第93話 鬼滅の八重歯

校庭のど真ん中で鬼とエトムの攻防が激しさを増していく


「―――ぐぅぉぉぉーーー!!」

「なんや、なんや!中々の戦闘能力やな!!―――けど、そのレベルなら、既に体験済みや!!」

鬼の巨体からは、想像も付かない程に洗練された空手家の動きでエトムへ攻撃を続けるが異能力ネコ化を発動させたエトムが俊敏に回避する


・・・さ、流石

エトムだ!


鬼の繰り出す鋭い突きや蹴りを軽々と躱している!!


「ウザったいノラ猫がぁぁぁーー!!」

エトムに腹を立てた鬼が右腕を大きく膨張させて、そのまま殴り掛かる


「・・・へっ!なんや、それ?んなもん目瞑ったって当たらへんわ!!」

エトムがヒラリと身を躱すが鬼は、勢いそのまま、地面を殴り付ける



―――ドッドォォォーーン!!


「「「―――う、うわぁぁぁーーー!!!・・・ゆ、揺れ、揺れるーーー!!!」」」

地面を殴り付けた衝撃で大地が揺れ、地震が起こり、離れた位置にいた引野達がふらつき始める。


・・・あ、あの鬼!

災害レベルの怪力じゃねーか!!


「・・・・・・?・・・真下から高魔力反応!!」

「えっ?トキド・ケーさん、それってどういう意味・・・―――って、引野!何すんのよ!!」

「・・・い、いや違くて・・・揺れが激しくて・・・!!」

異能力ラッキースケベの影響か躓いた拍子にヒマワリの胸へと抱き着き押し倒してしまう


「―――きゃぁぁぁーー!!引野のエッチ!変態!!直ぐに離れてよ~!!」

「痛だだだ~!!わかった!わかったから離れるから叩くのを止めてくれ~!!」

覆い被さる引野の顔をポカスカと叩き、押し退けようとする


―――チュッドォォォーーン!!


「「―――えっ!!?」」

ヒマワリが立っていた位置から鋭くて太い針が地面から勢い良く突き上がってくる


・・・う、嘘だろ!

こうして倒れ込んでいなければヒマワリが串刺しになってたじゃないか!?


「ここら一帯は、危険!2人は、早く空へ!!」

「―――はいっ!!」

トキド・ケーの指示に従い、ヒマワリが異能力を発動させ、雲を出現させて、その上に引野と一緒に飛び乗る


―――チュッドォォーーン!チュッドォォーーン!!



―――チュッドッドッドッドォォーーン!!!


「ぎゃぁぁぁーー!!ヒ、ヒマワリ~!!早くもっと上空へ!!」

地面から大量の針が広範囲に突き出てくる


・・・あ、危ねぇ~!間一髪!!

トキド・ケーさんがいなかったらどうなっていたか・・・


「トキド・ケーさん!ノマール先生!!大丈夫ですか?」

針山と化した校庭へヒマワリが呼び掛ける


「・・・・・・平気!」

「・・・だ、大丈夫そうに見えますか?僕もそれに乗せて下さい!!」

異能力を発動させ、時を止め、攻撃を回避したトキド・ケーは、全くの無傷だが・・・


ノマール先生は、所々服が破けては、いるが致命傷は、ないみたいだ!


「私らは、大丈夫!先にエトムの所へ!!」

「うん、わかった!ありがと、トキド・ケーさん!!」


「―――えっ!?・・・いや、ちょ、ちょっと待って!行くなら、ここで降ろしてからに・・・」

引野の意見は、完全にスルーされ、エトムの元へと全速力で移動を始める


「なんや、そんな異能力小細工も出来たんやな?」

「・・・・・・!!」

エトムも地面から飛び出した大量の針を持ち前の動体視力と反射神経のみで無事回避している


「この異能力ちから、あのギャルの風族嬢に似てんな・・・」


「―――えっちゃ~ん!大丈夫?加勢しに来たよ~!!」

「ヒマワリ!良かった。そっちも無事やったか!?」


何を呑気に手を振り合ってるんだ!この2人は!!


