第88話 隠し玉

緊張の空気に包まれる校庭


「ノマール先生、ヒマワリ!覚悟は、出来たか?」


「うん、任せて!」

「引野くんこそ大丈夫ですか?足、震えてますよ!」

逃げるのを止めた俺達は、風族嬢を迎え撃つ為に準備を整え待ち構えていた


「問題ない!武者震いだ!!」

震度7レベルに身体を揺らしながら答える


・・・大丈夫!

俺の作戦は、完璧だ!!


風族嬢達がヒマワリを拐いにやって来たら、ノマール先生の特技、料理の力で一網打尽にする


その成功率を少しでも上げる為に料理道具一式は、まだノマール先生に持たせていない!


仮に持たせてノマール先生が鍋奉行様になってしまうと無礼を働いただけで敵味方関係なく、調理してくるので俺や帰って来るコドナ先生らが料理される可能性が高い!


なので料理道具一式を校庭の隅に隠れている。

ヨミ、エトム、トキド・ケーさんに預けている。

風族嬢が姿を見せたら直ぐ様、トキド・ケーさんに異能力で時を止め、料理道具一式を届けてもらう算段だ!!


これならノマール先生の特技が暴発して襲われる心配がないので安全に待ち構えられる


「・・・い、いい、いつでも来やがれ!!」


「―――来たでーー!!」

緊張の空気の中、エトムの声が響き渡る


・・・ど、どっちだ?

風族嬢か先生達か!?


ここからじゃ、まだ良く見えないな・・・


「「「・・・だ、誰?アイツは!?」」」


現れたのは、あの場にいた風族嬢でもなければコドナ先生達でもない!


・・・一体誰なんだ?

あんな奴いなかっただろ!?


その姿は、まるで・・・


―――鬼!!



―――時を遡ること数分前―――


ヒマワリ達が去った森林


「・・・ちっ!」

「あれれ・・・どうかしました?エソラちゃん!ヒマワリ達が無事に逃げ切ったみたいな顔して!!」

エソラの舌打ちに反応したマジナ先生が嫌味たらしく皮肉を言う


「全てにおいてふざけた野郎だな・・・!!」


「コドナ先生ティーチャー、もう心配することは、ありません!風族嬢へ集中して下さい!!」

マジナ先生が大声で叫ぶ


「馬鹿馬鹿しい・・・!それじゃ、今までのが全力じゃなかったみたいに聞こえるぞ!!」

「そう言ってんだよ!!」

風族嬢のカサと一対一で闘っていたコドナ先生が吹っ切れた表情を浮かべる


「強がっていられるのは、今のうちだ!―――くたばれっ!!」

コドナ先生を全力で殴り付ける


「「「―――カサ様!!!う、腕が!!?」」」

風族嬢達が驚きの声を上げる


「テメーらとのお遊びは、ここまでだ!!」

殴られた筈のコドナ先生には、一切ダメージは、なく!ピンピンしている。


「・・・異能力か!子供騙しなマネを・・・!!」

殴り付けた右腕へコドナ先生が異能力を発動させ、幼児化の異能力ちからで腕を子供の時ぐらいのサイズへと若返らされる


「・・・・・・子供だと!!」

カサの発言に眉間をピク付かせる


「この異能力雨女の前では、全て無力だとわからんのか・・・」

懐から小瓶を取り出し、右腕に中の雨水を掛け、腕を元へと戻す


「―――誰が子供だぁぁぁ!」

子供発言に怒り狂ったコドナ先生が連続でカサを殴り続ける


「お前そんな見た目でも、一応教師なんだろ?学習能力が無さ過ぎるだろ!ずぶ濡れになった私は、無敵だ!!」

殴られる直前に頭から雨水を被り、コドナ先生の殴打の応酬を何食わぬ顔をして防せぎきる


「・・・この勝負、コドナ先生ティーチャーの勝ちですね!」

闘いの様子を見ていたマジナ先生が一人呟く


「ギャハハハーー!!ネ、ネネ、ネチュー!コイツ全然、状況わかってね~!!」

「ギャルでもどっちが優勢かわかるのに~!!」

ネチューとビゾンが大笑いする


「・・・見てればわかるさ!」



「―――オラララーー!!」

それでもコドナ先生は、攻撃の手を緩めることなく何度も全力で殴り続けている


「・・・何を考えている?そんなことを続けても痛くも痒くもないぞ!むしろ心地良く、涼しいくらい・・・―――はっ!ま、まさか!?拳圧で!!」

全力で繰り出す拳の勢いでカサの身体に纏っていた雨水を吹き飛ばしていく


「今さら気付いても遅いぜ!!」


「・・・ま、不味いぞ!カサ様を守れーー!!」


「「―――了解!!」」

エソラの指示に従い、ネチューとビゾンが動き始める


「―――おっと!一緒に最後まで見届けようか!!」

マジナ先生が風族嬢の行く手を阻む


「邪魔だ!退けハトおじさんーー!!」

ネチューが魔力を高め、マジナ先生へ襲い掛かる


「誰がおじさんだぁぁーー!―――ぐふっ!!」

ネチューのハリネズミ化の異能力で腕から飛び出た鋭い針がマジナ先生の身体を串刺しにする


「ビゾン!今だ、進めーー!!」

「はいは~い!・・・んん?何このお菓子!?」

走り出したビゾンの足元にビスケットの欠片が大量に転がっている


―――バチンっ!!


「―――なにぃぃぃ!!偽物だと!?」

マジナ先生が指を鳴らすと串刺しにしていたマジナ先生の姿がヒト型のビスケットへと変わり、ボロボロっと崩れ落ちていく


「ハトを出すだけが手品じゃないんだよ!!」


―――バチンバチンバチンバチン・・・!!


「「―――ギャァァァーー!!ビスケットがぁぁーーー!!」」

マジナ先生が指を連続で鳴らすとネチューとビゾンのポケットからビスケットが大量に溢れ出し、身動きが取れなくなる


「・・・これで俺達の勝利だな!!」

戦闘用員のネチューとビゾンを戦闘不能にしたマジナ先生が勝利の余韻に浸り始める


「・・・くっ!仕方ない!!―――エソラ!奥の手だ!!使!!」

「「―――何ぃ!!?・・・と、特技だと!!」」

カサの発言に驚きの声を上げる


エソラは、特技持ちの異能力者なのか!?

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