てよ!!まだ、俺との決闘タイマンの途中だろうが・・・!!無視してんじゃねーぞ!!」

「・・・驚いたな!動けるのか!?」

ボロボロになった身体で立ち上がるコドナ先生を讃える


「この豪雨の中は、私の世界!異能力者雨女である私の思うがまま!!・・・この雨の質量を変化させて、お前が浴びる雨水だけが一粒1tの重さになっている!!―――なのに、この豪雨の中、意識を失わずに、立ち上がるとは・・・!!」


「・・・ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・!!・・・こ、来いよ!チャンスだぜ!!」

膝に手を当て、踏ん張りながら起き上がり、中指を突き立てて、カサを挑発する


「即死してもおかしくないのに・・・今、楽にしてやるよ!!」

カサが手の平に雨水を集めて、細くて鋭い槍を造り上げ、とどめを刺そうとする


「―――死ね!!」

「させない!―――雲壁!!」

カサとコドナ先生の間に異能力の雲で造った壁を出現させて行く手を阻む


「みんな待ってて!直ぐに雨を止まして晴れ間に戻すから・・・」

「ダメダメ!ヒマワリは、この為に生まれてきたんだから・・・―――異能力発動っ!!」

ヒマワリの背後に回り込んだエソラが頭を掴み、異能力フィクションを発動させる


「―――きゃぁぁぁーーー!!!」

エソラ異能力フィクションを受けたヒマワリが悲鳴を上げながら魔力を高めていき、異能力で発生させた豪雨が激しさを増していく


「カサ様!これでヒマワリのこの豪雨は、止むことは、ないです!!」

ヒマワリの記憶を操作したエソラが報告する


「・・・・・・うぅ!!」

自分の異能力を制御できなくなったヒマワリが苦しみ始める。


「ヒマワリの記憶は、消した!自分が異能力者だった事も忘れ、自分の造り上げた異能力大災害の中で苦しみ行き続けるだろう・・・!!」


「きゃぁぁぁーーー!!」

ヒマワリを中心に発生した暴風雨と激しい雷に包まれながら、空高く浮かび上がって行く


「―――これで私の天下よ!」

カサが勝ち誇った笑みを浮かべる


「・・・・・・異能力解除だ!!」

コドナ先生が自分の身体に掛けた異能力幼児化を解除し元の姿へと戻っていく

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