お前ら、あの鬼のヤバさに気付いてないのか!?

女の子にしか使えない異能力を使ったのに・・・


「ヒマワリ、お前の方から来たか・・・」

鬼が地面から手を離すと無数に出現した針が消え、ヒマワリに向けて指を鳴らす



―――バサササーーー!!!


「―――きゃぁ!!・・・く、雲が!?」

ヒマワリらが乗る雲が突如、白いハトへと変化する


「・・・あ、あの鬼!今のは、完全にマジナの特技手品を!!」


「これで逃げ場は、ない!―――ヒマワリーー!!」

両手をヒマワリに向けて、手の平から無数の針を伸ばす


「ア、アカン!このままやと・・・」


「―――って引野!一体、何してたら、そんな体勢になるのよ~!!」

「・・・ご、ごめん!不可抗力なんだ!わざとじゃないんだよ!!」

雲が無くなりヒマワリと一緒に落下するが引野の異能力ラッキースケベが無意識に発動し、どういう訳かヒマワリの顔に股間を押し当てる形で覆い被さる


「もう~なんてモノを近付けてんのよ!!・・・―――引野、ちょっとごめんね!我慢しててね!!」

「―――痛い痛い痛い痛い・・・!!踏んでる踏んでる踏んでる・・・!!」

空中で引野の身体によじ登り、ヒマワリが体勢を整える


「反撃のいかづちをくらえーー!!」

ヒマワリが異能力を発動し、雲を複数出現させて、全てを雷雲へと変化させ、鬼の繰り出した針目掛けて雷を落とす


「よしっ、ナイスだ!ヒマワリ!!」

ヒマワリに踏まれながら叫ぶ


「このまま最大電力だーー!!」

ヒマワリが魔力を上昇させ、電圧を高め放出する


「ぐぬぬぬーーー!!」

伸ばした針から全身へと感電していき、鬼が痺れ始める


「ハッハハ~!どや!ヒマワリの異能力ちからは!!」


―――バチンっ!!


「「「―――なっ!!?」」」

鬼が指を鳴らすと鬼の姿がビスケットへと入れ替わる


「1発目は、フェイク!これが本命だーー!!」

瞬時にヒマワリの背後へと移動した鬼が蚊を殺すように両手で叩く


「ヒマワリーー!引野ーー!!」

エトムが大声で叫ぶ


「・・・大丈夫、安心して」


「「「―――トキド・ケーさん!!!」」」

トキド・ケーが異能力で時を止め、ヒマワリと引野を救出する


・・・た、助かった!

トキド・ケーさんがいなかったら何度殺されてたか!?


「・・・あの鬼と闘うには、少し情報不足」

「ほな!ウチが相手するわ!!その間にトキド・ケーさんは、考察しといて・・・」


「いや、エトムには、その動体視力で観察を手伝って欲しい」


確かにトキド・ケーさんの言う通りだが・・・


・・・なら

一体、誰があの鬼の相手を?


「鬼の狙いは、ヒマワリ!なのでヒマワリも待機・・・ここは、男手に頼るしか・・・」


・・・え?

そ、それって・・・


「せやな!お願いするか・・・」


待って待って待って待って・・・!!


「こういう時だからこそ、頼るしかないね!」


「ちょ、ちょっと、 まだ心の準備が・・・」


「「「―――お願いします!ノマール先生!!」」」

ヒマワリ達が頭を下げる


―――うん、そうだよね!

わかってたよ!!


「みんな、ちょっと目が痒いだけだから、あんまりこっち見ないで・・・」


・・・何これ

上を見上げてないと垂れてくる


「よ~し、ノマール先生VS鬼のタイマン勝負バトルだ!!」

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